働き方改革が進む中で、NTTが昨年7月に導入した「リモートスタンダード制度」。

日本全国どこからでもリモートワーク(テレワーク)で働くことを可能とする制度で、導入当初の対象はNTTグループ主要会社の約3万人の社員だった。

7月1日以降は「勤務場所は自宅」を基本とし、「オフィスに出社する場合は出張扱い」。この新たな制度により、「転勤や単身赴任を伴わない働き方を拡大して参ります」としていた。

(参考記事:「勤務場所は自宅」「出社は出張扱い」リモート基本の“新たな働き方”をNTTが導入…住む場所は海外も可能なのか聞いた

導入後の状況が気になるところだが、さらに今年2月9日の発表によると、制度の対象が約4万人に拡大。さらに、単身赴任者は約400人減った、としている。

単身赴任者の減少以外では、どのような変化がみられるのか? また、導入後に見えてきた課題はあるのか? NTTの担当者に“導入後の変化と課題”を聞いた。

約4900人だった単身赴任者は約4500人に減少

――「リモートスタンダード制度」、導入当初の対象は約3万人だったが今は?

対象は、2月9日の発表で、国内社員の約4万人としています。当初の約3万人から拡大しました。この約4万人は自宅を勤務場所としてリモートワークを実施し、オフィスに出社する際は「出張」扱いに変更になっています。


――「リモートスタンダード制度」の導入後、単身赴任者の人数は減った?

制度開始前の去年6月末時点では単身赴任者が約4900人いたのですが、制度開始後の去年11月末で約4500人となり、約400人(約1割)減少しました。

リモートスタンダード制度の活用状況(提供:NTT)
リモートスタンダード制度の活用状況(提供:NTT)
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――単身赴任者が約400人減ったことをどのように受け止めている?

去年の同じ期間で減った単身赴任者は35名程度なので、今回、400人減ったということは、大半が「リモートスタンダード制度」を導入したことによる成果と評価しています。

リモートワークの実施頻度・満足度が上昇

――単身赴任者が減ったこと以外に、何か変化はみられる?

国内会社の社員に対する意識調査を実施したところ、リモートワーク可能と回答した社員の中では、リモートワークの実施頻度、満足度ともに上昇しています。また、生産性に対する社員の認識は「生産性が上がっている」または「変化なし」の回答が9割でした。

さらに、居住地が自由の働き方に対して、社員の約8割が肯定的に回答していて、単身赴任を廃止していく考え方も、非常に好意的に受け止められています。

リモートワークに関する社員の意識調査の結果(提供:NTT)
リモートワークに関する社員の意識調査の結果(提供:NTT)

――見えてきた課題は?

この制度に限らず、リモートワーク全般に言えることですが、今まで、オフィスにいたら自然と耳に入ってきたこと、誰が何をやっているか、何が起きているか見えていたことが、リモートワークでは分からなくなります。

このため、グループチャットを使ったチーム内のコミュニケーションや、1on1(ワンオンワン)のミーティングを意識的に行い、社員との対話を増やすようにしています。


――この制度の今後については、どのように考えている?

現在、この制度の対象者は国内従業員19万人のうち4万人なので、業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)を通じて、適用対象を拡大していくことも、継続して取り組んでまいります。

また、新入社員や若手社員などについても、リモートワークの環境下であっても、Web会議ツールやチャットツールを活用したコミュニケーションを推進しています。

「現物を見て学ぶ」「先輩と同行して学ぶ」など、対面で習得する方が効果的な場面はあるため、必要に応じて、対面でコミュニケーションを図ることを組み合わせ、育成を進めていく考えです。

NTT本社・外観(提供:NTT)
NTT本社・外観(提供:NTT)

NTTの「リモートスタンダード制度」は導入後、単身赴任者は約400人減り、リモートワークの実施頻度・満足度も上昇、さらに生産性も上昇または変化がないという。見えてきた課題や対策を参考に、リモートを基本とする企業が今後、増えていくのか注目していきたい。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。