2022年6月、金沢市内の交差点で自転車に乗った男性が、赤信号を無視して突っ込んできた車にはねられ死亡した事件。助手席で信号を無視するよう指示したとして危険運転の疑いで逮捕された男らの裁判員裁判が2023年5月から始まった。裁判を前に亡くなった男性の遺族が寄せた手記。そこには、1年近くたっても癒えない心の傷があった。

「夢であって」亡き男性の妻による直筆の手紙

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遺族の手記:
毎朝、目覚める度に夢であってと、伸ばす指の先に夫のぬくもりはなく、私のつらい一日が始まる。

直筆の手紙で1つ1つの言葉に複雑な思いをにじませるのは、車にはねられ死亡した西川俊宏さんの妻だ。2022年6月、横断歩道を自転車で渡ろうとした西川さんは、赤信号を無視してきた車にはねられ死亡した。

車を運転していた長谷川玲子被告(47)。そして助手席に乗り「止まらんでいいから早く行け」と指示したとされる寺崎太尊被告(31)が危険運転致死の罪で起訴された。

事件が起きた「土曜日の朝」は西川さんの妻にとって恐怖の対象へと変わった。

手記:
恐怖の土曜日は一週間に一度必ずやってきます。朝7時を過ぎると頭が締め付けられるような恐怖におそわれます。

花火を見たことがない孫へ 西川さんが贈った思い出のプレゼント

暖かな光を灯す竹灯籠。西川さんが当時3歳の孫に送った手作りのプレゼントだ。コロナ禍で本物の花火を見たことがない孫に見せてあげたいと作ったと言う。事件によって奪われたのは命だけではない。西川さんから家族への無償の愛情、この先も続くはずだった家族の時間、全てが奪われた。

裁判員裁判を控えた妻「今までとは違う苦しみを経験することになる」

裁判について西川さんの妻は次のように綴っている。

手記:
私たち家族にとって、今までとは又違う苦しみを経験する事になるのでしょうね。どのような結果になっても夫は、もう帰ってきません。どれだけかけがえのない存在であったのかを思い知ることとなった一年でした。

あの朝からまもなく一年。誰しもが平等に迎えるはずの朝を西川さんは迎えられない。寺崎被告は逮捕当時「寝ていたので指示はしていない」と否認していて、裁判では危険運転が成立するかどうかが争点となる。西川さんの妻が知りたいのは「あの朝」の真実だ。

(石川テレビ)

石川テレビ
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