イタリア・ヴェネツィアから電車で30分ほどに位置するパドヴァ。

イタリアで2番目に古い大学であるパドヴァ大学があり、大学の町としても知られている。

そのパドヴァのプロバレーボールチームに所属する日本人の現役大学生が、高橋藍(※高=はしごだか)だ。

21歳、身長188センチの高橋は、すでにバレーボール男子日本代表の中核を担う逸材だ。

ブロッコリーを茹でずに食べた新生活

「たまーに、なんて言うんすかね、『お味噌汁飲みてぇ』とかなります!」

パドヴァの街の公園を歩きながら、イタリアでの生活ぶりを聞いてみると、高橋はそんな本音を漏らした。

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現在、日本体育大学の現役学生である高橋。2021年、わずか19歳ながら東京オリンピックで存在感を見せると、同年12月に世界最高峰リーグ・イタリアのセリエA挑戦を表明、直後に海を渡った。

初めての海外生活では、当初、様々な苦労があったという。

「野菜を食べようとブロッコリーを買ったのですが、茹でて食べるものだと知らずに、切ってそのまま食べてしまい、『こんなに固かったかな?』と…。親に言ったら『ちゃんと茹でて!』と言われました(笑)」

セリエAでの2シーズン目となる今シーズン、イタリア生活にもすっかり慣れた様子だ。

学生の街・パドヴァを歩く高橋
学生の街・パドヴァを歩く高橋

「休みの日は、このパドヴァの町を1人で音楽を聴きながら散歩するのが好きですね。あとはチームメイトとご飯行ったり。イタリア人のチームメイトには、本場のカルボナーラの作り方を教わりました。好物でもあるので、オフの日に作って食べたりしています」

取材中に立ち寄ったレストランでは、流暢なイタリア語で注文する姿を見せた高橋。クラブのイベントでは世界中のファンと英語で交流を図る姿もあった。

チーム内でも人気者で、周りには常に笑顔の選手達が集まる。

特に仲が良い選手は、年齢も1つ違いのフェデリコ・クロザートだ。

「いままでいなかった選手になりたい」

そのクロザートに高橋について聞くと、2人の仲の良さが伺い知れる。

「ランはとても頼りになる選手だよ。守備でのレシーブもできれば、攻撃では見事なアタックを見せてくれる。プライベートでは、他のチームメイトとお寿司を食べにいく時は必ずランに声をかけるよ。でもまだランに日本食を料理してもらったことがないから、それがこれからの楽しみだね」

チームメイトとの信頼関係にも恵まれながら、充実したシーズンを過ごしている高橋。

自身が目指している選手像について、こう語った。

「『今までいなかった選手になりたい』っていうのは凄く思っていて。バレーボールっていうものがどれだけ面白いのか、本当にバレーボールの魅力を伝えられる選手というところを求めてやっていきたい」

「バレーボールの魅力を伝えられる選手」という一面は、取材中、随所で感じ取ることができた。

試合後、多くのファンに囲まれる高橋
試合後、多くのファンに囲まれる高橋

2月12日に行われたヴェローナとの試合後には、大勢のファンから写真やサインを求められていた。

競技場には「タカハシ!」「タカハシ!」という声が鳴り響く。

現地のイタリア人ファンはもちろん、日本から駆けつけたファンや、インドネシア、タイ、中国、カザフスタンと国籍豊かなファンが高橋の名前を連呼し、順番を待っていた。

そんなファン1人1人の要望に丁寧に応じ、45分ほどの時間をかけ、誰1人残すことなく、全てのファンに至福のひとときを与えた。

高橋のインスタグラムのフォロワーは驚異の115万越え。さらに、「anan」など有名ファッション誌にも登場しコートの外でも魅力を発信し続けている。

その人気ぶりは、甘いマスクだけではなく、魅力溢れるプレーでもファンを虜にしている。

新たな角度でバレーボールの魅力を発信し続ける

「小柄といわれる日本人選手が戦っていくには 簡単な道ではないと思うんですけど、持っている力を世界に伝えることもできる」

イタリアで戦う彼の一番の武器がレシーブだ。世界有数の選手達が放つ強烈なサーブに対しても、セッターがトスしやすい位置にしっかりとつなぐことができる。

そしてもちろん、実力は守備だけでない。身長188センチの高橋は、攻撃面でも2m越えの相手のブロックに対してスパイクを打ちきり得点を量産中。

個人の総得点ランキングではリーグ全体で14位につけている(3月10日時点)。

「高さのあるブロックに対して点をとるのは、世界で戦う中では重要。ただ打っても決まらない場面も多いので、フェイントで取る1点だったり、ブロックアウトで取る1点だったり、工夫をすることで攻撃の引き出しが増えました」

今シーズンは開幕から2試合連続でMVPに選出され、イタリア国内での評価も試合のたびに高まり、チームになくてはならない存在になっている。

「監督にはレシーブを第一に求められている。今はチームの軸としてスパイカーとしてもやっているので、そこは自分自身責任を持ってやっていきたい」

まだ現役大学生ながら、新たな角度でバレーボールの魅力を発信し続ける高橋。

今年には自身が初めて挑むパリオリンピック予選である、ワールドカップバレー2023(9月開催)も控えている。

ワールドカップバレーは、男子は日本・中国・ブラジルの3か国開催。3月17日には抽選で対戦国も決まる。

この大会で2位内に入ればパリへの切符を手にすることが出来る。

「パリオリンピックではメダルを視野にいれて戦わなくてはならないので、予選を突破するという目標ではなくて、メダルを獲得という目標に変えてしっかり臨んでいかないといけないと思います」

今年のオリンピック予選、そして来年のパリオリンピック。

高橋藍がコート内外で発信する様々な魅力に引き続き注目していきたい。
 

FIVBパリ五輪予選/ワールドカップバレー2023
日本戦全試合をフジテレビ系独占中継!
女子大会 9月16日(土)- 9月24日(日)
男子大会 9月30日(土)- 10月8日(日)
東京・国立代々木競技場 第一体育館にて開催