さまざまな問題が明らかになっている中古車販売大手のビッグモーター。現役店長がテレビ西日本の取材に応じ、異常な会社の実態を明らかにした。さらに、2019年に市民から「社員が街路樹を焼いていた」という目撃情報を手紙で受け取った福岡・古賀市の村松市議を取材した。

パワハラLINEは「日常的ではないか」

ビッグモーターの街路樹への除草剤の散布は、前副社長の就任をきっかけに始まった…。こう証言したのは現役店長だ。

この記事の画像(20枚)

ビッグモーター現役店長:
(除草剤など考え始めたのは)5年ぐらい前からじゃないですか。前副社長が来たタイミングじゃないかなと思います

福岡県内のビッグモーター11店舗のうち6店舗では、店舗前の街路樹を「環境整備」と称して除草剤をまくなどして枯らしたり、伐採したりした疑惑が持たれている。8月7日現在までのところビッグモーターは、県内の店舗での除草剤の使用を認め、春日店の件だけ謝罪している。

ビッグモーターを巡るさまざまなスキャンダル。その原因とみられているのが兼重宏行前社長の長男、宏一前副社長だ。

ビッグモーターの現役店長は証言する。

ビッグモーター現役店長:
前副社長がやっぱり利益を求めていったんで。(売り上げ)成績も上げないといけないし、逆らったら降格になりますし、すぐ

現役店長によると、ビッグモーターでは無料通信アプリ「LINE」のグループが約30も存在。着信音がひっきりなしに鳴り続け、宏一前副社長ら経営幹部から店長らを罵倒するパワハラが行われていたという。

ーー「死刑」とかのLINEは?

ビッグモーター現役店長:
あれは日常的に出ていたのではないか。私は「向いてない」って言われて、次の日に異動になりましたけど。もう感覚が麻痺。まあ「言われたら仕方ないか」みたいな感じですかね。毎日“人事異動”が流れていました

客の金で買った部品を“転売”

経営幹部の独断による異常な人事やパワハラが横行していたというビッグモーター。さらに店舗内では転売による利益追求も行われていたという。

ビッグモーター現役店長:
お客さまから車を買い取ったときに「スタッドレスタイヤがあるけど使わない」って言われて、捨てるより「売れる物なら売ろう」みたいな。「メルカリとかヤフオクに出して1円でも利益にしましょう」って。ビッグモーターという名前で売っていました。東北とか北海道なら1カ月で50万くらいになります

利益追求による歪みなのか。別の元従業員によると、県内の店舗では整備士による車検での不正が起きていたという。

ビッグモーター元従業員:
車検とかで見積もりをとって、「この部品、買いますよ」と(伝える)。実際は交換せずにお客さまに「車検終わりました」と(伝える)。まさかお客さんも、疑って車検から帰ってきたその場で「ちゃんと契約通りの部品が全部変えられているか」なんてチェックする方、まずいないですから。絶対分からないんですよ

元従業員によると、その整備士は車検の見積もりに交換の必要がない部品を計上。整備士は発注した新品の部品が店舗に届いているにも関わらず、部品を交換せずに客に車を返却していたという。その狙いとは…。

ビッグモーター元従業員:
部品書に発注さえすれば、その部品が新品のまま余りますよね。ほかに転売するっていうことも可能なので、これをまあ整備士が小遣い稼ぎにポケットに入れるっていうのは聞いたことがあります

客の金で買った新品部品を転売していたという整備士。ビッグモーター側は不正に気づき、この整備士を解雇したという。

ビッグモーター元従業員:
さすがにその人は「即日解雇」ということでクビになりました。警察とかは来ていなかったですし、恐らくそこまで「大ごとにしたくなかったんじゃないかな」と思いますけど

背景として、やはり会社のパワハラ体質が考えられるのか?

ビッグモーター元従業員:
現場のスタッフからしたら、会社に対する「愛」ってないですよね。こんな会社、つぶれてしまい、どう思われようがどうなろうが「知ったことじゃない」となる。お客さんに対しても、そういった対応になります。自分がお金を「いくらもらえるのか」というところにしか関心が向かない。それでやっぱり会社からの給料だけじゃなくて、プラスアルファで自分の手元に転売とかいうことに至るっていうのも許されることはないんですけど、そういう心理状態になるのはあり得るかなとは思います

2019年に古賀市民が目撃「街路樹を燃やしていた」

さらに、一連の問題が明るみに出るより前の2019年。古賀市の市議が、市民からビッグモーター古賀店の前の街路樹について相談を受けていたことが分かった。

古賀市の市議の元に届いた2通の手紙…。その内容は「驚きの情報」だった。

近隣住人からの手紙:
ビッグモーターの社員と思われる人が、街路樹の根本を火が付いたもので焼いていたのです。バーナーのようなものの火でした

古賀市・村松謙二市議:
住民からも現場を目撃されている方ですから余計にね、そういう思いが伝わってきて。何らかの対応をしなければという思いがあった

村松市議は、除草剤について書かれた最初の手紙を受け取ってすぐ、街路樹を管理する国土交通省九州地方整備局に相談。村松市議によると、九州地方整備局が現場の土壌調査を実施したものの、除草剤の成分は検出されなかったという。

枯れた街路樹は、倒木の恐れがあるとして2020年の1月に伐採された。

古賀市・村松謙二市議:
「証拠がない」ということで引き下がった部分は「さらに原因追及できなかったかな」という悔いもある

当時の詳しい対応などについて、九州地方整備局は「回答できない」としている。

関係者たちの証言で明らかになる、ゆがんだビッグモーターの実態。渦中の兼重宏一前副社長は今後、公の場に姿を現すことはないのか。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
テレビ西日本

山口・福岡の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。