瀬戸内海を舞台に活躍した「村上水軍」にちなんだ、水軍レース大会が4年ぶりに復活した。「押して!引いて!」で進む手漕ぎの和船で速さを競う。勇ましい「水軍」たちの熱き戦いに密着した。

優勝経験もあるチーム「大福会」に密着

水しぶきをあげて進む和船。乗り手たちは心を一つに「櫓(ろ)」をこぎ、スピードを上げていく。

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戦国時代に瀬戸内海を舞台に活躍した「村上海賊」。そのおひざ元の一つ、愛媛県今治市・大島の宮窪沖で、恒例の水軍レース大会が行われた。

大会はコロナ禍の影響で2020年から中止が続いていて、2023年は4年ぶりに復活した。

大会を1週間後に控えた7月23日、レースが行われる宮窪沖では、出場するチームが練習を重ねていた。

今治から出場する「大福会」が舟の上で大きな掛け声を響かせる。水軍レースには15年前から参加し、優勝経験もある。

大福会・木本敬司キャプテン:
今まで10回以上レースに参加しているが、素人でゴールができなかったこともあるし、船がスタート地点に向いてしまって、勝負にならなかった年も何回もありました

4人のルーキーも加わり気合十分!

「ゴールすること自体が難しい」という水軍レース。その理由は舟にある。

水軍レースで使われるのは、400年前の水軍船を復元した小早舟。12人が乗り込み、5つの「櫓」を漕いで進む。

スクリューの役目を持つ「櫓」は、左舷に3つ、右舷に2つあるため、櫓の扱いに慣れていないと、左舷の馬力が大きくなり、舟は右方向に進んでしまいがちになる。

速さを競う水軍レースでは、スタートから200メートル先のゴールまで、できるだけまっすぐ最短距離で進むことが重要だ。

そのためには、乗り手たちが息を合わせて「櫓」をこぎ、舟の左右のバランスを保ちながらスピードを上げる必要がある。

大福会・木本敬司キャプテン:
うちらの場合は、左にパワーのある人を持ってくる

「大福会」では、櫓が2つの右舷に力自慢の乗り手を配置し、櫓が3つの左舷とのバランスを取る。

さらに2023年は、チームに4人のルーキーが加入。ベテランとルーキーが力を合わせて、2回目の優勝を目指す。

大福会のルーキー・別府弘崇さん:
期待の分、緊張はあるんですけど、しっかり期待に応えたい

大福会のメンバー:
数年ぶりなんで優勝できるようにがんばりたい

決勝に進めるのは予選1位通過チームのみ

7月30日、水軍レース大会当日を迎えた。4年ぶりの開催となった2023年は、愛媛県の内外から47チームが出場した。

出場チーム「たくぼん海賊団」:
大島中学校の教職員でチームを組んでいます。がんばるぞ!おー!

出場チーム「AVEMARIA」:
聖カタリナ学園高校のチームです。AVEMARIAチーム絶対優勝!

「大福会」が出場するのは、大会常連の16チームが集うトップカテゴリー。予選のレースを1位で通過しなければ、決勝のレースに進むことはできない。

ドラの音が鳴り響く中、予選のレースがスタート。乗り手たちは息を合わせて櫓をこぎ、舟を操る。順調にゴールするチームもあれば、4年ぶりの櫓さばきに苦戦するチームも…。

出場チーム「航海丸」のメンバー:
やっぱり難しいですね、昔の人はすごいですよね。悔しいです

――みなさんどうでしたか?

予選通過したチーム「クロスリバー」:
最高!

「大福会」の予選レース開始!

レース前、「大福会」のメンバーが注意深く見ているのは、前回の大会で優勝した「鵜島奉行隊」。

前回優勝「鵜島奉行隊」
前回優勝「鵜島奉行隊」

「鵜島奉行隊」はこれまで7回の優勝を果たした常勝チーム。予選レースでは櫓のひとつが折れるアクシデントがありながらも見事1位でゴールし、決勝に進出した。

大福会のメンバー3人:
すごい!折れても勝つっていう。さすが鵜島

そして、いよいよ「大福会」の予選レースだ。気合入れの円陣を組む。

大福会:
舟に乗らずに潮に乗れ!

大福会は1位でゴールし、決勝レースに進むことができるのか。ドラの音を合図に、スタートから勢いよく飛び出した「大福会」。

指揮者のかけ声に合わせてテンポよく櫓をこぎ、ぐんぐんスピードに乗っていく。レースは「大福会」と、「蛭子会」で1位を争う展開に。海の上で繰り広げられる激しいデッドヒートの末、1位は「蛭子会」だった。

4年ぶりのレースで「大福会」は決勝に進むことはできなかった。

大福会・木本敬司キャプテン:
このメンバーで全て想定内の仕事をしてくれたので、悔しいですけど来年への一歩になったんじゃないか

4年ぶりに確かめ合った“チームの絆”

4年ぶりに復活した水軍レース。その魅力とは。

出場チーム「オレンジクィーン」:
チームワークとそれにともなって真っすぐ進んで、ゴールを切ったときの快感ですね

出場チーム「大人ごころだね」:
みんなでワイワイできるところ。またみんなで出たいです

出場チーム「ヤノダイビング」:
みんなで一致団結してひとつの目標を目指して、最後打ち上げで楽しく飲むことが最高の幸せです

心を一つに櫓をこいで、チームの絆を確かめ合った4年ぶりのレース。「水軍」たちの情熱はこれからも宮窪の夏を熱く彩る。

(テレビ愛媛)

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