4月から働き始めているのは新入社員ばかりではない。転職や中途入社などにより“新しい職場”で働き始めた人もいるだろう。社会人を経験している分、初めてのことばかりではないと思うが、悩ましいのが、人間関係がゼロから始まるところではないだろうか。

新しい上司や同僚と関係性を築くことになるが、環境が変わるだけでも緊張するものだし、周囲が年上・年下ばかりといったことも考えられる。

新入社員とは違い、最初からある程度のポストでスタートする場合、職場で浮いて、仕事で力を発揮できず「もう辞めたい」と思ってしまう可能性もあるだろう。そうならないため、できることはあるのか。

冬木しょうこさん(提供:株式会社アイソルート)
冬木しょうこさん(提供:株式会社アイソルート)
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今回は実践型ビジネススキルスクール「コミュトレ」(運営:株式会社アイソルート)で3000人以上の相談に応じてきた、冬木しょうこさんに取材。職場での注意点、なじむためのコツを聞いた。

新しい職場になじみにくい人に3つの共通点

――相談者から、新しい職場をめぐっての人間関係の苦労は聞かれている?

転職して、前職と環境が急激に変わったことでの苦労が多いですね。パターンとして目立つのは、周囲と年齢が離れていて、話題や価値観が合わない。普段の会話でも、話の説得力が求められるようになった。経歴書に書いた印象を崩さないように肩肘を張ってしまうといったもので、コミュニケーションに苦労している方が多い印象です。

(編集部作成)
(編集部作成)

――新しい職場になじみにくい人に共通点はある?

3つあります。一つ目は「なじんでいないことを過度にストレスに感じている」。この人はこんな性格で自分が言ったらこう思われる…などと余計な心配をしている。二つ目は「無理をして背伸びをしている」。本当は静かな性格なのに、なじもうと元気に振る舞っていて、素に戻った時とのギャップが出ている。三つ目は「自己開示をしない」。雑談で何か聞かれても「いや、ちょっと…」などと明かさない。

こうした要素があると、周囲も気を使ってしまうものです。


――それではどうすればいい?なじむためのポイントを教えて。

職場の人間関係は「人としての信頼関係」(人として信頼できるか)、「専門家としての信頼関係」(仕事相手として信頼できるか)からできていて、この2つを高めることがポイントと考えます。

人としての信頼関係を高めるためにお勧めしたいのは、短時間の会話を増やすこと。例えば、あいさつにちょっとした雑談を入れてはいかがでしょうか。エレベーターで一緒になった時に「お昼はラーメンですか?いいですね!」これくらいで十分です。こうしたことを繰り返すと互いの警戒心が薄れます。余裕があれば、休日の過ごし方といった、プライベートを自己開示してもいいでしょう。

会議やプレゼンでの印象も大切になる(画像はイメージ)
会議やプレゼンでの印象も大切になる(画像はイメージ)

――専門家としての信頼関係を高めるためには?

仕事の成果やスキルの高さが影響しますが、同じくらい大切なのが、会議やプレゼンでの発言。話が分かりやすい、納得感があると評価されやすいです。話し方はいくつかフレームワークがあって、例えば、PREP法(結論→理由→具体例→まとめの流れで話す)では簡潔に伝えることができます。こうした話し方のフレームワークは、ビジネスシーンを想定した実践練習を重ねると身についていきます。

最初は人としての信頼関係を、慣れたら専門家としての信頼関係も築けると良いですね。

自分が知らないことでも“シャッター”を降ろしてはいけない

――新しい職場でお勧めしないこと、避けたほうがいいことは?

相手によって態度を変えること。年下と分かった瞬間にタメ口になる、性別や立場で接し方を変えるのはよくありません。一律に丁寧語で接するべきでしょう。また、会話で自分が知らないことに“シャッター”を降ろすのは避けてほしいですね。無理に会話に入らなくていいのですが、興味を持っておくと次に会った時の話題にもできます。人間関係のためにというよりは、自分自身のために、物事への興味関心を忘れないでほしいですね。

(編集部作成)
(編集部作成)

――新しい職場で1カ月、2カ月くらいに意識してほしいことは?

心理学では、人間は最初に感じた印象を引きずる習性があるといいます。そこを考えると、最初の1カ月は「誠実な人かも、信頼できそうかも」と思ってもらえるだけでも十分です。普段の礼節をきちんとする、ハキハキと話すことを意識してはいかがでしょうか。

2カ月目以降は、周囲の気になることをメモしてはいかがでしょう。人間は自分の話や情報を覚えている相手には「覚えてくれていたんだ」と感じるものです。単語程度でもメモしておくと、会話が膨らむと思います。余裕がでてきたら、会議やプレゼンでの話し方を磨くのがおすすめです。

基本の報告、連絡、相談も大切(画像はイメージ)
基本の報告、連絡、相談も大切(画像はイメージ)

――周囲が年下・年上ばかりの場合、接し方のポイントは?

基本は報告、連絡、相談をきっちりすることです。例えば「仕事が終わりました」といった一言でも、あるとないとでは印象が変わります。また、過剰な敬語は相手に気を使わせてしまいます。「お願いします」「よろしいですか」といった丁寧語で十分だと思います。

自分が「できること・どうしようもないこと」を分けてみよう

――職場に来てある程度たってから、人間関係を変えることはできる?

できつつある人間関係は、簡単に変えられるわけではありませんが、好転させる確率は高められるとは思います。自分ができること、自分ではどうしようもないことを分けてはいかがでしょうか。例えば、過去の出来事や他人の気持ちは変えられませんが、自分の行動や考え方は変えられます。周囲の評価を気にしすぎないで、(できることである)真摯に仕事に取り組んだり、雑談を重ねれば「最近違うな」と受け止められると思います。


――新しい職場に来た人がなじめるよう、周囲ができることは?

直接の上下関係にない人ほど、話しかけてあげてほしいですね。仕事上で接しないと「関係ない」と思いがちですが、相手は「冷たいな」と感じるものです。過剰に気を使う必要がありませんが、フラットな感覚で短い会話でもすると、心理的な距離は縮まると思います。


――職場になじめないと思う人にアドバイスを。

職場で嫌われたり、孤立するのはよくないですが、なじむ必要性はケースバイケースだと思います。例えば、愚痴などを言うグループには、無理に迎合しなくてもいいと思います。自然になじみたいと思える職場は、仕事上の信頼関係を大切にする方が多いと思いますので、まずは日々の仕事から、頑張ってみてほしいですね。



背伸びをせず、人として、仕事相手としての信頼を高めていくことが重要なようだ。うまくいかないと感じている人は、冬木さんのアドバイスを参考に行動してみてはいかがだろうか。

(冬木さんの所属・肩書は記事掲載時のもの)

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。