東京都内で90歳女性が殺害された強盗殺人事件を始め、全国で相次ぐ強盗事件の実行役に共通していると見られるのが「闇バイト」。テレビ西日本の取材班は「闇バイト」をしたことがあるという人物に取材を重ね、簡単に踏み入れてはならない、その危険性に迫った。
元特殊詐欺リーダー格・フナイムさん:
僕自身が5年4カ月の懲役を経て、2021年に出所してるんですけど…
2021年に刑務所を出所したという男性。現在は、刑務所で呼ばれていた番号「2716」にちなみ、「フナイム」という名前で東京・歌舞伎町を中心に慈善活動に取り組んでいる。
フナイムさんは、元は特殊詐欺グループのリーダー格だった。
元特殊詐欺リーダー格・フナイムさん:
指示する側からしたら、受け子っていうのは、今回でいう強盗は「切り捨て要員」なんで、捕まったら捕まったでしょうがないみたいな。「じゃあもう、さよなら~」という感じですね。一切関係ない
相次ぐ事件に共通する「闇バイト」
今、関東地方を中心に相次いでいる強盗事件。中でも1月19日に東京・狛江市で90歳の女性が両手を縛られた状態で殺害された強盗殺人事件は、その残虐性が特に際立っている。
これらの事件の背景に共通しているとみられているのが「闇バイト」だ。SNSで「闇バイト」に応募した実行役が事件を起こしているとみられている。
関東での連続強盗事件に関わったとされるメンバーの関与も指摘されている、山口・岩国市で起きた強盗未遂事件。
実行役とされる26歳の被告の男の裁判で、検察側は次のように指摘した。
検察:
被告人はSNSで日当100万円の投稿を見つけ応募した
検察:
被告人は氏名不詳者の指示に従い強盗することにした。事件当日、「被害者宅には金庫が2つ、1億円ある」、「人がいたら縛っちゃおう」と説明を受けた
SNSにあふれる“受け子募集”
実行役を「闇バイト」で集めるこうした手法は、特殊詐欺の手口と同じだ。被害者から現金を受け取る、いわゆる「受け子」は、ほとんどが「闇バイト」で集められる。
「闇バイト」と検索してみると、ネット上は「闇バイト」の希望者を募る投稿であふれかえっていた。
SNSの投稿
「急募!2名のみ募集します!早い者勝ちです!」
「初心者問題なし!仕事は日払いになります!」
特殊詐欺グループのリーダー格として逮捕されたフナイムさんも、犯罪に手を染めたことになったきっかけは「闇バイト」だったと明かす。
元特殊詐欺リーダー格・フナイムさん:
(知人から)「もうかる昼の仕事がある」ということで、「高級時計を付けてみたりできるよ!」と(言われた)。そこで行われていたことというのが、融資保証金詐欺」
フナイムさんがはじめに担当したのは、金融機関の担当者を装って電話をかける役。犯罪だとわかりつつも、やめられない事情があった。
元特殊詐欺リーダー格・フナイムさん:
反社(反社会的勢力)の感じを出してきたんですよね、僕を誘ってきた人間が。「ここで抜けたら…」みたいなことも言われていたところもありましたし。だから抜けるに抜けれなかったです
フナイムさんは、次第に犯罪を行っているという感覚が薄れ、裏社会で築いた人脈を頼りに特殊詐欺グループのリーダー格となっていた。
元特殊詐欺リーダー格・フナイムさん:
最高月収で2000万円ですね。1回そういった金額をいただいてしまうと、うかつにやめられなくなったりですね
フナイムさんがリーダー格だった当時、「闇バイト」で金の受け取りを担っていた「受け子」への印象を尋ねた。
元特殊詐欺リーダー格・フナイムさん:
お金を外注の「受け子」グループが取りに行くんですけど、道具です。要はお金払ってるんだから、それなりの仕事してもらわないと困りますよという話ですよね
フナイムさんによると、電話などをかける「詐欺集団」と「受け子」は別のグループ。「受け子」にはリクルートを専門に扱う「闇バイト」業者があり、そのトップに詐欺で得た収入の30%を支払うだけの関係で、たとえ「受け子」が捕まったとしても何の痛手にもならないと話す。
元特殊詐欺リーダー格・フナイムさん:
捕まったら捕まったでしょうがないみたいな。「じゃあもう、さよなら~」ていう感じですね。一切関係ない
「闇バイトに手を出すと破滅しかない」
取材班は、「受け子」として窃盗罪で起訴され、執行猶予5年の判決を受けた20代の男性に取材を申し込んだ。
届いた回答
「受け取った高額な報酬で犯罪を仕事だと錯覚していました」
「闇バイトに手を染めたことは、後悔してもしきれないです」
男性から寄せられた文面には、「後悔」と「罪悪感」の文字が並んでいた。
元特殊詐欺リーダー格・フナイムさん:
「闇バイト」に手を出すと破滅しかありません。要は、犯罪っていうのは加害者自身、加害者の家族、または被害者、被害者の家族、全てを闇に落とします。それが「闇バイト」
「闇バイト」を機に始まった転落の人生。フナイムさんは、同じ過ちに手を染める人がいなくなるよう、詐欺の撲滅や防止の啓発活動に力を入れている。
元特殊詐欺リーダー格・フナイムさん:
一時の10万円、20万円で一生を棒に振るのであれば、もっと知識をつければ稼げる仕事なんていっぱいあるので。自分の本当にやりたいこと、お金じゃなくてね、そこを追ってもらいたいなと思います。若者に向けてね
(テレビ西日本)