鳥インフルエンザなどの影響で、依然として卵の値上がりや供給不足が続いている。この厳しい状況を乗り切ろうと、様々な試行錯誤を続けている九州の駅弁業界を取材した。

「卵の供給不足」で駅弁業界がピンチ

小川ひとみリポーター:
名物の「かしわめし」です。おいしいです。しかし根強い人気のこのお弁当が、いまピンチに陥っています

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北九州を代表する駅弁として100年以上に渡って親しまれているJR折尾駅の「かしわめし」。鶏のスープの炊き込みご飯に乗った甘辛いかしわとのり、そして黄色い「錦糸卵」が華を添える。しかし名物駅弁の彩りにも欠かせないこの錦糸卵が、いま深刻な事態に直面しているのだ。

東筑軒 総務部・佐竹良太さん:
メーカーからの「卵の供給が難しい」ということで、前年に比べて錦糸卵の入荷数が3割ほど減っています

「JA全農たまご」のまとめによると、2023年3月時点の福岡地区の卵の平均卸売価格は1kgあたり345円と、前の年の2倍近くに上がっている。高値は当面続くと見られるため、東筑軒では苦渋の決断を強いられることになった。卵不足で入荷が減った錦糸卵を少しでも節約できるよう、これまでたっぷり山盛りだった盛り付けを5グラムほど減らしたのだ。

東筑軒 総務部・佐竹良太さん:
3色あっての「かしわめし」だと思いますので、錦糸卵が減るというのは、こちらとしても大変心苦しい部分はあります。錦糸卵が減る代わりに、かしわ肉だったりのりだったりを少し多めにして、お客さんにはなるべく満足感をそのまま残せるように努力しています

来店客:
卵が減っても、味はいいから大丈夫です

来店客:
仕方がないよね。錦糸卵が減っても。でも、やっぱり買うでしょうね。のりとかかしわとかは入ってるから

企業努力を続ける老舗の東筑軒だが、鳥インフルエンザの影響は、今後「かしわめし」の命といえる鶏肉にも及ぶことが懸念されている。

東筑軒 総務部・佐竹良太さん:
鶏肉も現在、国産を使わせていただいているんですけど、鳥インフルエンザの影響で仕入れが厳しくなってきているので、場合によっては今後、考えていかないといけないのかなと思います

“創業以来初めて”の試みも

一方、こちらも「かしわめし」が名物の佐賀・鳥栖市の老舗「中央軒」。1913年(大正2年)に販売が始まったJR鳥栖駅の「かしわめし」は、地名の由来と言われるかしわに有明産の刻みのり、そして「錦糸卵」が変わらないスタイルなのだが、卵不足の影響はやはり深刻だ。

中央軒・児玉隆二社長:
「かしわめし」に使う錦糸卵ですが「使用量を前年の3割くらい減らしてください」と仕入れ先から要請がきてます

卵不足解消のめども立たない中、中央軒は名物の「かしわめし」を守る苦肉の策として「新商品」を開発した。

坂本奈都美リポーター:
お弁当のふたを開けると…。あっ、錦糸卵の代わりに何と「コーン」が入っています

4月8日から販売を始めた新商品、その名もズバリ「錦糸卵が無くなった場合のかしわめし」。本来であれば錦糸卵があるところに、同じ黄色のコーンがたっぷり盛り付けられている。伝統の「かしわめし」のレシピを変更したのは、創業以来初めてのこととなる。

中央軒・児玉隆二社長:
たまたま居酒屋でバターコーンを食べたあと、新商品をちょっと考えているときに思い出して「コーンっておいしいな、色も黄色だな」と思って

坂本奈都美リポーター:
コーンのプチプチとした食感がいいですね。甘みもあって、かしわご飯とよく合います。とてもおいしいです

中央軒の「錦糸卵が無くなった場合のかしわめし」は、鳥栖市の本社やJR鳥栖駅などで1日約50食が販売されている。また、従来の「かしわめし」も、いまのところ通常通り販売されている。

来店客:
卵、いま高いから、いろんなとこ研究して、代わりになるもの探されているんだなと。おもしろいですよね

中央軒・児玉隆二社長:
みんなが卵に困っている状況なので。ここでへこんでも仕方が無いことなので、前向きに明るくいこうかなと

卵不足の影響は全国各地の駅弁にも及んでいて、「帝国データバンク」が上場外食大手企業100社のメニューを調査した結果、卵メニューの提供を休止したり、休止を表明したりしているのは28社に上っている(※4月6日発表)。

世界的な鳥インフルエンザの流行で長期化の様相を見せている卵不足。駅弁業界はさまざまな工夫と努力で難局を乗り切ろうとしている。

(テレビ西日本)

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