戦時中に旧陸軍が開発し、激しい副作用がありながら、瀬戸内市や高松市の国立ハンセン病療養所の入所者らに投与された薬「虹波」で新たな事実です。その治験に、国の関与があったことを示す記録が見つかりました。

(ハンセン病を研究する出岡学さん(60))
「開示してもらったのは、所長会議が年に1回ずつくらい開かれていたが、それに関する記録とか、旧厚生省と菊池恵楓園の通信のやりとり」

記録を確認したのは、横浜市に住む元高校教諭でハンセン病を研究している出岡学さんです。出岡さんは、熊本のハンセン病療養所菊池恵楓園に残されていた会議録、「昭和21年1月17日所長会議」の情報開示請求を行い、OHKが出岡さんから提供を受けました。

「虹波とセファランチングループを作ったのは厚生省の勝俣技監が命じたのである」会議録には、厚生労働省の前身、旧厚生省の幹部が施設を選んで虹波の研究を命じていたことが記録されていました。

(ハンセン病を研究する出岡学さん(60))
「虹波について限られた3つの療養所で戦後の治療やっているが、もっと愛生園でも虹波の実験させてくれないかみたいな発言があって、これまで、今の厚生労働省は厚生省が直接関わったことを否定してきていたらしい」
「まさに厚生省の後輩役人が先輩がやったことですということを言っているのは、まさにビックリなビッグニュース。」

虹波は、戦時中、寒冷地での兵士の身体機能の増進を目的に旧陸軍が開発したとされています。旧陸軍の依頼を受けて熊本の菊池恵楓園の当時の園長が、臨床試験として入所者に対し、投与したことが分かっていますが国は一貫して、直接関わっていないとしていました。

園に残る資料には、少なくとも入所者472人に投与され、激しい副作用で9人が亡くなったことも記されています。熊本で進められている虹波の検証作業の中で、瀬戸内市の長島愛生園や高松市の大島青松園のほか、東京や鹿児島、静岡、最近では沖縄の療養所でも虹波の投与の記録が見つかっています。

(歴史学者 藤野豊さん)
「明らかに厚生省のもとに進められた研究であると思うから国の関与は明らか」
「国策で虹波が開発されハンセン病の療養所で人体実験のような形で投与されたと考えていい」

また、旧満州で細菌兵器を開発したとされる陸軍731部隊でも虹波を人体実験に使っていた記録が残されていて、新たな資料の発見は、大きな意味があると歴史学者の藤野さんは話します。

(歴史学者 藤野豊さん)
「軍事研究の実験材料にハンセン病の人を使ったとも言えるわけなので、今年戦後80年、戦争中の医学犯罪にも関わってくるから厚労省ももう一度省内の資料の調査を徹底的にやるべき。」

ハンセン病患者を強制隔離した法律「らい予防法」が撤廃されて2026年で30年。国は、元患者たちに謝罪し、偏見・差別の解消と名誉回復に努めると約束しています。

(ハンセン病を研究する出岡学さん(60))
「(国は)名誉回復や真実の解明が義務として課せられているわけだから、根拠なく否定していた、解明していくことは彼らにとっても必要なことだし大切」

全国のハンセン病療養所の入所者の平均年齢は、88・8歳、彼らに真実を示すための時間はそう多くはありません。

岡山放送
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