フジテレビ系列で放送しているドラマ「silent」に、“ろう者(聴覚障害者)”が俳優として出演している。“ろう者の友人役”で出演する那須映里さん、手話教室の講師役で出演する江副悟史さんに話を聞いた。

カフェに“聖地巡礼”するファンの姿も

フジテレビ系列で毎週木曜日午後10時から放送しているドラマ「silent」。聴力をほぼ失った男性が、元恋人や旧友と再会することで起きる、切ない人間模様を描いている。テレビ番組の配信サービス「TVer」で最多再生回数を記録するなど、多くの注目を集めている。

「silent」を手話で表現すると、「雪」が「静か」と表す。このドラマには、“ろう者”が俳優として出演している。女優の川口春奈さんが撮影の合間に見ているのは、手話のテキスト。手話によるセリフを何度も練習する。

篠田吉央キャスター
篠田吉央キャスター
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篠田吉央キャスター:
こちらがドラマの撮影現場となったカフェです。多くのファンが訪れています。こちらがドラマで使用された席なんですが…ちなみにどれくらい前から予約されたんですか?

撮影現場のカフェに訪れたファン
撮影現場のカフェに訪れたファン

訪れた人:
3~4週間くらい前から予約していました

篠田吉央キャスター:
やっと来られた

2人の“ろう者”が出演 当事者が演じる大切さ

このドラマには、聴覚に障害がある2人のろう者が出演している。

那須映里さん:
川口春奈さんの場合は、初めて手話を学んだ雰囲気を出すのが上手い

“ろう者の友人役”で出演・那須映里さん
“ろう者の友人役”で出演・那須映里さん

こう語るのは、“ろう者の友人役”で出演する那須映里さん。家族全員がろう者のデフファミリーに生まれた。

那須映里さん:
ろう者が俳優として出るのは今までのドラマではあまりなかった。なぜ、ろう者が出ているのか。ろう者当事者が演じることの大切さが大事だと思う。こういった文化があるということを知ってほしい

手話教室の講師役で出演・江副悟史さん
手話教室の講師役で出演・江副悟史さん

手話教室の講師役でドラマに出演し、手話劇団の代表も務める江副悟史さんは、「聴覚に障害があっても演じられることを知ってほしい」と言う。

江副悟史さん:
(アメリカに)留学していた時に、“ろうの役者”に会った。その時に非常に話が面白くて、今まではお喋りの手話だったが、演じる手話の魅力、表現する魅力がわかった。私たちだけでなく、たくさん“ろうの俳優”がいる。ほとんど舞台俳優で活躍されている方だが、演じることができる“ろう者”がいることがもっと広まればいい

篠田吉央キャスター:
社会の中にバリアを感じますか?

江副悟史さん:
感じていないです。逆に、聞こえる人から見られる時、壁を作られていることが多い。カーテンのようにペラペラした壁だと思っている。向こうからも見える。こちらからは閉められているカーテンを開ければ、というタイプの江副であります

ろう者が出演することでドラマの撮影現場にも変化が現れた。

那須映里さん:
「用意スタート」というのではなく「54321」というように指で合図してくれる。終わりのタイミング。カットという手話もあるが遠くて見えないので、一緒に演じている(ろう者役の)夏帆さんや、(佐倉創役の)目黒蓮さんが、終わったタイミングでカットの合図をしてくれる。それが非常にありがたい

手話は、日本語の話し言葉とは「語順」や「文法」が違う、“ろう文化”の中で生まれた言語。しかし手話は、かつて「日本語の習得を妨げる」として、ろう学校では何十年にもわたり使用を禁止され、口の形から言葉を読み取り発声する「口話教育」の時代が長く続いた。

江副悟史さん:
私も“ろう学校”で「社会では口話が必要だ」と言われ育ってきた。社会に出てコンビニとか銀行とかいろんな所に行って、「聞こえません。よろしく」と言うと、すぐ“筆談用の紙”が出てくる。声を出してという人は1人もいない

那須映里さん:
就職活動の時に、まず「声出せる?声使う?声出してみて」と就職相談室の人に言われる。「使えません。筆談でお願いします」と言うと、落ちる。ほかの声を出している“ろう者”は就職に合格する。声が出せた方が社会で生きやすいという親切心から、みなさん言ってくれたのだと思うが、“ろう者”として生きるために頑張ろうというのは、結局のところ、社会参加で声が出せないと対等になれないことになる。声が必要という考え方は、まだまだ残っていると思う。ドラマを見てそういった考え方がなくなってくれるのを期待しています

手話に関心持つ人増加…ドラマ終了後も「盛り上げたい」

ドラマ「silent」の効果もあって、今、手話に関心を持つ人が増えている。ロケ地を訪れたファンから聞かれたのは、手話の豊かな表現に対する興味だった。

訪れたファン:
「好き」でも「ごめんなさい」でも、表情と手の動きで全部わかる。(手話を)習いたいなと思う

訪れたファン:
すごい感情が伝わってきます。手話がわからなくても表情で伝わってくる

音のない世界を描くこのドラマは、見る人にさまざまな気づきを与えてくれるはずだ。

那須映里さん:
今、サイレントをきっかけに、手話を学びたい人や、“ろう者”に興味を持っている人が非常に増えている。ドラマが終わってその波が終わってしまうのではなく、それをさらに盛り上げていくために企画を作ったり、“ろうの役者”が出るという流れを高めていきたいと思っている

江副悟史さん:
“ろう者”としてでなく、江副として見て欲しい。私も聞こえる人だからということではなく、相手を個人として見るので、お互い目を見てちゃんと話したい

お互いに理解することで社会のバリアが取り除かれることを期待する。

(岡山放送)