5月にインドネシアで開かれたメディアの将来を議論する世界会議で、OHK岡山放送が行ってきた手話放送の取り組みが紹介された。情報から誰一人取り残さない「インクルーシブ」な放送を目指す取り組みに、世界各国の参加者からも「素晴らしいアイデア」「インスピレーションを受けた」「とても感心した」などと評価された。

コンテンツの差別化が共通課題

日本から約5,500km、インド洋に囲まれたインドネシア、バリ島で、5月23日から2日間、アジアを中心とするメディアの世界会議「アジアメディアサミット」が行われた。

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サミットには約40の国から、情報担当相や国営放送の代表など500人以上が参加。

脱炭素化が浸透しているヨーロッパでは、資材のリサイクルやペーパーレス化など環境に配慮した番組制作が進められ、韓国では、テレビ番組や映画など映像コンテンツの輸出入が活発化。

インターネットが普及し、さまざまな情報メディアが台頭する中、コンテンツをどう差別化するかは各国が抱える共通の課題で、メディアの将来について議論が交わされた。

ディスカッションでは、「持続可能な放送のために新たな収入源をどう開拓していくかが課題」、「コストやエネルギーなどにおいて無駄がない選択を最優先すべき」などの意見が交わされた。

OHKが提案「ビジネスモデルとしての手話放送」

OHKは日本の放送局としては唯一の参加で、30年間続けている手話放送の取り組みが評価された。

岡山放送・篠田吉央キャスター:
私たちの取り組みのポイントは、インクルーシブな番組制作、そしてビジネスモデルとしての手話放送

手話放送は、参加したほとんどの国で、日本と同様に公共放送のニュースなどで行われている。

そうした中、OHKでは2023年3月から、地元企業と連携し、手話を付けたCMを制作し放送、民間の放送局の収入源となっているCM放送に手話を付けることで、社会貢献ではなく、新しいビジネスモデルとして確立を目指している。

そうした取り組みを地方の放送局が行っていることは各国にとっても新鮮で、サミットのテーマでもある「持続可能」な取り組みとして注目された。

バングラデシュ国営放送・局長:
新しいイノベーションだと思う。障害者に対してチャリティーやボランティアではなく、放送局の利益につながることが、彼らにとっても良いことであるというのは新しい

ブータン国営放送・CEO(最高経営責任者):
公共放送に携わる者として、誰一人残さず情報を届ける責任があることは自覚している。それを持続可能にするためにも、ビジネスとして成功していることは素晴らしい

「地方の情報格差を考えるうえで参考に」

会場で講演を聞く日本人女性がいた。世界の電波や通信を管理する国連の専門機関、ITU(国際電気通信連合)のアジア太平洋事務所で所長を務める奥田敦子さんだ。

ITUアジア太平洋事務所・奥田敦子所長:
新しい技術がどんどん市場に出てきている中で、工夫をしなければいけないという思いで放送業界の人が集まった、やはり危機感を感じていると思う。もっと地域に密着して、人々の声を吸い上げるような放送が良いのではということで、そのモデルの一つとしてOHKが提案したことはインパクトがあったと思う

奥田さんも指摘するメディアをとりまく社会の変化、そうした中で、地域に根差したOHKの取り組みは、経済状況や放送形態が異なる国からも強い共感を得たと言う。

インドネシア通信情報省:
岡山での小規模な地方局での取り組み。聴覚障害者との番組制作について、前向きなアイデアをたくさんもらえた

フィジー首相府次官補:
フィジー政府は今、地方の活性や環境整備に注力している。地方の情報格差などを考えるうえでも、この取り組みは参考になった

香港公共放送キャスター:
帰ったら私たちのチームにもシェアしたい。今後ぜひ連携していければ。一緒に頑張りましょう

手話放送から始まったインクルーシブな取り組みの輪が世界に広がろうとしている。

(岡山放送)

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