地価は13年連続上昇も…上昇幅は鈍化 背景に「建築費高騰」

2025年の地価(基準日:7月1日)が発表され、宮城県内の地価は住宅地・商業地ともに13年連続の上昇となった。しかしその一方で、上昇幅は4年ぶりに縮小。土地の価格にブレーキがかかっている。
この背景について、不動産鑑定士は「土地も建物も価格は上がっているが、建築費の高騰が特に著しく、結果として土地の上昇が抑制されている」と分析。上昇幅は全国的には拡大傾向にある中、宮城では鈍化傾向が見られるという。
仙台圏とその他地域で進む「地価二極化」
県内の地価は仙台市(+6.3%)とその周辺市町(+5.1%)が全体の上昇を牽引。一方で、その他の市町は-1.3%と下落しており、都市部と地方部の格差が拡大している。

不動産鑑定士の西山敦氏は「これは札仙広福(札幌・仙台・広島・福岡)の地方都市で見られる傾向で、典型的な都市一極集中といえる」と語る。
県全体の平均価格は1㎡あたり12万5,000円で、前年比+1.8%。13年連続の上昇ではあるものの、上昇幅の縮小が「転換期」の兆しとも映る。
上昇目立つ「仙台駅東口」再開発と割安感が投資を呼ぶ

商業地で最も上昇率が高かったのは、仙台駅東口の榴岡エリア。1丁目(+14.3%)、3丁目(+14.0%)、4丁目(+12.7%)がいずれも上位にランクインした。西山氏は「西口と比べてまだ地価に割安感があり、開発意欲が相変わらず強い。分譲マンションの建設やオフィスビル、ホテルの進出といった投資対象エリアとして注目されている」と述べる。
同エリアではヨドバシカメラの新ビルなどが賃料相場を押し上げており、その影響が周辺のビルにも波及している。
また、中心部の青葉区中央2丁目(446万円/㎡)は43年連続で県内最高価格地点を維持したが、上昇率は+3.2%と東口の勢いに後れを取っている。
住宅地は「北」へシフト 利府町と大和町の台頭

住宅地の平均変動率は+0.9%で13年連続上昇。上昇率トップは利府町神谷沢(+11.4%)、次いで大和町吉岡東3丁目(+10.6%)だった。
西山氏はこの流れについて「名取市はここ数年で価格が高騰し、仙台とほぼ変わらない水準になった。今は富谷を経て、大和町など割安感のある地域に需要が流れている」と指摘。県道や高速道路の整備により、仙台圏の北側が注目されるようになっている。
また、大和町には若い子育て世代による戸建て需要が多く、価格帯も手頃であることから人気が高まっている。
青葉区上杉で「高止まり」の兆しも イオン開業控えた影響

住宅地で最も高額だったのは、仙台市青葉区上杉4丁目(46万3,000円/㎡)。10月には大型商業施設「イオンモール仙台上杉」が開業予定であり、利便性の向上が地価を押し上げた。
不動産鑑定士 西山敦氏:
上杉は地下鉄や病院、学校へのアクセスもよく、もともと富裕層に好まれるエリア。そこに新たな利便施設が加わったことで、ブランド価値が一段と高まっている
ただし、価格は上限に近づいており、やや需要の弱さも感じられるとの指摘もあり、「高止まり」の可能性も示唆されている。
国分町・アーケード街は「厳しい状況」

仙台市中心部では明暗が分かれた。ホテル・オフィス需要は堅調だが、国分町やアーケード街では地価の伸び悩みが顕著。西山氏は「コロナ禍を経て人出は回復したが、電気代や水道代、エレベーターの管理費などが上がり、収益を圧迫している」と現状を語る。
「賃料を上げたいが借り手がついてこられない」「投資回収が見込みづらい」といった構造的な問題が残っており、再開発が進みにくいエリアでは地価の足踏みが続いている。
地方部の地価下落 人口減と経済停滞のダブルパンチ仙台圏を除く地域の住宅地では、石巻市(-1.5%)、気仙沼市(-3.6%)、大崎市(-1.4%)などで下落傾向が続く。背景には人口流出・高齢化・経済活動の低迷がある。
不動産鑑定士 西山敦氏:
再開発が進む都市部とは対照的に、地方では物価高や空き家増加も重なり、市場自体が縮小している
地価の下落は経済活動の縮小と表裏一体で、「まちの活力」を測るバロメーターにもなっている。
今後の地価動向は?「住宅地は鈍化、商業地は見極めの時期」
地価の今後について、西山氏は「住宅地は建築費の高騰や金利の上昇から、今後さらに上昇幅が鈍化する可能性がある」と指摘。一方、商業地はプロジェクト次第で動向が分かれるとし、「オフィスやホテル系は需要が異なり、堅調さを維持する可能性もある」と見通す。
工業地に関しては「物流やEC関連の需要で一定の強さを保っている」と評価した。
拡大と停滞が交錯する宮城のいま

宮城県の地価は13年連続で上昇したものの、建築費の高騰によりその勢いには陰りも見え始めている。仙台駅東口や利府町、大和町など、交通利便性や開発余地に恵まれた地域では上昇が目立つ一方、青葉区上杉のように価格が高止まりしつつある地点も出てきた。
また、国分町やアーケード街、さらには沿岸部の地方都市では鈍化・下落傾向が続き、地域間の格差が一層顕在化している。地価の変動は単なる数字の上下にとどまらず、その街がどのような未来を描けるのかを映し出している。これからのまちづくりには、そうした変化を見つめる冷静なまなざしが求められている。
仙台放送