あなたの職場に“嫌な人”はいますか?

離婚や相続などに加えて、近年は「モラハラ」対策にも力を入れている弁護士・後藤千絵さんは「身に覚えのない難癖をつけられた」「上司がネチネチと嫌味を言ってくる」など、最近職場の嫌な人に対する悩みが増えていると言う。

上司や先輩、同僚など立場も年齢も異なる人の攻撃から身を守る方法を伝授する『職場の嫌な人から自分を守る言葉の護身術』(三笠書房)から一部抜粋・再編集して紹介する。

理不尽な攻撃を我慢して耐える、ではない方法とはどんなものなのか。

「あの失礼な言い方は許せない!」「デリカシーのなさには辟易する!」
 
腹の底ではそう思いながら、何も言い返せずに、悔しい思いをしている。

私自身、かつては職場の嫌な人に悩み、悔しい思いをした経験があるため、その気持ちよくわかります。

だからこそ、あえて「我慢するのは、金輪際やめましょう。嫌な人の理不尽な攻撃を黙って耐えるメリットなど、何1つない」と助言します。

あなたの“嫌な人”はどのタイプ?

私の経験上、職場の嫌な人は、おおむね7つのタイプに分類することができます。

(1)「自己正当化」タイプ
(2)「自己中」タイプ
(3)「かまってちゃん」タイプ
(4)「八つ当たり」タイプ
(5)「完璧主義者」タイプ
(6)「嫉妬メラメラ」タイプ
(7)「サディスト」タイプ

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これらの特徴を知ることが、職場の嫌な人から自分を守る基本です。彼、彼女らの特徴がわかれば、対策を立てるのは簡単。もう恐れる必要はありません。

「職場の嫌な人」を嫌ったり煙たく思うだけでなく、「どのタイプに当てはまるか?」を考えてみてください。 

その上で、周りにいる職場の嫌な人に、絶対に負けない心のつくり方をみていきましょう。

「言葉の護身術」を使いこなす上で基礎となる心構えが、「心の護身術」です。

心に余裕がなければ、相手の攻撃に即座に反応することはできません。気持ちが負けたままの状態では、相手の攻撃をかわすことも、受け流すことも、反撃することもできないのです。

10個ある「心の護身術」の中で、「心のバリア」をつくる、職場の人とは「適度な距離」をとる、自分で「自分をほめる」習慣の3つを取り上げます。

心のバリアで“言動に左右されない”自分に

嫌な人の攻撃から自分を守ることができる「心のバリア」。自分の周りに見えない壁を築いて、「他人の言動に左右されない自分」をつくるのです。

そのバリアは人間関係をシャットアウトするものではありません。

仕事を円滑に進めるためには、コミュニケーションが必要不可欠で、協力してくれる人が多ければ多いほどやりやすくなります。

職場で「とっつきにくい人」「人との関わりを拒絶している人」などと思われてしまったら、仕事に悪影響が出ないともかぎりません。

私のいう「心のバリア」はそんな強固なものではなく、もう少し柔軟でやさしいもの。

まず「自分は他人の言動には左右されない」と決め、「見えないバリアが体全体を覆い守ってくれている」「バリアの中にいたら安全だ」とイメージします。

毎朝、これをイメージしながら「自分は他人の言動には左右されない!」と宣言するとなおいいでしょう。

その後は、いつもどおり朗らかに人と接すれば良いのです。

他人を一切排除するのではなく、他人が何を言おうと気にしない、期待もしない。そうすれば「何があっても傷つかない心」をつくることができます。

嫌な人の言動に、ビクビクする必要もありません。

もちろん、プライベートでは「心のバリア」を解除してかまいません。

弁護士をはじめ法曹関係者に対し、冷たいという印象を持つ人は多いと思います。私も弁護士になる前はそうでした。

ただ、実際話をしてみると温和でやさしい性格の人が多く、当初は意外に感じました。

彼らは、他人に感情移入しすぎて、公平な判断ができなくなることを避けるため、つねに冷静さを保つ必要があるのです。職業柄、他人からのマイナス感情を直に向けられることが多いため、心をガードする必要もあります。

他人に左右されず、客観的かつ冷静に判断することが求められるからこそ、あえて「心のバリア」をつくっていて、私も日々実践しています。

ぜひ、心のバリアをつくって、他人の言動に左右されない自分をつくりましょう。

人間関係は「適度な距離」が大事

職場には、必要以上にプライベートに踏み込んでくる人や、夫の地位や年収、子どもが通っている学校、あなたの学歴や職歴などを知りたがる人たちがいます。

そこで無邪気に個人情報を教えてしまうと、マウントを取ってきたり、逆に嫉妬やねたみの対象となったり、ろくなことはありません。

職場で出会った人は基本的にすべて「仕事先の人」と肝に銘じましょう。適度な距離を保って、礼儀正しく接することをおすすめします。

実際、職場で出会った人に気を許し、個人情報を話しすぎてしまったことで、思わぬトラブルを招いてしまうケースが少なくありません。

たとえば、子どもが小学校受験で有名校に受かったことを漏らしたことで、同僚から反感を買い、地域の掲示板に個人情報を書き込まれてしまった、などといった話も。

もちろん、職場で一生の「心の友」に出会うこともあるでしょう。

ただ、職場でたまたま一緒になった人とすぐに距離を詰めて、心を開いてしまうのは少し軽はずみ。本人だけでなく、家族も危険にさらす可能性があるからです。

まずは「適度な距離」を保ちながら、相手の人となりを慎重に見極めることが大切。

中でも「嫉妬」は職場での人間関係を築く上で、特に気をつけてほしいです。

本人の知らないうちに嫉妬されていたということはよくあります。

自分では意図していなくても、一度相手に嫉妬されてしまうと、思いがけず足を引っ張られることも。身近な存在であればあるほど、嫉妬されやすくなるのです。

一方で、個人情報を話しすぎてしまった結果、相手から上から目線で話をされるなど、不愉快な思いをすることもよくあります。

マウント合戦にならないためにも、職場で出会った人はすべて「仕事先の人」と割り切って、適切な距離をキープしたほうが無難です。

一度距離を縮めてしまうと、後で適度な距離を保つのは圧倒的に難しくなります。相手は「急に冷たくなった」などと感じ、いらぬ恨みを買うことにもなりかねません。

最初から適切な距離をキープするのは、相手につけいる隙を与えないという意味でも重要だと言えます。

自分を「ほめて」気持ちを上げる

そして、自分で自分をほめる習慣を身につけてみましょう。

ほめることで自己肯定感が上がり、エネルギーが充足されます。ほめればほめるほど、自分をほめてあげたくなるような状況も整っていきます。

ただ「ほめる」ではなく、「ほめまくる」と一層効果的です。

コツは、日常の小さなことから1つひとつほめていくこと。ほんのささいなことでも、ほめていく。

日常の小さなことからほめていこう(画像:イメージ)
日常の小さなことからほめていこう(画像:イメージ)

「朝、気持ちよく起きられた私ってすごい!」
「出勤前にシーツを洗濯している私って素晴らしい!」
「こんなにおいしいコーヒーが飲める私ってラッキー!」

私は20年ほど前から「私はすごい!」「私はラッキー!」などと根拠なく「自分をほめまくる」ことを続けていて、今では口癖のようになっています。

職場で嫌がらせや嫌味を言われた時、うまく言い返すのはハードルが高いと感じる人は多いでしょう。

本人はまったく悪くないのに、職場で嫌がらせを受けることで「うまくやれていない自分はダメな人間だ」とマイナスの感情に支配されてしまい、自信を喪失したりします。

もちろん、職場での嫌がらせや嫌味に真っ向から対立する必要はありません。

ただ「泣き寝入りはしない」という強い意志は大切。たとえば、「私はどんな状況でも耐えられる人間だ」と思うと、自己肯定感は自然と上がります。

マイナスの感情は自己肯定感を低くするので、せめて気持ちだけでも上げておくようにすることが大切なのです。

心の護身術を身につけたら、次は言葉の護身術です。カギはムダに反応しない、争わない。職場の人間関係が好転すれば、悩みの大半は解決したも同然です。仕事も人生もおおいに切り拓けるでしょう。

『職場の嫌な人から自分を守る言葉の護身術』(三笠書房)
『職場の嫌な人から自分を守る言葉の護身術』(三笠書房)

イラスト=さいとうひさし

後藤千絵
後藤千絵

京都生まれ。大阪大学文学部卒業後、大手損害保険会社に入社するも、5年で退職。大手予備校での講師職を経て、30歳を過ぎてから法律の道に進むことを決意。派遣社員やアルバイトなどさまざまな職業に就きながら勉強を続け、2008年に弁護士になる。荒木法律事務所を経て、2017年にスタッフ全員が女性であるフェリーチェ法律事務所設立。離婚・DV・慰謝料・財産分与・親権・養育費・面会交流・相続問題など、家族の事案をもっとも得意とする。近年は「モラハラ」対策にも力を入れている。