ロシアによるウクライナ侵攻から24日で1年となるが、戦況は3月に「転換点」を迎えるとみられている。
ロシアは「ミサイル不足」の状態か
双方の死傷者数も把握できない中、戦闘は激しさを増しているが、ある政府関係者は最近のロシア軍の異変について次のように指摘する。
「ロシアは兵器が不足してきている」
ここ数カ月のロシア軍は、本来 戦闘機や艦艇を狙うミサイルを、地上に展開するウクライナ軍に向けて使っているという。

ロシア軍は数カ月前から、地対空ミサイルの「Sー300」や地対艦ミサイル「バスチオン」を地上に展開するウクライナ軍に対して発射していることが分かってきた。

精密な誘導爆撃ができず、命中精度が格段に落ちているとされていて、政府関係者はロシア軍の「イスカンデル」や「カリブル」などのミサイルが不足していることの現れだと分析する。
ウクライナも進撃の目処たたず…春に泥沼の戦争か
一方、国土からロシア軍を完全に排除することを目指しているウクライナも、決まったはずのアメリカやドイツなどからの戦車の提供が滞っており、戦いの先鋒を務める戦車部隊が整わず、進撃の目処が立っていないのが実情だ。

「ウクライナ国民の継戦意志をくじかせようとする厭戦機運を醸成するための攻撃だ」(防衛省・吉田陸上幕僚長 21日会見)との指摘もあるように、ロシアによるウクライナの重要防護インフラを狙った空爆も続いている。

ウクライナは、ロシアの爆撃機を迎え撃てる戦闘機の提供を、引き続き各国に求めていく考えだ。

今後の戦況は3月に「転換点」を迎えるとみられている。
冬に凍結したウクライナの地表が春に溶け出してぬかるみとなる3月は、「泥濘期」と言われていて、兵士の歩行はおろか戦車でも進撃が難しくなるとされている。進撃が困難となれば、双方が持久戦に持ち越す展開が予想され、春の訪れとともに戦争が長期化し、まさに「泥沼化」する恐れが出てくる。
核部隊に特異な行動確認されず
また、世界が注目してきたロシアの核兵器の動向については、複数の政府関係者によると去年2月、ウクライナ侵攻直後に、プーチン大統領がロシア軍の戦略核抑止部隊に特別警戒を命じた時からこの1年間に、核兵器を扱う部隊による特異な行動は確認されなかったことが分かった。

この背景には、アメリカのバイデン大統領が「核兵器を使えば途方もない過ちを犯すことになる」などとして、核使用には必ず報復がともなうと繰り返し警告したほか、中国の習近平国家主席も「核兵器の使用に反対する」と表明してきたことが影響を及ぼしているとみられる。
米中がどうしても阻止したいのは、「核保有国」のプレゼンスの低下だ。
仮にロシアが戦術核兵器をウクライナに対し1回でも使えば、核を持たない国に核保有を目指す動機を与えてしまい、核保有国が増えることに繋がりかねないという。
核の抑止力は機能しなかったことが明らかになり、非核保有国は「核を持っていないから核攻撃を受けた」と考え、自らも核を持つことを選択する恐れがある。
その結果、既存の核保有国の軍事的優位性がなくなり、世界のパワーバランスが一挙に不安定化することが懸念されている。

こうした中、習主席のロシア訪問を調整する動きを見せている中国に注目が集まっている。中国が、プーチン大統領に何らかの仲裁案を提案する可能性も囁かれているからだ。
大国の様々な思惑も絡まる中、世界を一変させたロシアによるウクライナ侵攻から、まもなく1年。双方の作戦行動が鈍る春を迎えるにあたり、戦争は更なる長期化に向かうのか、停戦に向けた条件を模索するため歩み寄るのか、両国は重要な分岐点を迎えることとなる。
(フジテレビ政治部 上法玄)