2023年2月、佐賀市の人気スポーツバーが全焼した。火の始末をしても、壁の内側で発火する「伝導過熱火災」の可能性があるという。長年店を営んできた夫婦は“想像もつかなかった原因”にやり場のない思いを話す。

閉店2時間後…未明に突然“炎上”

平川邦明アナウンサー:
佐賀市の繁華街です。規制線が張られています。煙が充満しています

この記事の画像(13枚)

建物の2階から上がる炎。火事は、深夜0時を過ぎた未明に突然発生した。

店主 宮崎正太郎さん:
「こんだけ燃えるか…」というぐらい、全部なくしちゃった。頭の中がぐちゃぐちゃ

火事が起きたのは、佐賀市の飲食店「おでんdeスポーツバーいぷしろん」。

店主 宮崎正太郎さん:
店閉めて2時間近くたった時、(自宅で)電話で聞いた。「店燃えてますよ」と言われて。意味不明ですね

店に引き返した、店主の宮崎さん。警察から事情聴取を受けながら、ぼう然と消火活動を見守るしかなかった。
一夜が明け、店の光景は一変していた。

店主 宮崎正太郎さん:
壁のがれき、堆積物が5cmぐらい積もっていて。じゃばじゃば(消火で使った)水が流れてきていて。思い出すのも怖いぐらい、すごい状態

真っ黒になったブレーカーに、原型がわからないエアコン。木造2階建ての2階にある店舗は全焼した。

全て失った“21年間の営み”

妻 宮崎由香さん:
みんなといろんな思いで共有して(店を)作ってきて、あっけなく、なくなった。21年間の思いがこんなにもなくなるのかなと

店は2002年にオープン。夫婦二人三脚で作ってきたアットホームな空間は、サガン鳥栖サポーターの交流の場としても人気だった。

火事の後、店には多くの常連客が片付けの手伝いに駆け付けた。

佐賀市の常連客:
びっくりというか、真っ白。来れば来るほどいい店だった

福岡・大牟田市の常連客:
ただただ悲しかった、眠れなかった。出来ることは何でもしたい。話を聞くだけでも

火の始末はしていたのに…なぜ燃えた?

では、なぜ火事が起きたのだろうか。
当時、火の始末はしっかりと確認していた宮崎さん。出火の原因として浮上したのは、聞き慣れない言葉だった。

店主 宮崎正太郎さん:
火を消して(閉店後)1~2時間たって「そんなことがあるの?」という。そういう火事があるというのを、本当に知らなかったので…

火災のあと、消防から可能性の一つとして伝えられた「伝導過熱火災」。ガスコンロ近くの壁の内側の木材が長年の過熱で炭化し、突然、火が出る火災だ。
県内では数年間に1件程度だが、火の始末をしていても、壁の内側で発火する可能性がある。

全てを失ったが「頑張って生きる」

妻 宮崎由香さん:
どこの家庭でもあり得るかもしれない火事。もちろん飲食店も。知っていただきたい。もう、こんな思いは誰もしてほしくない

思わぬ火事で、店にあるほぼ全ての物を失った2人。店を再建したい思いはあるものの、今後を考えるのは簡単ではない。

店主 宮崎正太郎さん:
グラスの1つも、酒の1本もない。「もう無理ですよ、もう(店は)しませんよ」とも言いたくないし、簡単に「再開します」とも言い切れないのが現実

妻 宮崎由香さん:
とりあえず今はもう頑張って、精いっぱい…「生きる」。まずは生活ですね

(サガテレビ)

サガテレビ
サガテレビ

佐賀の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。