「異次元の少子化対策」の一環として、政府が新たに推進しようとしている「週休3日制」の普及。1日の就業時間や給与を変更しないという条件で、いち早く週休3日制導入に取り組んできた広島県の企業を取材した。

収入や労働時間が同じなら…賛成92%

Job総研が589人の社会人を対象に行った「2023年 週休3日制の意識調査」によると、収入や1日の労働時間に変更がないという条件の元では約92%が賛成している。

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しかし、「1日の労働時間を増やす」という条件では賛成派は約61%に減少。さらに「収入が減少する」という条件では賛成派は約30%にまで減少した。

少子化対策や働き方改革でとりわけ注目される「週休3日制」。県内では、東広島市の精米機メーカー「サタケ」が6年前から週休3日制の導入に取り組んでいる。

サタケ・小林照幸 人事部長:
得意先や仕入れ先が普通に営業している中、サタケだけ休みというのはなかなか仕事をする上で影響がありました

サタケでは、1日の就業時間や給与を変更しないという条件で2017年、試験的に導入をスタート。

サタケ 海外事業推進室・井川さとみさん (入社11年目):
最初の年はうまくいかず、作業がどんどんずれ込んでいく状態が続きました。導入前は週5日働いても時間いっぱいいっぱい忙しかったんですね。さらに1日休みになるということで、仕事をどうしようと思いました

週休3日制の導入当初は、“仕事が滞ることへの不安”が先行していた。

試行錯誤の末、「水曜を交代で休む」

その後、改善を繰り返し、3年目となる2019年に制度を大きく変更する。

サタケ・小林照幸 人事部長:
一斉に休むのをやめて、チームを2つのグループに分けて交代で休むようにしました。特に影響が少ないと思われる水曜日を選んで、そこを交代で休むという取り組みに変えました

グループに分けて交代で休むためには、管理職のリーダーシップも必要だという。

サタケ 産機プラント部・藤原なるみ 部長:
気をつけているのは“一人作業”を作らないことです。その人が休んでいる間は仕事が滞ってしまうので、課員で手分けをして“他にもできる人がいる”ように以前から取り組んでいます

入社3年目の檜和田さんもそんな会社の取り組みを感じている。

サタケ デジタル技術研究室・檜和田貫児さん(入社3年目):
一人ですべて進めるということはほとんどなくて、チームで協力して役割分担をして進めることが多いです。一人に負担がかかる、一人が残業するというわけではないです

改革を重ねること3年…。週休3日制の取り組みは完成形に近づいている。

サタケ・小林照幸 人事部長:
取引先に対しても社内の業務についてもうまくできたという手応えはありました

週休3日制がキッカケで“やめたこと”

週休3日制を実現するためには避けて通れない難関がある。「4日間で仕事を終わらせなければならない」という問題だ。前述のアンケート調査でも、週休3日制に反対する理由で最も多かったのが「業務が停滞する可能性がある」ことだった。サタケが社内で徹底したのは、仕事そのものの見直しである。

サタケ 産機プラント部・藤原なるみ 部長:
正直なことで言うと、お客の売り上げに対してものすごく細かく手作業でデータベースを作っていましたが、それをなくしました。なくしたけど、別に害はないので

サタケ 海外事業推進室・井川さとみさん (入社11年目):
会議のためにわざわざ社内資料をたくさん準備していたのですが、そういうものを簡素化してみました。それで会議に臨むと、意外とこんな資料いらなかったとか、簡単な資料で問題ないということがわかりました。仕事の進め方も変わりました。労働時間が短くなったので、すぐ上司に相談することを始めました。それでの悩む時間や作業が止まる時間が減ったので作業時間は早くなりました

サタケ デジタル技術研究室・檜和田貫児さん(入社3年目):
スケジュール管理はマストだと思います。チームのメンバーや上司と相談しながら決めることで、より効率良く1週間の仕事を進めることはとても重要だと考えています

週4日で仕事を終わらせるために、仕事内容を見直す。すぐに相談する。このように、進め方にも変化が現れたのだ。

ムダを見直せば“生産性”が上がる

アンケート調査では約8割が「週休3日制を導入することで仕事の生産性が上がる」と回答する結果になった。

アメリカで9年間勤務して、2023年に帰国した浅山さんはアメリカのビジネス事情をこう話す。

サタケ 企画管理室・浅山祐樹 課長(アメリカで9年間勤務):
アメリカ人は無駄だと思うことは一切やらないので、無駄なことをやらないということに関してたけている。なので、すごく生産性が高いと思う

週休3日制の導入を進めた結果、仕事の進め方にも大きな変化が起きたという。

サタケ・小林照幸 人事部長:
5年も10年も同じようなやり方をしている仕事がたくさんあります。これまでしてこなかった見直しを、週休3日制の中でそれぞれが工夫したと思います

「やらない」を見つけて労働時間を減らすことで、仕事の生産性が上がる。そして、一人ではなくチームで仕事をすることによって、個人の負担が軽減される。週休3日制導入のメリットを県内のパイオニアが6年かけて実証した。

(テレビ新広島)

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