登山道の「ど真ん中」にクマ出没、専門家が警告する夏場の危険性

この記事の画像(5枚)

北アルプスの登山シーズンが本格化する中、富山市有峰地区の登山道でBBTの取材班がクマに遭遇した。暑さが例年より早く訪れた今年、人里離れた山中でさえクマが食料を求めて活動範囲が変化している。人とクマの接触リスクが高まる夏、登山者はどう身を守ればいいのか。

「登山道のど真ん中」に現れたクマ

標高約1600メートルに位置する富山市有峰地区の登山道。北アルプス・薬師岳へと続くこの道で、体長1メートルほどの成獣とみられるクマが姿を現した。BBTの取材クルーが遭遇したこのクマは、登山道の真ん中でのんびりと過ごしていた。

「登山道の真ん中、ど真ん中です。クマがいます。エサを探しているんでしょうか」

折立の登山口から太郎平の間、三角点のある休憩地点付近で、クマは茂みから出たり入ったりを繰り返していた。驚くべきことに、人を警戒している様子はあまり見られなかった。

登山客からも「クマいました。さっきまで顔を出してたんですけど、いま藪の中に…」との証言が得られており、複数の人が目撃している。

専門家が分析する異変の背景

富山県自然博物園ねいの里の赤座久明さんは、目撃されたクマについて「比較的、若い個体なんじゃないかなと。体つきが。『ヤングアダルト』というか完全に成熟しきっていないクマだと思う」と分析する。

クマの行動についても「夏のクマがよくやる、アリをたべる採食行動。朽ち木を引っかいて、中に巣くっているアリ、主に卵やサナギ、一緒に成虫まで食べてしまう」と解説した。

有峰地区はもともとクマの生息域だが、今年の異常な気候がクマの行動パターンに影響を与えている可能性があるという。

早すぎる夏の到来がもたらす「長期エサ不足」

赤座さんは今年の異常気象がクマの生態に与える影響について警鐘を鳴らす。

「(今年は)前倒しになって春が通り過ぎていったという感じがしています。今年に限らず夏はエサ不足なんですけれども、エサ不足の真夏モードがかなり早い時期から訪れてきて、秋の木の実が実る時期までの間に時間があるので、食料不足の時期なんです」

さらに「いつもの年よりもエサ不足が長く続くという状況の可能性がある」と語り、この状況がクマの行動範囲を変化させ、人との接触機会を増やす可能性を指摘した。

山でクマに遭遇したら―専門家のアドバイス

登山者にとって最も気になるのは、クマと遭遇した際の対処法だろう。赤座さんは冷静な対応の重要性を強調する。

「しばらく立ち止まって、クマが別のところに移動するのを待つ。近くに寄って急に大きな音を出すなどしてパニックにさせない。そういう対応の仕方が大事だと思う」

北アルプスへの登山を計画している人は、クマスプレーの携行や複数人での行動など、基本的な対策を講じた上で、万が一の遭遇時には冷静に対応することが命を守る鍵となる。例年より長引く可能性のあるクマのエサ不足期間、登山者の注意がより一層求められている。

富山テレビ
富山テレビ

富山の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。