陸上自衛隊の射撃場で起きた銃の発射事件。「イット!」では、元陸上自衛隊陸将で千葉科学大学客員教授の山下裕貴さんに話を聞いた。

18歳自衛官候補生の男を逮捕

まず事件を整理します。事件が起きたのは14日午前9時10分ごろでした。

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射撃訓練中に自衛官候補生の男(18)が自動小銃を指導部の自衛官3人に向けて発射。50代と20代の男性隊員2人が死亡し、1人が負傷したというものです。

事件が起きた日野基本射撃場は屋内の射撃訓練場で、全長340メートル、幅30メートルという大きな施設で、300メートル先の的を撃つこともできるということです。

――3人が死傷という大変、重大な事件ですが、山下さんはどう受け止めていますか?

元陸上自衛隊陸将・山下裕貴さん:
武器を装備する陸上自衛隊がこのような事件を起こしたというのは、国民に与える影響が大きいということで、OBとして非常に申し訳ない。

――以前、建て替え前にこの射撃場を実際に訪れたそうですね。

そうですね。中部方面総監部に勤務していましたので、ここは管轄ですから。

――どんな場所ですか。

岐阜の分屯地近くにあって、市街地が迫っていて住宅が近くにあるので、昔はオープンエアの射撃場でしたが、室内射撃場を作った。

銃や弾薬は厳重に管理…弾薬は撃つ直前に装塡

山下さんに、銃の管理について事前に伺いました。

銃は武器庫で何重にも鍵をかけて保管していて、弾薬は「弾薬を管理する部隊」が管理。自動小銃は訓練の時だけ手にできるということで、持ち歩く際は、弾薬が入っていない状態で持ち歩き、撃つ直前に初めて装填する。こういった対応が取られているということなんですね。

――厳重に管理されているようですが、射撃訓練の時はどのような状況でしょうか。

元陸上自衛隊陸将・山下裕貴さん:
射撃訓練では、まず射撃場に隊員たちが集合して、射撃の体制が整って、射座という実際に射撃をするところの近くで弾薬の交付を受けて、そして射撃を実際にする地点に行って、射撃係というトレーナーの指示を受けて装填して、射撃をする。射撃場でも厳重に管理されています。

――自動小銃というのは、どんな特徴がありますか。

陸上自衛隊の隊員であれば、全員が装備をするベーシックな武器です。陸上自衛隊の隊員はほとんど、この小銃の射撃訓練を受けます。専門に分かれていくにしたがって、拳銃に変わる人もいますが、基本的な装備だということです。

――1回の発射で何発も弾が出る…どういうものなんですか?

自動小銃ですから、弾倉が2種類ありまして、30発入っている弾倉と20発入っている弾倉を装着して、フルオート・自動オートマティックで撃てば、全弾が発射できる。もしくは単発にすれば、1回ずつ引き金を引く。両方使えます。

――今回の訓練は学生およそ70人、教官50人で行われたということですが、教官たちは訓練生のどういうところを見ていて、どういう指導をしているんですか?

基本的には射撃の安全上、基本動作。誤っていろんな動作をしないように徹底して、教えられた通りに動作をやっているか、教えられた通りに銃を携行しているか、あるいは弾薬を装填しているか、射撃姿勢をしっかり取っているか。赤い帽子をかぶっているのが射撃係で、近くで指導します。

GW明けから銃の訓練を開始

逮捕された自衛官候補生(18)は、2023年4月の入隊でした。

そして、5月のGW明けから銃の訓練を始めたということで、6月下旬には前期教育といのが終わって、その後、職種に分かれた訓練をして、9月ごろに正式配属の予定だったということです。

――実弾訓練は4回目だったということですが、銃を使用するにあたって、適性検査はありますか。

元陸上自衛隊陸将・山下裕貴さん:
自衛官ですから、入隊後に適性検査をして、入隊した自衛官候補生がどのような職種に向いているか、銃を扱えるかどうかという目的ではなく、彼らがどのような適性があるかという適性検査をします。そういう意味では、装備を使えるかどうかも含まれていることになります。

――その適性検査の途中だった?

適性検査も既に終わっているはずなので、彼らを訓練中よく見て、どのような職種に向いてるかを見極めていく段階。そして、この小銃というのは、陸上自衛官が最低身につけないといけない基本・基礎動作の一つですから、それをこの3カ月間の中でしっかり教育をする過程だったということになります。


陸上幕僚長は今回の事件を受けて、調査委員会を立ち上げるということです。

(「イット!」6月14日放送より)