大型で強い台風2号がゆっくりと日本列島を北上する中、梅雨のような高い湿度で注意が必要なのが「熱中症」。

本格的な暑さを迎える前に我々が心掛けるべき予防対策について、埼玉慈恵病院の藤永剛副院長に聞いた。

“湿度”の高さで熱中症リスクアップ

――すでに熱中症患者はいる?

今の時期はまだ体が暑さに慣れていないので、雨の合間に急に天気が良くなり暑くなると熱中症の患者が増えます。

また、同じ気温でも、湿度が高い時と低い時では、救急車の搬送件数が全然違います。湿度が高いと、暑さを感じやすくなり不快感も増し、熱中症リスクが上がります。

埼玉慈恵病院 藤永剛副院長
埼玉慈恵病院 藤永剛副院長
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5月30日には、蒸し暑い職場で働いている60代の女性が、仕事中にめまいを起こし、短時間の間、意識を失い搬送されてきました。

血液検査の結果、強い脱水と軽度の腎障害を認めたため、点滴をして症状が回復するのを確認して帰宅してもらいましたが、点滴をしても症状が改善しない場合や、腎障害が重かったり、ほかの臓器の障害も発見された場合は、一泊入院とか経過観察入院などの対応が必要になります。

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――気温の急な上昇は要注意?

雨が続く中、急に晴れたり、温度や湿度が上がると注意が必要です。
本番はこれからで、ピーク時だと夜でも救急車6台で搬送されてくることもあります。

高齢者はエアコンをつけない方も多く、暑い日が続くと室内での熱中症も増えてきます。

汗をかきやすい体質と水分補給

汗が蒸発しにくく、体に熱がこもりやすくなることで発症する熱中症。

本格的な夏を迎える前に、軽い運動や半身浴などで“汗をかきやすい体質”にすることと、定期的な“水分補給”を習慣づけることが大切だと藤永副院長は指摘する。

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――早めにできる熱中症対策は?
熱中症対策には、「当日できる準備」と「長期的に行う準備」の2つがあります。

当日できる準備は、天気予報をチェックして気温と湿度に注意を払うことです。
朝晩は涼しくても日中は気温が上がる場合、脱ぎ着しやすい羽織りものを着るなど服装に工夫が必要です。

また、こまめな水分補給を習慣付けて、定期的に喉を潤すことが大事です。

そして、熱中症の軽いサインを知っておき、気分が悪くなったら涼しいところに移動することです。エアコンをつけたり、扇風機で風を回すことも必要です。

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一方、長期的に行う準備は、暑さに適応できる体作りです。

熱中症にならないためには、汗をかく必要があるため、汗をかきやすい体にすることが大事です。

冬の間は汗をかきにくい体になっているので、それを改善するために自発的に汗をかくことをしましょう。
例えば、少し運動をするとか、半身浴でいいのでお風呂に入るとか、サウナに行くとか、汗をかくトレーニングをすることが大切です。

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――こまめな水分補給のコツは?

熱中症予防のためには、一般的に、1日1.2リットル、1200㏄ぐらいの水分摂取が望ましいです。

朝起きた時にコップ1杯(200㏄)を飲んで、日中は1時間置きぐらいにのどが渇く前に、コップ半分(100㏄)を飲むのが理想です。

そしてお風呂に入る前後にコップ1杯ずつ飲んで、寝る前にもコップ1杯飲むことが良いとされています。

高齢者の方は特に、のどの渇きや暑さを感じ難いところがあるので、のどが渇いたなと思う頃にはすでに脱水が進行していることが多いです。

早めに時間を見ながらコップ半分ずつ(100㏄)水分を摂ることが大事です。