コロナの第8波が続く中、季節性のインフルエンザも警報級になっている。高齢者の命を預かる介護の現場は、気の抜けない日々が続いている。
同時感染?医師の診断に戸惑い
テレビ西日本の番組に出演しているフリーアナウンサーの小野彩香さんは、第8波がピークだった2022年末に病院にかかり、医師の診断に戸惑ったと話す。
フリーアナウンサー・小野彩香さん:
微熱から始まって、一時ちょっと寒気がするまで熱が出まして、最高38度5分くらいまであがりました。正直そのときはただの風邪だと思っていたので、医師の診断に「え?」って戸惑いと驚きが…

医師が下した診断は、「フルロナ」と呼ばれる季節性インフルエンザと新型コロナの同時感染だった。小野さんはインフルの治療薬とコロナの症状を抑える薬を処方され、7日間の自宅療養となった。

フリーアナウンサー・小野彩香さん:
普段、私もかなり健康に気を遣っていますし、きっとどなたでもかかる可能性があるウイルスではあると思う
“インフル”コロナと逆転現象も
コロナ感染の第8波が続く中、流行が急拡大している季節性のインフルエンザ。重症化も懸念される同時流行が福岡でも本格化し、医療現場にも変化が現れている。

やまもとホームクリニック・山本希治院長:
コロナの方、それ自体はPCRかけても陰性。大丈夫だったんですけど、インフルエンザの方に陽性が出ました

コロナ対策の強化もあって2021年、22年と目立った流行が無かったインフルエンザだが、今シーズンは、急速に感染者が増えている。

福岡市医師会・中山英樹常任理事:
1週間、1週間、インフルエンザの患者が増えていまして、子どもに関して逆転していて、コロナが出る数が減っていってインフルの数が増えている

福岡市ではコロナとの逆転現象が起きているというインフルエンザ。市内では、2月2日までに66の小中学校などで111クラスが学級閉鎖となっている。

1月23日から29日の1週間の感染者の報告数は、1医療機関あたり「31.94」人と、警報レベルの30人を超えている。警報レベルを超えるのは、新型コロナ感染拡大前の2019年1月以来、4年ぶりだ。
高齢者施設の感染対策は
コロナの第8波が続く中、猛威をふるい始めたインフルエンザに、高齢者が集団で暮らす介護の現場は警戒を強めている。

福岡市早良区の特別養護老人ホームでは、入所している60代から90代の約60人全員が、糖尿病や心不全といった基礎疾患を抱えている。感染の第8波は年末年始にピークとなり、施設は当時、それまでなかった厳戒態勢を取っていた。

約50人が24時間態勢で介護と感染予防にあたっていたが、年末に初めて新型コロナの集団感染「クラスター」が起きてしまった。

特別養護老人ホーム「次郎丸の里」・藤井雅美施設長:
職員、入居者、合わせて31人が罹患(りかん)しまして、職員も足りない状況でしたので、われわれ事務方からも介護職が足りないということで何人かフォローに入って

年末年始に合わせて21人の入所者と職員10人がコロナに感染。家族との面会もストップし対策を強化していたが、クラスターを防ぐことはできなかった。これを教訓に施設は、さらに厳重な対策を講じた。

特別養護老人ホーム「次郎丸の里」・藤井雅美施設長:
ここから向こうが居室のエリアで、20人の居室があるんですが、今回感染が発生していますのでレッドゾーンという扱い

感染者が生活している居室エリアを出入り口で仕切り、防護服を着た専任の職員だけが入れる「レッドゾーン」とした。動線を分けることで職員同士の接触を避け、クラスターの防止を図ったのだ。
特別養護老人ホーム「次郎丸の里」・藤井雅美施設長:
対面でのコミュニケーションというのは、ほぼ取れない状況です。全て内線と社内メールでやりとりするかたちですね

入所者に食事を届ける配膳車もレッドゾーンには入ることができない。使い捨て容器につぎ分けた食事をビニール袋に入れ、段ボール箱にまとめて玄関からいったん外へ。そして非常時のみに使う階段をのぼって、2階にあるレッドゾーンのベランダに到着した。

並んだテーブルに1つ1つ食事を置いて合図をするとレッドゾーンを担当する専任の介護職員が出てきて、いわゆる「置き配」の形で食事を受け取った。
特別養護老人ホーム「次郎丸の里」・藤井雅美施設長:
現場のスタッフは一番、感染の危険の隣り合わせの中で頑張ってくれていますので
気が抜けない日々が続く
厳戒態勢が取られていた1月中旬から約2週間、再び施設を取材した。
特別養護老人ホーム「次郎丸の里」・藤井雅美施設長:
1月22日に全員の陰性確認がとれまして、保健所の方に収束宣言を頂きました

入所者全員の「コロナ陰性」が確認され、厳戒態勢は解除されていた。
特別養護老人ホーム「次郎丸の里」・藤井雅美施設長:
この先が居住エリアになるんですが、ちょうどここですね、ここから先がレッドゾーンで立ち入り禁止エリアだった
2週間前に取り付けられていた仕切りのカーテンは取り外されているが、警戒が完全に緩んだ訳ではない。
記者:
ここから先の居住エリアは、部外者が入ることはできない?
特別養護老人ホーム「次郎丸の里」・藤井雅美施設長:
はい、もうわれわれ従業員のみとなっています

今も家族との面会を含めて外部との接触をストップし、ウイルスを持ち込ませない対策を続けているが、最も警戒しているのが、急速に流行が広がるインフルエンザだ。
記者:
インフルもクラスターが起きた場合、どうしますか?
特別養護老人ホーム「次郎丸の里」・藤井雅美施設長:
(コロナと)同等の対応でやっていく方向で考えています
記者:
レッドゾーンも設けますか?
特別養護老人ホーム「次郎丸の里」・藤井雅美施設長:
設けると思います
記者:
そこまで厳しくする背景は?

特別養護老人ホーム「次郎丸の里」・藤井雅美施設長:
入所者は、もともと基礎疾患がある高齢者ですので、感染症に感染することで命の危険が出てきますので

コロナ感染の第8波がピークを過ぎる一方で、急拡大するインフルエンザ。重症化のリスクが高い高齢者の命を預かる最前線の現場では、気が抜けない日々が続いている。
(テレビ西日本)