7月21日、福岡・宮若市の犬鳴川で小学6年生の女の子3人が溺れて亡くなった。この日は夏休み初日だった。
なぜ、このような痛ましい水難事故が起きてしまったのか。現場検証と共に、再び繰り返さないための「川でのトラブルの対処法」を専門家から学ぶ。

「声をかけなかったのが悔やまれる」

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川崎健太キャスター:
福岡県の宮若市を流れる犬鳴川の現場に来ています。川に続く階段があります。現在は立ち入り禁止になっていますが、たくさんの花が手向けられていて、この週末にも多く方が現場を訪れたことが分かります

この日も宮若市の水難事故現場には、3人の幼い命を悼む人たちが訪れていた。

ーー亡くなった女の子に対してどんな思いが?

事故現場を訪れた人:
考えただけで、苦しかっただろうと思って…

事故現場を訪れた人:
ちょうど車を入れに来たときに、彼女たちがおったのよ。(そのときに)声をかけてあげられなかったのが、本当に悔やまれる。それだけ…

夏休み初日、悲劇が3人の子どもを襲う

痛ましい事故が起きたのは夏休み初日だった。

鑓水航記者(2023年7月21日):
宮若市です。犬鳴川の上空です。河川敷には警察官の姿がこちらから確認できます

2023年7月21日、午後1時前。宮若市を流れる犬鳴川で宮若西小学校の6年生の女の子3人が溺れて亡くなった。

女の子たちが最初に遊んでいた犬鳴川支流の山口川
女の子たちが最初に遊んでいた犬鳴川支流の山口川

川崎健太キャスター:
女の子たちは最初、こちらの小さな川(犬鳴川支流の山口川)で遊んでいたということです。ここから見ても川底がはっきり見えていますので、(山口川は)水深が浅いことが分かります

子どもたちは当初、8人で犬鳴川の支流の山口川で遊んでいた。山口川は近くで見るとすぐに川底が見えるほどの浅さ。水深は大人の膝下ほどの約40cmだったという。

事故当時の状況について、子どもたちが通う小学校の説明は…。

宮若西小学校・日高暢裕校長:
最初は、浅いところで遊んでいたそうですけど、そのうち遊んでいたうちの4人が急に川の深いところにはまってしまった。そのうちの1人は、近くにいた友だちが2人で一生懸命引き上げて、なんとか引っ張りあげた状況。3人はそのまま流されてしまったということでした

消防によると、3人が発見されたのは犬鳴川と山口川の合流地点。最初に女の子たちが遊んでいたのが山口川の水深40cm付近。遊んでいるうちに「もう少し深いところに行こう」となり、犬鳴川の合流地点に向かったとみられている。合流地点の水深は2~3メートルで、女の子たちが発見された付近だけ急に川底が深くなっていたのだ。

河川敷から合流地点を見る限り、深さがどれくらいなのか、どこから深さが変わっているのか、まったく分からない。田園にあるごく普通の川。危険が潜んでいるとは想像しにくかった。

専門家は…。

福岡県ライフセービング協会・田原幸佑理事長:
比較的浅い部分が多いので、ぱっと見「そんなに危なくないのかな」と言いつつも「深い部分もあったりする川なのかな」と思いました

ーー川の一部が深くなっているのは?

福岡県ライフセービング協会・田原幸佑理事長:
川の流れとかで川の底が掘られたりとかしますので、深さは一定ではないです

外からは分からない“大幅な水深差”
外からは分からない“大幅な水深差”

救助活動に当たったダイバーによれば、川底が見える浅いエリアから突然、2メートル以上の深さになっていたという。

福岡県ライフセービング協会・田原幸佑理事長:
(急に深いところにはまった場合)パニックになりやすいと思っています。浅いところに移動しようとしたけど、足元が砂だったりとか石だったりして、滑って上がれないっていうことはあり得るかなと思っています

川の急な深みから抜け出すのは大人でも困難
川の急な深みから抜け出すのは大人でも困難

水難学会による「一般的な川での『急な深み』の危険性を示した実験映像」を見ると、急斜面に入ると一気に深みにはまり、斜面を登ろうとしても足元が崩れ、大人でも抜け出すのが困難となることが分かる。

“冷静に体を浮かせる”ことが最重要

川の深みに入ってしまった場合はどのようにすべきなのか?

福岡県ライフセービング協会・田原幸佑理事長:
「浮いて待て」という言葉があるんですけど、息を大きく吸って、肺に空気をためて、浮いて待つというのが大事になります

無理に泳いで戻るのではなく、冷静に体を浮かせることを最優先にすることが命を守ることにつながると専門家は話す。

また、溺れている人を救助する場合は…。

福岡県ライフセービング協会・田原幸佑理事長:
水の中に入って助けるのはやめて欲しいと思います。例えばペットボトルもありますし、浮きそうなものを浮いている人にどんどん投げてあげて、浮力を稼ぐということが大事かなと思います

そして、子どもが夏休みに入り、水辺で遊ぶ機会が増える中、水難事故を防ぐために準備して欲しいものがあると話す。

福岡県ライフセービング協会・田原幸佑理事長:
水の中で遊ぶときは、ライフジャケットを着用して遊んでもらいたいなと思います。家族で遊ぶときもライフジャケットを着て、親は子どもから目を離さないことが大事かなと思います

夏休みに初日に起きた痛ましい水難事故。この悲劇を繰り返さないためにも事前の準備が必要だ。

3人の児童が亡くなった小学校では、子どもたちに再び同じ思いをさせないよう、地域の人たちにも事故防止の協力を呼びかけたいとしている。

(テレビ西日本)

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