愛媛県立とべ動物園は、2023年4月に35周年を迎えた。道後動物園からの引っ越しに始まり、来園者数減少の危機を乗り越え、たくさんの新しい命が誕生してきた。新しい園長とともに、動物園のこれまでの歩みを振り返る。

「ボートから池に…」動物たちの大移動

35年の歴史の中での印象的な出来事を4月に就任したばかりの宮内敬介園長が教えてくれた。宮内園長は、とべ動物園の一期生で、これまでエサの管理や鳥類の飼育を担当してきた。

愛媛県立とべ動物園・宮内敬介園長
愛媛県立とべ動物園・宮内敬介園長
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愛媛県立とべ動物園・宮内敬介園長:
私自体、開園してから勤務しておりましたけど、あっというの間の35年間でした

鈴木瑠梨アナウンサー:
35年間で印象的だった出来事を教えてください

愛媛県立とべ動物園・宮内敬介園長:
まず、とべ動物園の前身、道後動物園からの動物の大移動です

松山市にあった道後動物園から“大移動”(1987年)
松山市にあった道後動物園から“大移動”(1987年)

1987年、長年松山市民に親しまれていた道後動物園が新しく砥部町に移転することになり、動物たちの大移動が始まった。

愛媛県立とべ動物園・宮内敬介園長:
沿道でたくさんの人が手を振って動物を大歓迎してくださいまして、その時の光景は本当にありがたいと思って、今でも思い出すことができます

「大変だった」と当時を振り返る
「大変だった」と当時を振り返る

ただ、生きている動物の引っ越しは簡単ではなかった。

愛媛県立とべ動物園・宮内敬介園長:
捕獲作戦ですね。道後の獣舎の中で動物を捕獲して、移動用のクレート(おり)に移すわけですね。この時もなかなか動物は言うことを聞いてくれません。なので、動物も職員もけがしないように、いろんな準備を整えて様子を見ながら無理をせずに丁寧にやる作業なんですけど、まあ大変でした。アヒルを捕まえるのでボートから池に落ちたり、いろいろ面白いことがありました

35年で1933万人以上が来園

動物たちの大移動を終え、1988年、いよいよ愛媛県立とべ動物園がオープンした。

オープン当初のとべ動物園
オープン当初のとべ動物園

愛媛県立とべ動物園・宮内敬介園長:
ものすごいお客さんが来てくれたんです。砥部の交差点を出て、天山の交差点まで車が連なるくらいたくさんのお客さんが来て、オープンして半年で50万人くらいのお客さんが来てくれました

多くの来園者とともに歩んできたが、その道のりはいいことばかりではなかった。1994年、「平成の大渇水」の影響で来園者数が大きく減り、60万人を割り込んだ。

県立とべ動物園提供
県立とべ動物園提供

愛媛県立とべ動物園・宮内敬介園長:
水替えができないと藻が生えてきて緑色になっちゃうんです

このピンチを乗り越えられたのは、動物園を応援する県民からの「愛の水」の力だった。

多くの県民から水が提供された
多くの県民から水が提供された

愛媛県立とべ動物園・宮内敬介園長:
たくさんの方が善意の水を運んできてくださったんですね、非常にありがたく思いました

また、最近ではコロナ禍でも大きな影響を受けた。

愛媛県立とべ動物園・宮内敬介園長:
2年間で休園が3回ありました。やはりお客さんが来られないというのも運営的には打撃になります

コロナによる打撃も来園者数は回復
コロナによる打撃も来園者数は回復

それでも、スタッフはSNSで動画を配信するなどして動物たちの姿を発信し続けた。最近はイベントも復活し、来園者も順調に回復。これまでに1,933万人以上の人が動物園で楽しいひとときを過ごした。

“最長記録”更新中のホッキョクグマ

そして、とべ動物園の歴史を語るうえで欠かせないのが、1999年に生まれたホッキョクグマのピースだ。母親のバリーバが興奮状態にあり、宮内園長たちはすぐにはピースの姿を見ることができなかったという。

生まれてまもない頃のピース(県立とべ動物園提供)
生まれてまもない頃のピース(県立とべ動物園提供)

愛媛県立とべ動物園・宮内敬介園長:
その間に高市キーパーが一生懸命ミルクを与えたりお世話をしていただいて、落ち着いたらやっとピースの姿を見ることができました(※高市キーパーの「高」ははしご高)

鈴木瑠梨アナウンサー:
どうでした?その小さなピースを見て

愛媛県立とべ動物園・宮内敬介園長:
ありがとうって思いました。何とか頑張ってくれて、ああ生きてくれててありがとうと思いました

ピースは人工保育の国内最長記録を更新中
ピースは人工保育の国内最長記録を更新中

現在23歳のピースは、国内の人工保育最長記録を更新し続けている。

ホッキョクグマのピースと宮内園長
ホッキョクグマのピースと宮内園長

愛媛県立とべ動物園・宮内敬介園長:
日々ピースを見ていると命の力強さとか素晴らしさを感じますね。もっと長生きをしてお客さんに元気な姿を見ていただいて、元気を与えてほしい

たくさんの命が生まれ…

とべ動物園35年の歴史はほかにもある。

アオボウシインコのグリーン(県立とべ動物園提供)
アオボウシインコのグリーン(県立とべ動物園提供)

愛媛県立とべ動物園・宮内敬介園長:
アオボウシインコという中型くらいのインコがいまして、日本で初めて自然繁殖に成功することができました

グリーンとのテレビ出演時の思い出を語る
グリーンとのテレビ出演時の思い出を語る

このインコのグリーンは、テレビ愛媛のスタジオにも生出演してくれていた。

愛媛県立とべ動物園・宮内敬介園長:
スタジオに行ったときにケージに入れていったと思うんですけど、ガーガーガーガーすごく鳴き声が大きいんですね。大丈夫かなと心配しながら連れて行った記憶があります

また、とべ動物園はたくさんの命が誕生した場所でもある。

鈴木瑠梨アナウンサー:
やっぱり、このアフリカゾウの誕生というのは印象に残ってますか?

愛媛県立とべ動物園・宮内敬介園長:
やっぱり大きい体してますからね、生まれて、すぐ100kgくらいありますからね、大きな赤ちゃんということでとても印象に残っています

アフリカゾウの媛は国内初の人工保育成功例に
アフリカゾウの媛は国内初の人工保育成功例に

お母さんのリカは、とべ動物園で媛、砥夢、砥愛の3頭の出産を経験。そのうち媛は国内初の人工保育成功例となった。当時、宮内園長はエサの管理を担当していたという。

愛媛県立とべ動物園・宮内敬介園長:
一番大変だったのはミルクですね、だいたいアフリカゾウは離乳までに2年くらいミルクを飲むんです。ミルクの手配とか、結構大変だった記憶があります。ミルク代だけでも車1台分くらいかかりましたから

とべ動物園の“アフリカゾウファミリー”
とべ動物園の“アフリカゾウファミリー”

日本でここでしか見られないアフリカゾウのファミリーの姿は必見だ。

愛媛県立とべ動物園・宮内敬介園長:
これからも動物福祉に配慮しながら、皆さんがワクワクするような展示方法や赤ちゃんの誕生というようなホットなニュースをお届けして動物園の魅力向上に努めたいと思います

(テレビ愛媛)

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