「愛生を読む会」開く女性

瀬戸内市に住む鑓屋翔子さんは、2年ほど前から県内各地に出向き、「愛生を読む会」を開いている。鑓屋さんが抱える大きなリュックサックの中に入っているのは、約200の冊子だ。

冊子を手にする鑓屋翔子さん
冊子を手にする鑓屋翔子さん
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鑓屋翔子さん:
これは、瀬戸内市の長島愛生園で発行されている機関誌「愛生」のバックナンバー

「愛生」は国立ハンセン病療養所「長島愛生園」が開園した翌年の1931年から約90年にわたり発行され、最新号は840号。国の誤った隔離政策で収容された人たちが、それぞれの思いを随筆や短歌にして残してきた。

園内にあるカフェ「さざなみハウス」の店長を務める鑓屋さんは、入所者からいつも届けられる「愛生」につづられていた元患者たちの言葉に心を打たれた。

鑓屋翔子さん:
ハンセン病に対して、みんな遠いもので、触れてはいけない、語ってはいけないなどの気持ちになるのかな。ちょっと自分たちに身近なものから触れてもらえたらなと

家族との別れつづられた随筆に参加者は…

この日は、岡山県北の奈義町で「愛生を読む会」を開いた。SNSでの呼びかけで、県内各地から参加者が集まった。

朗読はせず、それぞれ手に取った冊子を黙々と読む。家族との別れがつづられた随筆には、以下のようにつづられていた。

遠くから思いあう愛。それはもう私を支えてくれる何者でもないのではなかろうか。そうなった時、私は泣くことができない。全くの孤独になってしまうのである。(機関誌「愛生」より)

参加者A:
この時この人は、家族と離れて家族が自分のことをずっと覚えていてくれることに確信が持てなかったと思う。つらかっただろう

「愛生」通じ思いに寄り添う

初めてハンセン病の歴史に触れた人や、同じ作者の作品を探して読む常連もいる。

参加者B:
覚えてしまう。同じ時代のものを読んでいると、必ず出てくる名前がある

参加者C:
隔離されて大変な思いをしたと思う

参加者D:
パーマ屋さんができて、パーマをあててもらって、女性がうれしそうに出てきて、限られた中にも喜びを見つけて暮らしていたんだな

鑓屋翔子さん:
いろんな見方ができるから、みんなが全部目を通さなくても担いでいかないといけない

参加者は、それぞれが感じたことを伝え合いながら、元患者たちの思いに寄り添うのだ。

鑓屋翔子さん:
病気を受け入れて暮らしている人たちの強さ、でもそこに恨めしさを感じる気持ち。日常暮らしている私たちと何ら変わりない。私も何か自分の目線で伝えられたら

差別や偏見のない社会へ…。鑓屋さんが「愛生」を通じて運ぶその願いは、今、多くの人がハンセン病問題を考えるきっかけとなっている。

(岡山放送)

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