「都庁だけでなく、東京都をまるごとDX化する」。都庁の爆速DXをけん引してきた宮坂学副知事(元ヤフー社長)が、次に挑むのが東京都のまるごとDX化だ。宮坂氏に、いま話題のChat GPTから今年スタートする東京都DXの新組織まで話を聞いた。
生成系AIは検索、スマホ、SNSの次の大きな変化
「新技術は活字で理解せず、身体で体感することが大事ですね」
いま話題のChat GPTについて聞くと宮坂氏はこう答えた。
「Chat GPTをはじめとする生成系AIは、検索、スマートフォン、SNSに次ぐような大きな変化になるかもしれません。シンギュラリティかどうかは分かりませんが、我々は今特異な瞬間にいるのかもしれませんね」

Chat GPTへの対応が各自治体で議論されている。都庁ではどうするのか。
「都政で使うにはまずルールを作ることが大事です。個人情報保護など使用に関するガイドラインを作って、職員が安心して試せる環境を作らないといけません。まず今月中にデジタルサービス局内で試行活用できる環境をつくり、それを踏まえて業務活用や利用ルールなどの検討を深めていきます」(宮坂氏)
東京都まるごとDXの新組織がスタート
宮坂氏が副知事になって3年が過ぎ、都庁は爆速でDXしている。
「いろいろやった部分もあるんですけど、まだまだ足りない部分が大きくて。発射台が低かったので『やりましたね』と言ってもらえるのですが、都民からすると『相変わらず行政のサービスは使いづらい』と思われているのがたぶん現実なんですよね」

都庁では東京都全体のDXを推進するための新組織、「一般財団法人GovTech(ガブテック)東京」を9月にスタートする。先月宮坂氏はこの団体の設立時の理事に選任された。では区市町村のDXのための組織を、なぜ都庁からあえて外部に設立するのか。
技術者が働きやすい自由な人事制度に
その狙いを宮坂氏は「より技術者が開発しやすい環境にしたいから」と語る。
「当初は80人くらいの体制でスタートしますが、基本は新規採用です。地方公務員の組織にせず技術者が働きやすい自由な人事制度にします。民間のIT企業の水準に給与を合わせ、副業で参加できるように『週2日働きたい』という人も採用します。またテレワーク環境をつくって、日本全国から職員を応募する仕組みをつくります。都庁からの転籍もしてもらいます」

「GovTech東京」は、東京都のどこからDXを始めるのか。
「6つの機能がありますが(図表参照)、区市町村の共通プラットフォームを創ろうと思っています。そうするとデジタル教育が標準化するし人材のシェアリングもできるので、デジタル人材の育成や確保が容易になります。データ利活用についても区市町村でデータを出し合ってオープンデータを頑張ってつくろうと思っています」

東京都まるごとオープンデータを推進
デジタル庁は自治体に対して31項目の標準オープンデータセットを挙げている。
「公共施設や指定緊急避難場所、医療機関やAED設置箇所などベース・レジストリ(社会の基幹となるデータベース)です。こうしたデータの共通基盤を区市町村でつくり、行政手続き、例えば学童保育の申し込みを区市町村で標準化すれば、都民がデジタル化による豊かさを実感できると思います」
行政のオープンデータ化は宮坂氏が副知事に就任以来、一貫して唱えてきたことだ。
「これまで区市町村のデジタル化の取組を横展開する組織がありませんでしたが、GovTech東京が行司役となってグイグイ推進しようと思っています」

GovTech東京が区市町村に共通のプラットフォーム、オープンデータをつくる。東京都のまるごとDX化は爆速で始まりそうだ。
【執筆:フジテレビ 解説委員 鈴木款】