9月1日の今日は「防災の日」。また今年は「関東大震災」から100年ということもあり、より防災への意識が高まっているかもしれない。

そんな中、備蓄している食材などを使って、簡単に作れる料理のレシピを、国立研究開発法人「医薬基盤・健康・栄養研究所」がサイトで公開している。

完成したパエリア(出典:医薬基盤・健康・栄養研究所)
完成したパエリア(出典:医薬基盤・健康・栄養研究所)
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第1弾の公開は今年の6月で、レシピは全部で3品。今後は2~3カ月ごとに更新して、増やしていくという。

このうち「栄養たっぷりレシピ」は2品ある。ひとつは「パエリア」で、2分半ほどの動画で作り方を紹介している。缶詰などの日持ちする材料や備蓄食材、コンビニなどで手に入る食材を使い、フライパンとカセットコンロで簡単に作ることができるのだ。災害時に必要なエネルギーや栄養素を満たし、塩分が控えめな味付けになるという。

もう一つの「減塩弁当」はPDFで紹介。ひじきやしいたけなどの乾物や災害備蓄食品で作るメニューで、おかずとして「サバのトマト煮」「ひじきの煮物」「ほうれん草のアーモンド和え」「オレンジ寒天」のレシピを掲載している。

(出典:医薬基盤・健康・栄養研究所)
(出典:医薬基盤・健康・栄養研究所)

さらに「ちょこっとアレンジレシピ」として、「野菜ジュースでもどす高野豆腐入りアルファ化米」を紹介。作り方はレシピ名そのままで、アルファ化米に高野豆腐や乾物を入れてよく混ぜるだけ。作業時間は約1分で、60分待てば完成となる。

どのレシピも、たしかに備蓄食品や普段から使っていそうな食材ばかりを使っている。さらに手軽に作ることを考えたメニューなので、非常時に役立ちそうだ。

アルファ化米のアレンジ料理(出典:医薬基盤・健康・栄養研究所)
アルファ化米のアレンジ料理(出典:医薬基盤・健康・栄養研究所)

そして、これらのレシピを公開した狙いは、災害時の「食」を改善することだという。そもそも、災害時の食事にはどんな問題があるのだろうか?また、災害時のレシピに「パエリア」とはちょっと意外な気がするが、なぜこのメニューにしたのか?

医薬基盤・健康・栄養研究所 国際災害栄養研究室室長の坪山(笠岡) 宜代さんに聞いてみた。

災害時の食事は量も質も不足している

――現在の災害時の食事はどんなことが問題だと考えている?

災害時の食事で問題なのは、量が足らないことと、質が不十分なことです。

おにぎり、菓子パン、カップ麺が続くと炭水化物ばかりで、栄養も足りません。おかずがあったとしても単調になってしまいます。すると、栄養面だけではなく、例えば美味しさだったり、味のバリエーション、食べやすさ、楽しさといった「質」の部分が不足してきます。

災害時の食事改善は後回しになっているのが現状ですが、いざという時でもしっかり食べなければなりません。そこで、電気やガスや水道が十分に使えなくても簡単に作れる料理で、食事が改善できるということを知ってもらいたい意味を込めて、レシピを公開しました。

パエリアは野菜も魚介類も肉も入っている

――なぜレシピを公表することにした?

災害時の「食」というのはなかなか改善しないものの1つです。東日本大震災も、茨城・常総市の水害も、熊本地震も、西日本豪雨も、すべて現地に行って対応しているのですが、少しずつしか変わらない。

そこで世界でも初めての、災害と栄養のエビデンスを出す部署を5年前に立ち上げました。誰にでも作れて普段の生活にも活かせるレシピを通じて、災害時の食事の重要性を伝えたいと考えています。


――レシピについて意識していることは?

災害時の食事の問題を改善できるレシピで、「量」についてはエネルギーがしっかりが取れるようにしています。「栄養たっぷりレシピ」は、厚生労働省が定めた「エネルギー(カロリー)」「たんぱく質」「ビタミンB1」「ビタミンB2」「ビタミンC」の5つの基準を全部しっかり満たした、100点満点に近いレシピになっています。


――災害時にパエリアとはちょっと意外に感じたが?

災害時の避難所で「どんな食事が不足していますか?」という調査をすると、やっぱり多かったのは乳製品、肉、野菜、豆、魚といった生鮮品。その次が調味料だったのです。

つまり、違う味のものを食べたいということの現れだと思います。分析してみると特にケチャップ・マヨネーズ・ソース・コショウが求められていました。なぜかというと、災害現場では味噌味や醤油味は多いのですが、確かにマヨネーズやケチャップ、ソースを使ったものは、あまり多くないのです。

私たちはパエリアのレシピを紹介していますが、例えば豚汁やカレーは災害現場で出る事が多いので、目新しさが少ないです。パエリアは、野菜も魚介類も肉も入って、ちょっとスパイシーなので、目新しくて「楽しみ」であったり「食べてみたい」と思ってもらうことに繋がるかもしれません。

9月1日などにこのレシピを試してほしい

――保存食のアルファ化米に野菜ジュースを入れるレシピについては?

災害現場では、たんぱく質も野菜も不足します。ですので、肉や魚などの生鮮が食べられなくても、「高野豆腐を保存しておけばいい」「野菜ジュースを用意しておけばいい」など、そういうことに気づくことがポイントだと思います。

アルファ化米の備蓄はかなり広まっていますが、おかずもなく白いご飯だけ食べ続けるのは難しいですよね。我慢して食べなくても、ちょっとした工夫で改善できるんです。野菜ジュースでもどすと、チキンライスみたいな味がついて、オレンジ色になって、食欲が無い人でも食べやすくなります。子どもたちにも好評です。

また、アルファ化米は気が付くと賞味期限が切れて使い道が分からないといった相談を受けることもあります。そこで、捨てる前にこのレシピを試して食べてほしいんです。災害時には食欲がなくなることがあり、食べたことがないものを出されても、食べられなかったり、食べようと思わなかったりすることもあるようです。

ですので9月1日や3月11日などに、このレシピを普段から食べてもらうことで、災害時にも食べられるようになったり、家の備蓄を見直したり、そういうことにつなげてほしいのです。

(画像はイメージ)
(画像はイメージ)

防災の日など機会に、災害への備えを確認する人は多いだろう。その時に、災害時の簡単レシピも試してみるのいいかもしれない。

(レシピのURL:https://www.nibiohn.go.jp/eiken/disasternutrition/link.html)

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。