月間特集は「“円滑”コミュニケーション~上司と部下~」。
職場で部下たちが雑談している。こんな場面に遭遇したことはないだろうか。

上司の人も会話に加わってざっくばらんなコミュニケーションをとるチャンスだが、自分が入ることで場の空気を悪くしないかといったことも気になるはず。それに雑談といっても、どんなことを話せばいいのだろう。

あれこれ考えすぎず、「うざい」と思われないように会話に入るにはどうしたらいいのか。そもそも部下たちの雑談には入ってもいいのだろうか。

職場でこんな場面に遭遇したことはないか
職場でこんな場面に遭遇したことはないか
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今回は『部下 後輩 年下との話し方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など、コミュニケーションに関する著書を出版している、作家・心理カウンセラーの五百田達成さんにポイントを聞いた。

雑談は特殊な会話と認識しておくべき

――部下が雑談中、上司は会話に入ってもいい?

基本は参加していいと思います。上司の近くで部下の会話が弾んでいるとしましょう。そうすると、部下は「○○さん(上司)いるな」なんて、心で気を使っていることも多いです。上司が話しかけることで、場が楽になることもあります。

ただ、少し離れたところ(視界に入らないくらい)では別です。話しかけることで「俺を仲間に入れないのか」という印象も与えます。上司の存在を意識していそうなら、話しかけてもいい。そうでないなら、そっとしておいてはいかがでしょう。

話しかけてもいい状況、そっとしておくべき状況
話しかけてもいい状況、そっとしておくべき状況

――会話に入る上ではどんなことが大切になる?

人々の話し方は大きく3つに分かれると考えます。まずはビジネスコミュニケーション。業務連絡やプレゼンで意見を伝えるような、きちんとした話し方。次におしゃべり。友達とだべるような話し方。このどちらにも属さないのが雑談です。微妙な間柄の人がそれとなく話して心理的距離を縮めるもので、これができるかがポイントだと思います。
 

――雑談はどんなもの?お勧めの入り方はある?

目線を対等にして、そこはかとない会話をするものです。うまいこと話すのではなく、コミュニケーションをちょっとだけ円滑にするものを想像してください。個人的なお勧めは相手を先生、自分を生徒だと思い、物事を教えてもらうことです。

私の実体験ですが、小学生の子どもがいる友人の家に遊びに行ったことがあります。子どもからしたら“知らないおじさん”が来たわけで、心理的距離を縮めるのは難しいですよね。

話すことがウィンウィンであることが大切(画像はイメージ)
話すことがウィンウィンであることが大切(画像はイメージ)

ただ、彼がポケモンで遊ぶのを見て、私が「どれが強いの?」などと聞いたところ、彼は喜んで話してくれました。私は話せた、彼は自分の知識を披露できた。雑談になっていました。ここで大切なのは会話のラリーが続いたこと、話すことがウィンウィンだったことです。

知らないことを部下に教えてもらおう

――実際の職場ではどう活用できそう?

職場に置き換えると、まずは部下たちが話題としていることを聞いてみましょう。自分の知らないことが出てくると思うので「僕は分からないけど、どんな感じなの?」などと教えてもらう。知れたら「そうなんだ。勉強になったよ、ありがとう」などと感謝すると簡単な雑談になります。相手も嫌な気分にはならないはずです。

一方的な自分語りやアドバイスはNG(画像はイメージ)
一方的な自分語りやアドバイスはNG(画像はイメージ)

――雑談をする上でのポイントはある?

上記のような話題に自分の経験談や感情を交えると、心理的距離もぐっと近づきます。ただ、一方的な自分語り、アドバイス、相手の否定はしないでください。必ず聞き手にもなって「あー!そうなんだ!」などと、大きなリアクションをして、会話を楽しんでほしいです。
 

――上司が雑談でしてしまいがちな失敗はある?

上司・部下の関係にとらわれることです。懐が広くなければ、良いことを言わなくてはと思うと上から目線の発言になりがちです。雑談中に会話が途切れると焦るかもしれませんが、上司だからといって場を回す必要はないので、落ち着いてほしいです。

雑談のつもりで堅苦しい話をしたり、プライベートに踏み込んでいることもあります。フラットな目線や態度で接するように注意してほしいですね。

良きタイミングで切り上げよう(画像はイメージ)
良きタイミングで切り上げよう(画像はイメージ)

――雑談から離れるタイミングはどうすればいい?

雑談は程よいところで切り上げるのが大切ですが、部下からは言い出しにくいので、上司から離れるべきだと思います。時間や会話の往復を参考に、自分の中で終わりを決めておき、それに達したら「ありがとう」などと伝えて離れていいと思います。

「おじさん・おばさんだから」はNG

――雑談で上司に避けてほしい話題や言葉は?

「おじさんだから、おばさんだから」という自虐ですね。部下にとっては興味がないことですし「そんなことないですよ」とフォローしなければなりません。上司は自己防衛で言ってしまうのでしょうが、年齢や性別でギャップを与える発言はぐっと我慢してほしいです。
 

――今の時代の上司に伝えたいことはある?

今の上司は「若い人の会話に自分が入っても…」などと、繊細な方が目立ちますが、若い世代はコミュニケーション能力に長けていて、話しかけると受け入れてくれることも多いです。仲良くなりたいなら、力みや遠慮を持たずに話しかけてもいいと思います。フラットなビジネスパートナーとして考えてはいかがでしょうか。

 

雑談の場では、上司だからといって頑張ったり、場を回す必要はないようだ。教えてもらう姿勢や聞き手に回ることを意識すると、自然とコミュニケーションもうまくできるかもしれない。

(イラスト:さいとうひさし)

『部下 後輩 年下との話し方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
『部下 後輩 年下との話し方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。