街中で知人と遭遇した時に気付かないふりをしたことはないだろうか。20代は約3割が気付かないふりをするという。

マーケティング・リサーチ会社のクロス・マーケティングは、2023年5月19~21日、全国の20~69歳の男女1100人に「人との距離感・関わり方」をテーマにアンケート調査を行った。

コミュニケーションの積極度(提供:クロス・マーケティング)
コミュニケーションの積極度(提供:クロス・マーケティング)
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ここでまずは“家族や親しい人以外の人”とのコミュニケーションに対する積極度を聞いたところ、「積極的+やや積極的」が21%、「消極的+やや消極的」42.7%となり、若干だが消極的な人が多かった。

知り合いではない人との距離感(提供:クロス・マーケティング)
知り合いではない人との距離感(提供:クロス・マーケティング)

しかし、知り合いではない人との距離感として当てはまるものを質問(複数回答可)したところ、「前を歩く人が落とし物をしたら声をかける」(49.1%)でトップに。ちょっとした会話やあいさつに良さを感じるなど、見知らぬ人との関わりに好意的な回答も目立った。

見知らぬ人とのエピソード(提供:クロス・マーケティング)
見知らぬ人とのエピソード(提供:クロス・マーケティング)

見知らぬ人との善意のやり取りのエピソードを自由に書いてもらったところ、“靴擦れした時に突然声をかけられ、絆創膏をもらって感動した”“タイヤがパンクした時、通りすがりの車がタイヤ交換をしてくれた”といったものも寄せられた。

知り合いにはネガティブ?“気付かないふり”をすることも

それでは、知り合いの場合はどうなるのだろう。

知り合いとの距離感(提供:クロス・マーケティング)
知り合いとの距離感(提供:クロス・マーケティング)

知り合いとの距離感として、当てはまるものを質問(複数回答可)したところ、こちらは「大勢の知り合いの前で注目されることは避けたい」(28%)、「大勢の知り合いを前にして何かを話すのはいやだ」(24.5%)「街中で知り合いを見つけたら気付かないふりをする」(22.5%)という回答が上位を占めた。

知り合いとの距離感の年代別の回答結果(提供:クロス・マーケティング)
知り合いとの距離感の年代別の回答結果(提供:クロス・マーケティング)

年代別で見ると、20代は「街中で知り合いを見つけたら気付かないふりをする」(29.5%)がトップとなった。一方で、60代は「街中で知り合いを見つけたら声をかけたくなる」(22.7%)という回答が2位となった。

これにはどんな心理的要因が隠れているのだろうか。クロス・マーケティングの担当者に聞いた。

話すことが照れくさい、失敗したくないという心理

――今回の調査を行った、目的を教えて。

調査テーマの相談をした際、今の若者は「人前でほめられることがあまり好きではない」「店で名前を覚えられるのが好きではない」という意見が出ました。コロナ禍で人々は距離を取るようになりましたが、距離感はどうなのだろうと思い、調べました。

相手のためという安心感が影響か(画像はイメージ)
相手のためという安心感が影響か(画像はイメージ)

――見知らぬ人に“落とし物をしたら声をかける”といった善意ができるのはなぜ?

反射的に行動するところもあるでしょうが、相手のための行動という、安心感が影響しているかもしれません。そのため“話しかける”というハードルを超えられるのではないでしょうか。


――知り合いだと距離をとってしまうのはなぜ?

話すことが照れくさい、失敗したくない心理があるように思います。知り合いとの会話はその瞬間だけではなく、普段の関係性にも影響します。(プライベートでは)知らない人の方がかえって話せる、知り合いは避けたい気持ちが芽生えるのではないでしょうか。

「このタイミングで声をかけるとどうなるのだろう」という心配と配慮

――若者が“気付かないふり”をするのはなぜ?

根幹には「このタイミングで声をかけるとどうなるのだろう」という心配、相手の感情に対する配慮があるようにも思います。迷惑をかけてはいけないといった気持ちが、顕著に出やすいのが若年なのかなと。ここが影響しているように思います。


――60代などは会話に前向きな印象もある。

年齢を重ねて「会話は内容がなくても成立するのでは?」と考えているのではないでしょうか。今までの経験で“会話の引き出し”はできているので、会話を苦にすることなく続けられる。話す方が自然だと考えるようになったのではないかと思います。

同僚と電車が一緒になったシーンでは…(画像はイメージ)
同僚と電車が一緒になったシーンでは…(画像はイメージ)

――知り合いを避けてしまうのは、日本ならではだったりするの?

オランダ出身の社員に聞いてみました。会社の帰りに同僚と電車が一緒になった時、日本ではタイミングをずらすことがあると思いますが、オランダでは同行することが多く、それがマナーだと思っていたそうです。タイミングをずらすことがあると知り、驚いたと言っていました。

その一方で、中国に詳しい社員に聞くと、中国でも若者は街中で知り合いに声をかけなくなっているそうです。地域より世代かもしれません。日本特有というわけではなさそうです。

コミュニケーションのハードルがあがっているかも

――知り合いを避けてしまうことをどう思う?

個人的には、無理に直さなくてもいいのではと思います。ただ、すべての接触を避けるのは寂しい気もします。行動を起こすと「こんな人だったんだ」と分かって面白いこともあるでしょう。


――知り合いを避けてしまう人にアドバイスを。

避けてしまうことは悪いことではありません。ただ、お互いが100%のセーフティゾーンであることはなかなかありません。今はコミュニケーションを取ることのハードルがあがったように思うので、できる状況であれば、話しかけてもいいかもしれません。


若者が街中で知り合いを避けてしまうのは、人間関係の心配、相手への配慮などが影響していそうだ。仲良くなりたいのであれば、少し勇気を出して、話しかけることがあっていいかもしれない。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。