国の特別天然記念物、コウノトリのヒナが香川・まんのう町で初めて誕生してから約1カ月。地域ぐるみでヒナの成長を見守る中で、巣の保護を巡って新たな動きも出ている。

なぜまんのう町が子育ての地に?

6月12日、コウノトリのヒナが羽を広げて飛ぶ練習のようなしぐさを見せた。

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香川県内で初となるコウノトリのヒナが誕生したのは5月中旬。下旬には2羽目が生まれ愛くるしい姿を見せていたが、そのうち1羽は死んでしまった。

近くに住む米田千鶴子さん:
近所の人と残念だったねと話をした。私もその日は本当にショックだった…。もう1羽は何とか巣立ってほしい

米田さんは残る1羽の成長を静かに見守っている。そもそもなぜ、このペアはまんのう町を子育ての地に選んだのか。

兵庫県立コウノトリの郷公園・西田和佳奈さん:
まんのう町には田んぼがたくさんあり、繁殖に必要な生き物、エサがたくさん取れるので、子育てしやすい良い場所だと思ったのではないか。ヒナは親と同じものを食べている。淡水魚やカエル、バッタ、ヘビなどを好む

電柱にも安全のための工夫

もう1つ注目されるのが巣の場所だ。

今回このペアが巣を作ったのは電柱の上。四国電力送配電は、巣が確認された4月上旬からこの電柱を電気が流れない状態にし、コウノトリの安全を守っている。

四国電力送配電丸亀事業所・京野利広所長:
この電柱は幸いにも電気が流れない状態を作れたが、電気の安定供給のためには常に同じような対応ができるとは限らない

専門家によると、コウノトリは繁殖に成功した場所を好んで戻ってくる習性があり、地元の人からはこんな声が…。

近くに住む米田千鶴子さん:
巣を残せたら良いな、これが地元のみんなの願いであり、楽しみでもある

徳島県にモデルケースも

法律で保護が定められているコウノトリ。その巣の行方を巡って参考になる例が、徳島・鳴門市にあった。

2015年、ここでも同じように電柱の上に巣を作ったペアがいたが、とくしまコウノトリ基金によると、その後県が電柱の所有権を買い取り、四国電力送配電が別の送電ルートを整備したのだという。

このペアは毎年産卵に帰って来ていて、2023年も3羽のヒナが元気に巣立った。

近くに住む米田千鶴子さん:
徳島県鳴門市ではずっと帰って来ていて、ヒナが2羽、3羽と巣立っていると聞いた。ここでもそういう風になってほしいなと思う。何とか巣を残してもらえたら良いな

こうした地元の人の声に対し、四国電力送配電は…。

四国電力送配電丸亀事業所・京野利広所長:
コウノトリを保護する法律に基づきながら対応していきたいと考えているが、電力の安定供給を担っているので、停電しないよう必要な対応もしていく。これらを両立するため関係各所と協議をしながら対応していきたい

また、まんのう町は「大変貴重なものなので保存していきたいと考えていますが、電力の安定供給という側面もあるので、四国電力とよく協議していきたい」とコメントしている。次の年以降もコウノトリは戻ってくるのか。ヒナの成長と巣を巡る今後の動きに注目だ。

(岡山放送)

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