先日引退を発表した“かなだい”こと、フィギュアスケート・アイスダンスの村元哉中・高橋大輔。
3月に行われた世界選手権を会心の演技で終えた2人。演技後には観客の温かい声援と拍手に包まれ、高橋や村元も涙を浮かべていた。

このときすでに「引退」の気持ちは固まっていたという高橋。
5月2日の引退会見後、2人にこの3年間を振り返ってもらった。
ベストの演技は世界選手権のフリーダンス
――2人のベスト演技はありますか?
高橋:
ベスト演技は、世界選手権のフリーかな。僕も“最後”というのを頭では理解していたんですけど、めちゃくちゃ演技をすることに集中していて。これが人生で最後の世界選手権という思いもあったから絶対決めたいと。
最後のリフトまで気は抜けないんですけど、でも後半になってくると疲れてくるのが、(世界選手権では)それがあまりなくて。疲れてはいたんですけどね。
「練習してきたことができている」「これいける!いける!」みたいな感じがあって、途中からちょっと笑顔でした。でも最後のリフトの前だけ真剣でした。

終わった瞬間に3年間通してやっとできたっていう感情があったので、「ありがとう」みたい感じでしたね。
哉中ちゃんもほんとに大変だったと思います。理想があったと思うんですけど、なかなか自分が追いつけなかったところもあり、やっと自分が追いつけて、ちゃんとできたので、(世界選手権のフリーでは)いろいろな感情がありました。
村元:
「一秒一秒を大事に」。もう「その瞬間を忘れないでおこう」「大事に踏んでいこう」という思いで滑っていました。あまり“最後”というのは考えたくなくて。
フリーの演技がうまくまとまらなかったシーズンだったので、「ミスなく終えたい」という気持ちはすごく強くあって、最後のポーズをとった時に「できた!」っていう嬉しさと、その時の大ちゃんが見えてなかったんですけど、ぱっと後ろ見たときに、泣いていて本当にうれしそうな姿を見て私も涙しちゃって。頑張ってきてよかったな、やってきてよかったなと思った瞬間でした。
ケンカが互いに理解し合うきっかけに
――今だから言える、こんな困難が実はあったという出来事は?
高橋:
「牛乳飲め」って言われて僕がぶちギレたことですね。これはいろいろ流れがあるんですけど…。
村元:
先シーズンのワルシャワ杯(2021年11月18〜21日開催)がポーランドであって、帰ってきたときに(高橋の)咳がずっと続いていて。すごくいい結果だったんですけど連戦だったので、本当にお互い疲れていたんです。でもまずは大ちゃんの咳を治さないといけないと思って。
マリーナコーチから、「牛乳でいろいろ混ぜて作るといいから、これを作って大ちゃんに飲ませて」って言われたので、私は“早く体調がよくなって咳を治してあげたい”という思いで「牛乳を飲んだ方がいいよ」って何回も伝えたんです。
(コーチからも)言われたので、とりあえず「飲まないの?」と、ちょっとしつこく聞いてしまったところ、ぶちってキレて。携帯ぶん投げたよね。なんだっけ?「しつこい!」みたいな?まあ確かにしつこかったな、ごめんなさいって思いました。

高橋:
本当にみんな僕のこと思って言ってくれていたんですけど。
意味の分からないところでキレて。「牛乳」は禁止ワードです(笑)。
そのケンカがあってから、グッとお互いが何となく、より一層理解しあえた、というのはありましたね。
「2人でなにかプロジェクトができたら」
――これからどんな新しい2人を見せていきたいですか?
村元:
私はずっと言っている、タンゴをしたいです。

高橋:
あと2年くらいかけて作って、いつかどこかで披露できたらなと思いますけど、あれはスケーティング、アイスダンスレベルが上がらないとカッコいいのができないので。なのでまだまだ僕にはちょっと早い。時間をかけてどこかで、と思います。
――最後に2人の夢を聞かせてください
高橋:
できるうちはずっとパフォーマンスしていきたいし、エンターテインメントの世界にいろんな形で、どんな形でもいいので関わっていきたい。
自分が出て見せるのもあり、見てもらうのもあり、見てくれる人を育てるのもあり。最終的にずっと関わっていきたいです。それが夢かなと思っています。

村元:
一つ大きな夢を言うとしたら「2人で見たことないプロジェクトみたいなの」は勝手ながらすごくやりたいな、と大ちゃんにも伝えてあります。
2人でアイスダンスで築けたいろいろな経験や絆があるからこそ、何かできるかなとも思っています。これからアイデア交換しながら、何か1つプロジェクトができたらいいなって思います。

競技会からの「引退」を決めた2人だが、“かなだい”の進化はこれからもまだまだ続いていく。今後2人はアイスショーなどで活動を継続していくというが、これからどんな演技で魅せるのか期待したい。