2023年4月、おたる水族館で「ペンギンのプール」がリニューアルした。

たくさん運動してもらおうと、プール内に岩山が作られたのだ。

しかし、肝心のペンギンはまったく見向きもしてくれない。

プール完成から2カ月あまり経ち、ペンギンは岩山に登ったのだろうか?

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水族館スタッフ:
それいけ!私もたぶん飛ばないだろうと思ってやっていますけれどもね。それじゃあ、泳いでいるペンギンをご覧ください

目立つのは食欲ばかり。"やる気のない態度"が逆にかわいらしいと人気のおたる水族館のペンギンショーだ。

スタッフが、ユーモアをまじえながらペンギンの特徴などを教えてくれる。

そんなペンギンたちのために、この春、完成したのが「しゃっけー!プール」だ。

真ん中に島があり、島には高さ2メートルの岩山を設置した。

「『しゃっけー』には2つの意味があり、1つはペンギンのため。岩山に登ると遮蔽物がなく、横からの風に当たるので涼しい。北海道弁で言う「しゃっこい」「しゃっけー」』(おたる水族館 飼育部次長 角川 雅俊さん)

もう1つは「景色を借りる」という意味の「借景」だ。

ペンギンが岩山に登ると、柵やガラスが写らずに海と一体化した写真が撮れる。

フルボルトペンギン…実は絶滅危惧種

ユーモラスに見えるフンボルトペンギンだが、実は、環境破壊で数が減った、絶滅危惧種なのだ。 
より良い環境で飼育していこうと、これまであったものをリニューアルしたのがこのプール。
広さを倍以上にし、飼育環境の劇的な改善を目指した。

しかし、4月のお披露目会で撮影に訪れた、この道40年のベテラン・カメラマン、八重崎邦宏さんに話を聞くと、ペンギンたちの行動は予想外だった。

「なんとか水族館の理想に近い形で、岩場に立つペンギンを撮りたかったのですが、一度のチャンスも訪れなかった」(八重崎さん)

3時間粘っても、ペンギンたちは岩山に見向きもしなかったという。

あれから2カ月。果たしてペンギンたちは、新環境に興味を持ってくれたのだろうか?

設置したのは、小型カメラ3台。

あまりに登らないため、急きょ設置した島に上陸するためのハシゴの近くに1台。
プール全体を見渡す場所などに2台だ。

午前9時の開館から午後5時の閉館までカメラを回し続ける。

我々の期待をよそに、ペンギンたちはとってものんびり。
ぷかぷかとプールに漂ったり、毛づくろいをするばかり。

警戒心強く用心深いフルボルトペンギンたち

撮影開始から約1時間後。
岩山をちらちら見ながら泳ぐペンギンたちの中に!

「翼がいま…。翼は乗ったけど…」

午前10時から11時にかけてペンギンの動きが活発になってきた。 
しかし、一向に登ろうとはしない。

「フンボルトペンギンは警戒心が強く用心深い。環境が変化した際、慣れるまでには少し時間がかかる」(おたる水族館 角川 雅俊さん)

おたる水族館 角川 雅俊さん:
こちらにいるのはジェンツーペンギン。好奇心が強く、プールが出来上がったとき、試しに入れてみたら、すぐに登った。

ジェンツーペンギンをプールに入れたらいいのでは?

おたる水族館 角川 雅俊さん:
ジェンツーペンギンは南極周辺に住んでいる種類なので、気温が高いと体長を崩す。今は外には出せない状況。

生息地が南アメリカのフンボルトペンギンは暖かい空気を好む。 
一方、暑さに弱いジェンツーペンギンは夏の間、外に出すことは出来ず、プールに登場するのは10月ごろからだという。 

フンボルトペンギンたちは、お昼のエサをもらうと、ショーの時間以外は”まったり”。
午後のほとんどをは日向ぼっこばかりして過ごす。

ショーでの飼育員の言葉が頭をよぎる中、時間だけが過ぎていく。 
閉館が迫る午後4時、園内の清掃作業が始まると、ペンギンたちのほとんどは屋内に姿を消してしまった。

ということで…この日、上陸したペンギンはゼロ…

しかし、取材班は決してあきらめない。

別の日!午前10時40分ごろ、ついに島に上陸した姿が捉えられた。

しかし、岩山の頂上までは登らなかったため、どうしてもアクリル板越しの撮影になってしまう。
さらに30分後には2羽が一度に上陸してくれた!

この日、上陸したのはわずか2回。

それでも、おたる水族館のフンボルトペンギンたちがこの岩山に登ることは分かったのだった。

北海道文化放送
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