まるで"泳ぐ目玉焼き"のような姿をしたクラゲがSNSで話題になっている。

クラゲファンタジーホールで、もう1種類のクラゲ、リゾストマ・パルモ と混泳展示中。 コティロリーザ・ツベルクラータ (Fried egg jelly)

目玉焼きに見えたらRT

こんなコメントとともに、"目玉焼きクラゲ"の動画をツイッターに投稿したのは、神奈川県にある新江ノ島水族館。ぷかぷかとゆっくり泳いでいるのだが、上から見ると傘部分の真ん中が黄身、その周囲が白身のようで、一見すると上手に焼けた目玉焼きだ。

(提供:新江ノ島水族館)
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動画を見たユーザーからも「目玉焼きにしか見えない…黄身にしかみえない…」「泳げ目玉焼きくん!」「お醤油とアツアツご飯を用意したくなります」「食べたら半熟なのかな…」といった驚きの反応が続々と寄せられた。

別の食べ物に見えた人も

一方で、「濃厚プリンにもみえる」「なんかスペシャルなプリンに見えました」というプリン派のコメントも。たしかに、“黄身”に見える部分はプリンのカラメルが乗った部分にも見えなくもない。

(提供:新江ノ島水族館)
(提供:新江ノ島水族館)

このようにさまざまなコメントが寄せられた動画付きツイートには約1万件のいいねがつき、話題となっている(5月25日現在)。

なお、“目玉焼きクラゲ”の名前は、コティロリーザ・ツベルクラータ。やはり目玉焼きのように見えることから、英語では「フライド・エッグ・ジェリー」とも呼ばれているそう。

(提供:新江ノ島水族館)
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本来は地中海に生息しているが、動画のクラゲは生まれも育ちも新江ノ島水族館。同館には69年におよぶクラゲ飼育研究の歴史があるのだが、そのノウハウをもってしても、目玉焼きクラゲをきれいな形に育てるのは難しいのだとか。

(提供:新江ノ島水族館)
(提供:新江ノ島水族館)

とても興味深い目玉焼きクラゲだが、実際はどんな生物なのだろうか。黄身に見える部分は一体何なのだろうか。生態や、鑑賞のポイントなどを新江ノ島水族館展示飼育部の飼育員に聞いた。

“黄身”部分は共生する“の色

――コティロリーザ・ツベルクラータはどんなクラゲなの?

コティロリーザ・ツベルクラータは、学名読みで紹介している名前です。和名では、「チチュウカイイボクラゲ」といいます。国内の水族館では、かわいらしい見た目から愛着も込めて「コティロリーザ」「コティロ」と呼ばれることのほうが多いかもしれません。地中海などに分布し、時折、大量発生して、ニュースになることがあります。

(提供:新江ノ島水族館)
(提供:新江ノ島水族館)

繁殖個体は、かわいらしい印象で、柔らかい目玉焼きのような傘をしていますが、野生個体はかなり印象が変わります。もっとしっかりとしたフォルムで色も濃く、傘もかなり硬いです。傘の下に見える口腕部分もかなりもしゃもしゃしています。見比べると、繁殖個体はひ弱に見えるかもしれません。


――“黄身”に見える部分は何?

傘の真ん中の色が濃くなっているのは、傘の中で共生している褐虫藻(かっちゅうそう)という藻の色です。タコクラゲやサカサクラゲなどが茶色をしているのも、この褐虫藻に由来しています。

褐虫藻が光合成を行うことにより、クラゲも栄養をもらうことができるのです。そのため、褐虫藻をもつクラゲは光を求めて水面にいることが多いです。コティロも水面でぷかぷか浮いている姿をよく見ます。


――コティロを繁殖させて飼育している水族館は珍しいの?

海外種であるため、ポリプ(※編集部注 成熟する前のクラゲの形態。イソギンチャクのような姿をしている)を持っていないと繁殖は難しいです。

当館は、旧江の島水族館時代にドイツのベルリン動物園水族館からポリプを譲り受けました。このように水族館同士で生物交換などを行います。クラゲは、輸送などのコストを考えるとポリプでの交換が主になります。当館以外にも、山形県の加茂水族館やその他いくつかの園館で展示は行っています。

また、当館では、旧江の島水族館時代に鳥羽水族館に次いで国内2番目に展示をしました。そのあとも何度か展示をし、ここ数年は、数カ月の長い期間で展示が出来ています。

(提供:新江ノ島水族館)
(提供:新江ノ島水族館)

“口腕付属器”もチャームポイント

――きれいな形に育てるのは難しいの?

目玉焼きに見えるように育てるのが難しいです。成長段階で、傘の厚みが薄いと、アクリル面に吸盤のように張り付いてしまい、うまく浮遊できなくなり、傘が反り返ってしまったり、削れてしまったりしてしまいます。黄身に見える部分がぷくっと盛り上がっていることがポイントになります。たくさん育てていても、バランスよく育つものはそれほど多くありません。

(提供:新江ノ島水族館)
(提供:新江ノ島水族館)

――別のクラゲ「リゾストマ・パルモ」と混泳させているとのことだが、うまくいっている?

クラゲでの複数種の混泳は、いろいろと気にしなければいけないポイントはありますが、現在も両種ともにきちんと成長が見られています。


――鑑賞するときに注目してほしいところは?

目玉焼きに見える傘に注目が集まりますが、傘の下の口腕部分にある口腕付属器の青紫色にも注目してもらいたいです。とてもきれいな色をしています。

(提供:新江ノ島水族館)
(提供:新江ノ島水族館)

このコティロをきっかけに他のクラゲにも興味をもってもらえたら嬉しいです。同じくFried egg jellyとも呼ばれるクラゲに「サムクラゲ」というクラゲもいます。分類もコティロとは異なりますが、英名ではそう呼ばれます。


――コティロとパルモの展示はいつまで見られるの?

生き物のことなのでいつまでとは言い切れませんが、出来る限り展示を続けていきます。

目玉焼きの“黄身”に見えるところには“藻”が入っており、しかも共生関係にあるということで、生命の神秘には驚かされる。一度この機会に本物を見に行ってみてはいかがだろうか。

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プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。