ジャニーズ事務所のジャニー喜多川氏による性加害問題に、国内だけでなく、世界の注目が集まっている。7月22日には、国連人権理事会の専門家が来日し、元所属タレントらに聞き取り調査を行った。
国連の専門家も記者会見
ジャニーズ性加害当事者の会の石丸志門副代表は7月25日に取材に応じ、国連の聞き取りについて、「寄り添って、真摯に重大問題として受け取ってくれた実感はあります」と語った。
国連の専門家は、8月4日、その内容もふまえて記者会見を開いた。
この記事の画像(8枚)一方、ジャニーズ事務所も問題の真相解明に動いている。
「外部専門家による再発防止特別チーム」が新たに「専用窓口」を開設。性加害行為に関する情報を広く求めると発表した。特別チームからの提言を受けたあと、ジャニーズ事務所は今後の対応に関して記者会見を予定している。
日本のエンターテイメント界に激震が走った今回の問題に各所が対応を示す中、大阪に住む当事者が取材に応じ、胸の内を明かした。
憧れだったアイドルとしての日々はわずか3カ月で一変
大阪・豊中市で家族3人で暮らす、二本樹顕理(にほんぎあきまさ)さん(39)。
幼いころ、母と一緒に行ったマイケルジャクソンのコンサートに感動し、ステージで歌って踊ることが将来の夢になった。13歳の時、自ら履歴書を書き、憧れだったジャニーズ事務所に入所し、ステージでバックダンサーを努めるなど、念願だったアイドルとして過ごす充実した日々はわずか3カ月で一変した。
元ジャニーズJr.二本樹顕理さん:
合宿所に泊まるようにジャニー氏本人の口から誘われて、当時同期で入所した子と2人で(泊まりました)。最初は肩とか足をマッサージされるような形から始まり、そこから急にディープキスをされ、だんだん下腹部の方にジャニー氏の手が伸びて性器をまさぐられ、そこから口淫をされました。その時は寝たふりしかできず、その行為が過ぎ去っていくことを、ずっと待っていたような感じでした
その後もジャニー喜多川氏からの性被害は続き、1年半の間に、少なくとも10回にのぼったということだ。終わったあとは必ず1万円札を渡されたと話す。
また、ジャニーズJr.たちの間では「性被害は常態化していた」そうだ。
元ジャニーズJr.二本樹顕理さん:
日常的に性加害について語るグループもいて、男の子なので強がって冗談めいて話してみたりとか、明らかに嫌悪感を示してる子もいましたけど、武勇伝のように語る子もいて、それが当然のこととして受け入れないといけないという風潮がありました
憧れの世界の中で、圧倒的な上下関係を背景に繰り返されたという性加害。
ーージャニーさんを前にしては拒絶・抵抗することはできなかった?
元ジャニーズJr.二本樹顕理さん:
実際に抵抗した子の話を聞いていて、気づいたらいなくなっていたりするので、抵抗する=事務所にいられなくなるものと捉えてました。やはり、その最初の体験以来、(ジャニー喜多川氏に)支配されているような感覚があったので、この人には従順に従わないといけないんだという思いでした
二本樹さんはその後、被害から逃れるためにジャニーズ事務所を退所したが、この時から心に受けた大きな傷に苦しむ日々が始まった。
元ジャニーズJr.二本樹顕理さん:
大事なものを失ってしまったというか、汚れてしまったような感じにもなりましたし、自分の存在を否定されたような感覚はありましたね。高校に入るころくらいから、鬱の症状が出て、自殺願望だったりとか、ひどいときは幻聴とかが聞こえるくらいまで
二本樹さんは社会人になってからも、ジャニー喜多川氏と同じような年代や背格好の人と対面すると、当時のことを思い出し、フラッシュバックに苦しんだ。
海外メディアの報道がきっかけで問題に向き合うことを決意
今もカウンセリングに通うなどトラウマと闘い続ける日々の中で、2023年、海外メディアがジャニー喜多川氏の性加害の疑いについて大々的に報道した。ジャニー喜多川氏の姪・藤島ジュリー社長もコメントを発表したが、性加害の有無についての事実認定もなく、当事者にとっては到底受け入れられる内容ではなかった。
この対応を受け、二本樹さんも顔と名前を公表して証言することを決意し、国会議員らの聞き取りにも応じるなど法整備などを求めて活動している。
元ジャニーズJr.二本樹顕理さん:
これは芸能界の問題だけでなく、教育の分野やスポーツ界、宗教界の幅広い分野で行われている可能性もあるので、社会全体の問題という意識で取り組んでいく必要があると感じる
二本樹さんは被害の記憶に苦しみながらも、大学で音楽を勉強し、今はギター教室を開いて音楽の楽しさを伝えている。生まれたばかりの息子の存在が、この問題に向き合う気持ちをより強くした。
元ジャニーズJr.二本樹顕理さん:
これから子育てして、子どもが大きくなるという未来を見据えたとき、本当に子どもたちが安全に暮らせる社会にしていきたいという思いがあって、10代の時や若いときに負ってしまった心の傷は、一生引きずらないといけないことなのかと。なぜ長年この問題が放置されてしまったのか。そこに対して事実の解明と謝罪をしっかり行っていただきたい
幼い心に大きな傷を残した性加害の実態。二度と繰り返さないために、今、社会の変革が求められている。
(関西テレビ「newsランナー」2023年7月31日放送)