コロナ禍で打撃を受けたエステティシャンが、アフターコロナの新規事業を支援する国の「再構築補助金」を活用し、パティシエの弟とスイーツ製造会社を立ち上げた。開発したプリンやカヌレは今や人気商品に。きょうだいの奮闘を追った。
経験ゼロからスイーツ製造会社設立へ
高知市葛島にあるエステティックサロン「PREMIUM CURE(プレミアム キュア)」は、25年以上続く隠れた人気店で、ボディーケアやフェイシャルエステなどを行っている。
この記事の画像(11枚)この店を経営するのは山川律子さん、55歳。3人の従業員を雇い、経営は順風満帆だったが、新型コロナの影響で一時、利用客はゼロにまで落ち込んだ。
山川律子さん:
長年積み重ねていたものが崩れていくような。絶望的みたいな感じ
店を守り、従業員の雇用を維持するため始めたのは、スイーツ販売だった。
矢野愛優記者:
店の外でスイーツを販売しています
山川律子さん:
(お菓子の)のぼりが立ったときに「お菓子屋さんに変わったかと思った」って言われました
アフターコロナの新規事業を支援する国の「再構築補助金」を活用し、2022年、県産素材にこだわった冷凍スイーツを手掛ける会社「ワンデースイーツラボ」を設立した。
しかし、山川さんは、これまでほぼお菓子を作ったことがなかった。
山川律子さん:
最初は(調理)道具の名前も全く分からなかったです
そんな山川さんがスイーツ業界に参入した大きな理由は、弟の存在だった。2つ下の弟、小松幸一さんは、10年以上パティシエとしてスイーツ開発に関わってきた。その技術を生かし、きょうだいでスイーツの製造販売をすることにしたのだ。
住宅を改造した工場で誕生した人気商品
香美市内にオープンした工場の外観は、普通の家。
小松幸一さん:
(工場の)看板がない時は、こっちに招待された方は前の道をウロウロ…
実はここは、空き家だった山川さんの夫の実家だ。
応接間だった場所はキッチンに、ダイニングスペースは業務用の冷凍室に改装。それ以外のスペースはそのまま残し、なんとも“実家感”あふれるユニークな趣となった。
そんな工場で3カ月以上かけて生み出した看板商品が、高知県産の牛乳に北海道産の生クリームを贅沢に使用した「プレミアムキングプリン」だ。
矢野愛優記者:
濃厚!さわやかさも少しあり、舌ざわりも滑らか。冷凍していたとは思えません
さらに、県産の土佐紅芋に黒潮町の完全天日塩を使った「焼き芋カヌレ」は、1カ月に130個以上売れる人気商品となった。
矢野愛優記者:
焼き芋を食べている!という感じです。塩味がきいていて、甘さが引き立っておいしいです
家族やサロンの従業員も開発に参加
この日は新商品の試作。新作は、大豊町産のブルーベリーを使用したブルーベリーフロマージュだ。
小松幸一さん:
ブルーベリーの本来の甘味、酸味、うま味を表現したいと思ったので、余計な砂糖とかを入れずにお菓子にしたい
これまで使っていた県外産レモンを果肉が入った県産レモンに切り替えて、味の違いを比べるため、早速、試食する。
山川律子さん:
(県産レモンの方は)酸味がちょっと少ない。(県外産)レモンの方より。(県産レモンは)ツブツブ感はないのかな。残らないのかな
従業員:
チーズのにおいは、こっち(県外産)の方がする
家族やサロンの従業員にも意見を求め、完成を目指している。
「コロナがなければチャレンジはなかった」
ワンデースイーツラボの商品はインターネットのほか、香美市のスーパーでも販売している。山川さんは、エステとは畑違いの営業活動にも励んでいる。
山川律子さん:
プジン(新商品)食べていただきました?
スーパーの仕入れ担当者:
おいしかったです
山川律子さん:
よかったです。ラベル印刷を注文中なので、それができたら今月末か来月か…またぜひお願いします
山川律子さん:
コロナがなければ、私たちのチャレンジはなかったですし、ワンデースイーツラボが誕生することもなかった。第二の人生じゃないけど(チャレンジして)よかったと思います。みんなに愛されるお菓子を作っていきたいですし、ぜひ食べていただきたい
高知の魅力をたくさん込めて。きょうだいの挑戦は続く。
(高知さんさんテレビ)