8月12日に今シーズン最多の4740人の登山客を記録した「富士山」。

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初の「登山規制」が発表される中、「めざまし8」の取材班が直面したのは、登山客が殺到した際の様々な問題点でした。

“弾丸登山”で山頂を目指す ベトナム人観光客

お盆休みまっただ中の8月12日。山梨県側の入り口となる 5合目・吉田口には、登山客や観光客が押し寄せていました。

インバウンド客が戻ってきたこともあり、富士山を訪れた登山客は、山の日(11日)からの3日間で1万人以上。中でも多かったのは、外国人の登山客です。

午後5時頃、5合目の登山口で、めざまし8の取材班が出会ったのは、全国各地から集まったという日本在住のベトナム人登山客の集団。

日が暮れる時間から一気に山頂を目指す、いわゆる弾丸登山です。

登る前に、スタッフが防寒着や飲み水、食べ物など十分に持ったかを入念に確認しています。そして最後にこんな言葉をかけました。

服装や持ち物の準備は万端か確認する登山ガイド
服装や持ち物の準備は万端か確認する登山ガイド

ツアー客のガイド:
皆さんが登るときは、皆さんが頑張って秩序を守り、騒がないようにしてください。後から行く人のため、宿で休んでいる人たちのためにも。ベトナム人のイメージを悪くしないようにしてください。後で登る皆さんや後の世代のためにも。

登山を開始する姿を見送ります。次に取材班が彼らを見かけたのは、7合目の山小屋でした。

登山道は人でいっぱいになっており、山小屋のスタッフも「今年初か今年イチ」と困惑の表情。

山小屋のスタッフが誘導を手伝う
山小屋のスタッフが誘導を手伝う

「日の出館」スタッフ:
キープゴーイング。どうぞ、いってらっしゃい。そこ座らないで、小屋側座るのなしよ。

安全を確保するため、急きょ誘導員を買ってでた山小屋スタッフが、登山客らを誘導します。

山小屋を通過し、さらに上を目指す弾丸登山客一行。順調に登山を進めていた一行でしたが、8合目にさしかかったところで徐々に疲労の色が。

いったん休憩となりました。

ツアー客のガイド:
ここに集まって休んで、もう登らないで、食べたり飲んだりして体力を取り戻そう。40分間。40分間休憩しよう。

この日の山頂付近の気温は6℃前後。その後、なんとか歩みを進めて、夜明け前までに山頂に到着した一行。

国旗を広げ感動を表します。

ベトナム人登山客:
すごくきれいです。

低体温症・高山病…弾丸登山のリスク 山道で眠ってしまう人も

5合目から山小屋に宿泊することなく夜通しで登り、一気に山頂を目指す「弾丸登山」。

ベトナム人登山客一行はトラブルなく無事山頂までたどり着くことができましたが、富士山登山巡回指導員の太田安彦さんは、弾丸登山は高山病などのリスクが高まる危険な行為だと指摘します。

12日の「弾丸登山者」は、4740人中、なんと1300人超え。今シーズン最多でした。

実際取材中には、登山道で体調を崩してしまう登山客の姿が。登山道の安全を確保する、巡回指導員が声をかけます。

富士山登山巡回指導員 太田安彦さん:
ずっと止まっていると具合が悪い。このまま止まっていると、低体温症になってしまいます。

登山客らに説明をする巡回指導員の太田さん
登山客らに説明をする巡回指導員の太田さん

登山客が殺到することが見込まれたため、増員された巡回指導員ですが、休まる暇がありません。

さらに、この日多く見られたのが、登山道で眠ってしまう登山客でした。

富士山登山巡回指導員 太田安彦さん:
ここで寝る場所じゃないから、ここは寝られない。

外国人とみられる登山客に声をかける太田さん。

富士山登山巡回指導員 太田安彦さん:
ここ寝る場所じゃないから、ここ登山道。日本語分かります?ここ寝る場所じゃないから、登山道だから起きるようにしてください。今から何百人も人がどんどんきますから、ここ通るから起きるようにしてください。

登山道で寝る登山客
登山道で寝る登山客

こうした行動は、他の登山者の妨げになるだけではなく、登山客自身の体調にも影響を及ぼすといいます。

富士山登山巡回指導員 太田安彦さん:
場所の迷惑になるんですけど、「低体温症」になったり、寝ると呼吸浅くなって、「高山病」になることもあります。なのでちょっとずつ動く方が、低体温症にならないというのがありますね。

そんな話をしていると、実際に高山病とみられる症状の、青白い顔の男性が。太田さんがすみやかな下山を促します。

さらに、取材スタッフも山頂の目前で身動きが取れなくなった女性を発見。症状から、こちらの女性も高山病とみられます。

取材スタッフ:
太田さん、体調不良者がいるんですけど、どうしますか?

富士山登山巡回指導員 太田安彦さん:
もっと息を深く、こんな感じで。そうすると本当に、すぐ良くなるから、よくなるからやってごらん。もっと深く、そうそうそうこれ10回ぐらいやって、そしたら、すぐ良くなる。

巡回指導員の処置により、女性はなんとか登山を再開することができました。

山頂でトラブル発生 禁止のテントにドローンまで

巡回指導員の太田さんによると、外国人登山者の多くは、マナーやルールを知らないだけで、注意すると素直に応じてくれるのだといいます。

しかし、山頂では「知らない」では済まされない迷惑行為が。

富士山登山巡回指導員 太田安彦さん:
テント禁止です、ちょっとすみません起きてください。パトロールで回っているんですが、テント禁止なんですね今何百人も(下から)来てて、ここごったがえすんですよ。なので、すみませんが、テントを畳んで休憩してもらいたいんですけども。

太田さんが山頂で発見したのは、使用が禁止されているテント。

さらに、日が昇り周囲の様子が見えるようになると、上空に“あるもの”が飛んでいました。

山頂上空に黒い影が
山頂上空に黒い影が

ディレクター:
ドローンを飛ばしている人がいますね。

飛んでいたのは、富士山の山頂では禁止されているドローン。慌ててドローンが飛んでいる方向へ猛ダッシュする誘導員。

操縦者を探すために走り出す誘導員
操縦者を探すために走り出す誘導員

誘導員​:
ドローン誰だ? ドローン止めろ!教えてくれ!どこでドローン運転してる?教えてくれ、ドローン運転してるの誰だ?

追いかける先に、操縦士とみられる男性の姿が。

誘導員から逃げる操縦者(赤丸)
誘導員から逃げる操縦者(赤丸)

誘導員​:
逃げるな!

その後、別の指導員に取り押さえられ、厳重注意されました。操縦していたのは、外国人の登山客だったといいます。

様々なトラブルが発生した、お盆休みの富士山。入山規制も検討される中、現場の巡回指導員は、それよりも大事なことがあると指摘します。

富士山登山巡回指導員 太田安彦さん
富士山登山巡回指導員 太田安彦さん

富士山登山巡回指導員 太田安彦さん:
今回で言うと、1300~1400(人)がおそらく弾丸で登っているんですが、そういう人たちを数人で啓発するには限界があるので、事前に周知していただく。5合目でしっかりルールを守ってもらうとか、そういった根本的な解決が必要なのかなというのは感じます。

(「めざまし8」 8月16日放送より)