バレーボール・V2女子のアランマーレは、4月8日と9日に行われた入れ替え戦に勝ち、創部8シーズン目で悲願のV1昇格を達成した。歓喜から一夜、選手と監督が会見し、「ホームのような雰囲気で戦えた」と語った。

初戦からファイナルセットにもつれ込む激闘

決戦の舞台は、新潟県長岡市。入れ替え戦・第1戦の開始前、緊張はあると思うがアランマーレの選手たちや北原勉監督からは、レギュラーラウンドを粘り強く戦って優勝した自信と、「この試合に勝つんだ」という気迫が練習から伝わってきた。

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対するはヴィクトリーナ姫路。コート上で存在感を放っているオランダ出身のプラク選手は、身長が190cmある。

オランダ出身のプラク選手 (写真:右)
オランダ出身のプラク選手 (写真:右)

そして、3月に発表された日本代表にも選ばれている宮部愛梨選手は強力な選手だ。

宮部愛梨選手
宮部愛梨選手

さらに、最高峰のV1で戦ってきたプライドと地力がある。

入れ替え戦は2試合を合わせた結果で、残留か昇格かを決定。アランマーレの北原勉監督は、「チャレンジャーとしての気持ちを忘れるな」と選手たちを送り出した。

その言葉に選手たちが強気のプレーで応えた。

試合が始まり、ミドルブロッカー・菅原里奈選手のブロックポイント、同じくミドルブロッカー・伊藤摩耶選手のスパイクで序盤の流れを作ると、アウトサイドヒッターでルーキーの有村涼美選手が、相手の高いブロックをものともしないスパイクを次々と決め、アランマーレが第1・第2セットを連取した。

しかし、第3セットは、トップリーグで戦ってきた姫路が本領を発揮した。日本代表・宮部愛梨選手の高さのある攻撃や切れ味鋭いスパイクを止められず、逆に2セットを連取され、第1戦は、15点先取のファイナルセットへもつれ込んだ。

姫路に2セットを連取されファイナルセットへ
姫路に2セットを連取されファイナルセットへ

アランマーレは6対8と苦しい状況になったが、有村選手に代わって入った前田美紅選手が奮起し、ブロックを利用した粘り強い攻撃で16対14でファイナルセットを奪った。

ブロックを利用した粘り強い攻撃で激戦を制す
ブロックを利用した粘り強い攻撃で激戦を制す

第1戦はフルセットの激戦をアランマーレが制したが、北原監督は「あくまで2試合の結果」と気を引き締めていた。

アランマーレ・北原勉監督:
初日は関係ないと言ったら変だが、この2日間でどういう展開に持っていくかと話している。きょう(8日)勝ったからどうのこうのではない

勝てばV1昇格…運命の2戦目

日が変わって迎えた2戦目。アランマーレは、勝てば悲願の昇格となる。北原監督は、「最後まで全員バレーを貫きたい」と話していた。

試合は、前日の勝利の勢いそのままに、アランマーレがスタートダッシュに成功した。ナイジェリア出身・メソマチ選手のバックアタック、キャプテン・木村友里選手のパワースパイクなどでポイントを重ね、第1セットを奪った。

第2セットも流れは、完全にアランマーレ。5点差をつけセットポイントを握った。

しかし、ここで姫路がV1の地力を見せる。あれよあれよと1点差に迫られ、北原監督はタイムアウトを要求した。

アランマーレ・北原勉監督:
ここで迷って、ああしようこうしようじゃない。「挑戦者だと絶対忘れないで」とだけ言ったら、みんなの顔がクッと上がった

再び強気に戻ったアランマーレは、この試合一番の窮地を乗り切った。
そして迎えた第3セットは、今シーズンの戦いを象徴するような、粘り強い全員バレーが随所に見られた。

実況:
(ボールを)もう一度、宮部に持っていく姫路。有薗が上げた、2本目つながるか、つないだアランマーレ。ただ攻撃は姫路、宮部が強打を打っていくが、もう一度上げた有薗、ナイスレシーブ

有薗選手のレシーブでつないでいく
有薗選手のレシーブでつないでいく

実況:
もう1本しのげるか、アランマーレ。上げた。有薗からメソマチのスパイク。決まった! 粘って、粘って取った1点、見事な得点です

メソマチ選手のスパイクが決まる
メソマチ選手のスパイクが決まる

実況:
ハイセットを打ち切れるか、キャプテン木村。打ち切った! 難しい後ろからのトスを見事に打ち切りました

キャプテン・木村選手が見事打ち切る
キャプテン・木村選手が見事打ち切る

実況:
(ボールを)上げた、ていねいに上げて、前田が苦しい態勢だがブロックをとばしました

苦しい態勢から打つ前田選手
苦しい態勢から打つ前田選手

そして、迎えたマッチポイント。

実況:
アランマーレ、あと1点。まさにみんなでつないできた全員バレーが悲願達成まであと1点です。伊藤のサーブ

伊藤選手のサーブ
伊藤選手のサーブ

実況:
(相手を)崩しました、崩した! 最後は伊藤のサービスエースだ。

体勢を崩す相手チーム
体勢を崩す相手チーム

実況:
創部8シーズン目で悲願達成です。来シーズンは国内最高峰リーグで戦うことになります

応援に駆けつけた多くの人たちと喜びを共有したアランマーレ。来シーズンはついに、トップリーグV1の舞台に立つ。

アランマーレ・木村友里キャプテン:
アランマーレに入ったときは(V1は)夢の舞台だったが、ことしに関しては、V1に「行く」という気持ちしかなかった。何をすべきか、これから考えるが、チーム全体として個人として、さらにレベルアップしたアランマーレを見せたい

アランマーレ・北原勉監督:
V1は、バレーボールをやっている以上、選手もスタッフも全員、絶対一度は味わいたい舞台。その最高の舞台でアランマーレらしさ、「V1でもこういうチームがあるんだ」と見せたい

創部8シーズン目でつかんだ歓喜の瞬間。コート上には、選手たちのはじける笑顔が見られ、アランマレーのオレンジの桜が満開となっていた。

ホームタウンは歓喜の渦に包まれる

そして、熱く盛り上がったのは、試合会場だけではなかった。チームのホームタウンである山形・酒田市では、市民ら約130人が歴史的一戦を見守った。

そして歓喜の瞬間、拍手が湧き起こった。

市民:
8年目でやっと優勝と昇格ができました! 来年はV1でバンバン暴れてもらいたい。全員が一丸となってやっているのをひしひしと感じた。みんながヒーロー

中学生:
相手チームと点差が離れていても粘り強かったし、スパイクでも攻めていて、バレーをやっている自分もまねしたいと思った

アランマーレ後援会「アラン∞エール」・工藤亜紀子会長:
これだけ多くの酒田市民が来たことに感動していて、これからなので、一丸となってアランマーレを応援していきたい

8年越しの夢が実現し、さらなる高みへと進むチームを、これからも熱き酒田市民が後押しする。

悲願達成から一夜明け「まだ実感ない」

歓喜の瞬間から一夜明け、監督・選手たちが10日、会見に臨んだ。和やかな雰囲気で進んだ会見は、V1昇格を初めて決めたチームらしく、初々しさにあふれた内容となった。

アランマーレ・北原勉監督:
昇格した実感ですね? 1日たって…まだありません

「激闘」の高ぶりはすぐには収まらず、喜びの実感はもう少し先かもしれないが、監督や選手・スタッフなど全員で臨んだ10日の会見は、昇格を決めた安心からか、終始、和やかな雰囲気で進み、キャプテンの木村選手は、ファンへの感謝の気持ちを表した。

アランマーレ・木村友里キャプテン:
応援してくださったシップメイトの皆さま、会場にたくさんの方々がお越しいただき、ホームのような雰囲気で試合ができた

また、試合を決めた最後のサーブを打った伊藤選手は、「監督も自分も狙う場所は同じだった」と話し、当時の心境を振り返った。

アランマーレ・伊藤摩耶選手:
チームが24点目だったので、思い切ってサーブを打つことができた。試合終了の瞬間、ベンチから全員がコートに入ってきてくれて、「勝ったんだな」と、ほっとした気持ちでいっぱいだった

ファンの思いを胸に刻んで戦った選手たちは、来たるV1の舞台で戦い抜くために、感謝の気持ちを忘れずに、さらに成長することを誓っていた。

(さくらんぼテレビ)

さくらんぼテレビ
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