真夏の屋外では、子どもの身長の気温の方が大人より7℃高い。

これはサントリー食品インターナショナルと気象専門会社・ウェザーマップが共同で実験を行った結果、明らかになったものだ。

実験は、真夏日を記録した5月17日に、屋外に大人(高さ170センチ)と子ども(高さ120センチ)のマネキンを横並びに置き、地面の照り返しによる気温差と表面温度差を黒球式熱中症指数計と赤外線サーモグラフィーで計測。なお、黒球式熱中症指数計はマネキンの胸の高さ(大人マネキン:150センチ、子どもマネキン:80センチ)に設置した。

気温計測結果(画像提供:サントリー食品インターナショナル)
気温計測結果(画像提供:サントリー食品インターナショナル)
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その結果、大人の胸の高さが気温31.1℃だったのに対し、子どもの胸の高さは気温38.2℃と、7℃の気温差があった。

理由について、サントリー食品インターナショナルの担当者は「地面付近に蓄積された熱や照り返しなどの影響の差により、子どもの身長の高さで計測した気温が大人と比較して+7℃程度になった」と分析している。

また、赤外線サーモグラフィーによる表面温度計測では、大人は首から腰のあたりまで青~黄色のグラデーションで、下半身が赤く表示された。一方、子どもは首から下はすべて赤く表示された。なおグラデーションは、青色から赤色に変わっていくほど高温であることを示している。

表面温度計計測結果(画像提供:サントリー食品インターナショナル)
表面温度計計測結果(画像提供:サントリー食品インターナショナル)

こうしたことから、暑い夏の日の屋外は、大人より子どものほうが熱中症の危険度が高いことが推測されるという。子どもと大人が感じる気温に7℃の差があるとなると、大人より十分な熱中症対策が必要ということだろう。

では具体的に、どのような対策をすればよいのか? 実験を行ったサントリー食品インターナショナルの担当者とウェザーマップの気象予報士・多胡安那さんに詳しくに詳しく話を聞いた。

移動中もできるだけ日陰を選ぶ

――なぜこの調査をした?

サントリー食品:
弊社はこれまでにも、「GREEN DA・KA・RA」を通じ、全国の小学校を対象にした熱中症対策授業やサンプリング、啓発冊子の配布など、2012年発売時から積極的に取り組みを広げてきました。昨今、熱中症リスクが高まる一方で、特に小さな子どもは、大人より地面に近く熱中症リスクが高い状況下にありながら、自分の状態をうまく説明することができません。

そのため、大人よりも暑い環境にいる当事者である子どもたちとその周囲の大人に対し、新たに「こども気温」を紹介することで「こども気温」の周知および熱中症対策の啓発を促していきたいと考え、本調査および啓発活動をスタートしました。
(※こども気温…大人に比べ地面からの距離が近く照り返しの影響を受けやすい子ども特有の暑熱環境)


――今回の実験場所が都内屋上だったが、低い場所でも同じことは言える?

サントリー食品:
今回の実験では、気温ではなく気温差を計測することを目的とし、リスクが高い状況における検証を行うため、日影がなく、コンクリートの地面での照り返しがある環境を選択しました。

計測時点の環境により気温は変動し、天候や環境により実際の気温差は変動しますので、今回の数値は、あくまでも、危険性をお伝えするための一時点での参考値となりますが、低い場所でもこういった気温差が計測される可能性は十分にあると考えております。

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――120センチの子どもで検証したが、もっと小さな子どもだとさらに暑くなる?

サントリー食品:
計測時点の環境により気温は変動し、天候や環境により実際の気温差は変動しますので、今回の数値は、あくまでも、危険性をお伝えするための一時点での参考値となりますが、まず地面が暖まって、次に地面のそばの空気が暖まり、その空気が周囲へ流れていくことで空気全体が暖まります。

ですので、地面に近いほど温度は高くなります。より低い場所であれば、地面の照り返しなどの影響が大きくなるため、さらに温度差が出てくる可能性はあると考えております。


――外出した際、熱中症のリスクが高い場所はどんな所?

気象予報士・多胡安那さん:
熱中症のリスクがある場所は、外遊びだけではなく、特にコンクリートやアスファルトなどのフラットな地面は照り返しが強く、ビルやマンションなど側面からも照り返しは起きています。移動中もできるだけ日陰を選ぶことが大切です。

また、屋外プールや海での遊びも盲点です。直射日光を浴びているだけでなく、プールサイドや水面からも照り返しがあります。水中では発汗の感覚がありませんが、確実に汗をかいているので、熱中症対策は重要です。

30分おきの日陰の休憩と水分・塩分補給をセット

――気を付けたほうがいい時間帯はある?

気象予報士・多胡さん:
暑さの一番の原因は日差しなので、日が強い日中は特に熱中症に警戒が必要な時間帯です。ただ、近年、温暖化などの影響で暑い時間が長くなってきています。

一昔前と違い、今は夏場だと早朝から早くも30℃を突破しますし、夜も遅くまで暑さが続きます。猛暑と熱帯夜が何日も続く時代になってしまったので、昼間だけでなく、朝も夜も熱中症に警戒が必要です。朝は寝起きにすぐ水分補給をしたり、夜も冷房をつけて寝るなど、朝晩も対策が必要です。


――水分補給のポイントは?

サントリー食品:
水は、人間のからだを構成する上で、とても重要な役割を担っています。水分を摂るのとほぼ同量の水分を排泄して、体内のバランスを保っていますが、体重のわずか1%程度の脱水が起きただけでのどの渇きを感じ、4~5%失うと吐き気や頭痛などの症状が出てくるといわれています。

ですから、水分補給は、のどの渇きを感じる前に行うことがポイントです。たとえば、朝起きたとき、お風呂あがりなど1日の中で時間を決めて、コップ1~2杯(200~400ml)の水分を摂ると、無理なく1リットル以上の水分を補給することができます。でも、1度に大量の水を飲んだり、冷やし過ぎた水を一気に飲んだりするのは胃腸に負担がかかるので要注意です。

夏の暑い時期は、洋服が汗でぬれるくらいになったら多めに水分を補給しましょう。水分・ミネラル補給のためにミネラル量や浸透圧が調整された飲料を飲むことで、汗をかいて出ていった水分だけでなく、一緒に排出されてしまったナトリウムやその他ミネラルも補うことができます。


――最後に、子どもが熱中症にならないためのアドバイスをお願いしたい。

気象予報士・多胡さん:
暑い日の熱中症対策の基本は、長時間日なたにいないこと、そして汗で失われている水分と塩分の摂取です。特に子どもは遊びに熱中しがちで、突然遊びを中断されることを嫌がります。遊びと、30分おきの日陰での休憩と水分・塩分補給をセットにして子どもに習慣づけてあげれば、熱中症対策が自然と身に付いてくると思います。

また、遊びに夢中になり水分補給を面倒くさがるお子さんもいるかもしれません。例えば、水分補給に適したドリンクを何種類か紙カップに入れたものを並べておいて、子どもたちに好きなカップを選んでもらう。その中に入っている飲料は何かを当てるといったクイズをやるなど、答えを考えながら飲めるようなゲーム性やイベント性を持たせてみる。遊びも水分補給も「みんなで楽しく」が今年の対策の肝になると思っています。

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全国各地で梅雨明けが発表され、猛暑日になる日も増えてきた。夏休みに入ったと思うが、保護者は子どもを熱中症にさせないよう「長時間日なたにいないこと」「汗で失われる水分と塩分の摂取」といったアドバイスを参考にして夏本番を過ごしてほしい。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。