京都の夏を彩る「祇園祭」。歴史ある鉾の中で実は、担い手不足に悩む鉾も。保存会と学生たちが挑む新たな祇園祭のカタチを取材した。

人気の高い“函谷鉾”に課題が…

京都の7月を彩る祇園祭の山鉾巡行。4年ぶりの通常開催となった今年は猛暑の中、およそ15万人が訪れた。

先頭をいく長刀鉾に次いで、くじ取らず2番目の函谷鉾。

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函谷鉾保存会・岡本正理事長:
函谷鉾は、四条烏丸の四条通の一等地にあって、人もたくさんいてやらせていただいています

人気の高い函谷鉾だが、京都の中心地であるが故にある課題を抱えていた。

函谷鉾保存会・岡本正理事長:
京都の四条烏丸と言えば、ビジネスであったり、金融の中心地であるということで、全く住人がいないと。そのような町内で今でもいない

函谷鉾町ではビジネス街で人が住んでいないため、企業や知り合いに頼り「担い手不足」を補ってきた。

理事長の岡本さんは父親がこの町に以前住んでいたことから、親子2世代で理事長を務め、鉾を守っている。

函谷鉾保存会・岡本正理事長:
やはり人に集まってきていただかないと、成り立たない町内ですので、その宿命があるから、(人を集めることに)今までエネルギーを割いてきたし、これからも割かざるを得ない

そこで岡本さんが経営者としての経験を生かし考えたのが京都の学生たちに「インターンシップ」として祭りに参加してもらうというものだ。

大学生たちと挑む新たな挑戦

5月、岡本さんたちがいたのは京都産業大学。学生たちに祇園祭のしきたりや伝統を知ってもらいたいと、2023年に参加する総勢77人に講義をした。

実は京産大の参加は2023年で11年目になり、祇園祭に参加したくてこの大学に入った学生もいる。

大学1年生・中尾毬乃さん:
(高3の体験講義で)実際に運営しているゼミ生の姿を見てやりたい!と思ったのが一番ですね。ついに自分がこっち側に回れるのかという気持ちは大きいですね。うれしいです、本当に

1200年以上の歴史を誇る祇園祭、函谷鉾保存会の人たちも指導に熱が入る。

函谷鉾保存会 伝承委員・中川哲光さん:
絶対に安全に実習が行える環境を作れることを皆さんに求めている。伝統を引き継いでいく中で、どうしたらうまく次へバトンを渡せるかと意識してもらえると、より良いものができるんじゃないかなと思っています

2023年の学生を取りまとめる総長は、3年生の大橋拓真さん。コロナ前の祇園祭を知らない世代だ。

大学3年生・大橋拓真総長:
(ことしは)フルスペックでの久しぶりのお祭りになるので、私たちが先輩たちから引き継いできたことを、ことしのバージョンに改変してうまく回していければなと。祭りにかける気持ちというのはどんどん高くなっていると思います

厄除ちまきづくりや見物客誘導など担当

学生たちは祇園祭の成功に向け、どんなお手伝いをするのか。

まず、学生たちが挑戦したのは祇園祭には欠かせない「厄除ちまき」づくりだ。無病息災の願いを込めながら、一つ一つ丁寧に作っていく。

学生たちが担当するのは、このちまきなどの授与品の販売と見物客の誘導だ。

コロナが落ち着き、3連休と重なる2023年の前祭は、2022年を超える人出が予想されていて、この日の引き初めにも多くの人が参加。誘導を終えた学生たちも特別に鉾を引かせてもらった。

宵山を盛り上げる“若い力”

7月16日、宵山を迎えた。

函谷鉾保存会 伝承委員・中川哲光さん:
今回、皆さんにおいては「実習」です。どうやったらいいんやろって考える、こうやってみようって相談してみる、これでやってみよう、やってみるっていうのがすごく大事

大学3年生・大橋拓真総長:
トランシーバーは早口じゃなく、ゆっくりとはっきりと言葉がわかるようにある程度間をおいて。1回で通じればスムーズになるし、もっとお互いストレスもなくなるので徹底してやっていきましょう

この日は気温35度を超える猛暑日。運営にトラブルがないよう細心の注意を払い、熱中症対策も心がける。

学生たちが手作りしたちまきを販売する。学生たちの若い力が函谷鉾を盛り上げる。

およそ3万本用意した「厄除ちまき」は完売。ちまきなどの売り上げは鉾の維持費に充てられる。そして、函谷鉾の人気イベント「提灯落とし」が行われた。

吊られた提灯が一気に落とされ、観客からは大きな拍手が湧き上がった。

トラブルもなく、安全に祭りを終えることができた。

函谷鉾保存会 伝承委員・中川哲光さん:
僕が思っていた以上の120%ぐらいのパフォーマンス出してくれて、ちゃんとお互い、みんなで話し合っていうのがちゃんとできていたと思うのでことしの学生、すごく素晴らしい子ばっかりやったなという風にほんまに思いました

最後に保存会の伊藤専務からねぎらいの言葉が。

函谷鉾保存会・伊藤邦夫専務理事:
3・2・1回生の皆さんは、来年もリーダーになって、先輩たちを見習って、京産大の魂を引き継いで頑張ってください。これからも末永くよろしくお願いいたします。本当に令和5年度ありがとうございました

大学3年生・大橋拓真総長:
自分たちに力がついたなっていう実感ができたのがすごくうれしくて。伝統を受け継いでいくっていう意味でも、ことし自分たちがやりきれなかったことを後輩たちにも教えてあげたいし、後輩たちにはもっといい結果を残して、次の世代に残していってもらいたいなと思います

1200年以上の長い歴史を持つ、祇園祭。伝統文化を守りながら進化するために、函谷鉾は若い力とともに挑戦し続ける

(関西テレビ「newsランナー」7月19日放送)

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