市民を襲撃するなど6つの事件に関与した罪に問われた「工藤会」ナンバー3の菊地敬吾被告(50)に、福岡地裁は無期懲役の判決を言い渡した。周囲から「会長のコピー」と呼ばれていた菊池被告は、一体どのような人物だったのだろうか。

工藤会“ナンバー3”に無期懲役の判決

2023年1月26日午後1時半。福岡地裁101号法廷。ダークスーツで身を固め法廷に現れた男は、廷内をジロリと見回した。組織犯罪処罰法違反などの罪に問われていた特定危険指定暴力団「工藤会」の幹部、田中組組長・菊地敬吾被告だ。

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福岡地裁で注目の判決が下りた。

伊藤寛樹裁判長(取材メモより):
主文を告げます。被告人を無期懲役と処する

無期懲役の判決を受けた菊地被告は、落ち着きのない様子で判決理由を聞いていた。

2014年から始まった「工藤会頂上作戦」。市民を襲撃した凶悪事件に関与したとして、工藤会トップの野村悟被告とナンバー2の田上不美夫被告は2021年8月、それぞれ死刑と無期懲役などの一審判決を受けていて、2人は控訴中だ。

判決を受けた菊地被告の肩書は“工藤会の理事長”。野村被告、田上被告に続く組織ナンバー3の人物だ。

捜査資料によると、菊地被告は福岡・北九州市小倉南区の出身。高校卒業後、家の仕事を手伝うが、1995年に当時22歳で野村被告率いる工藤会・三代目田中組に加入。その後、田上被告の下で実力をつけ、わずか16年、38歳の若さで工藤会最高クラスの幹部の地位に駆け上がった。

工藤会対策に携わった元福岡県警の藪正孝氏は、菊地被告の人柄についてこう語る。

元福岡県警・藪正孝氏:
人柄としては田上被告、野村被告には絶対忠誠。田上被告から気に入られて大抜てきされたというのが大きくて、ナンバー3は田上、野村があっての地位だと思う。別の工藤会幹部あたりに言わせたら「会長のコピー」。要は(立ち振る舞いが)田上被告のコピーと

被告は無罪要求「証拠に基づいたまっとうな判断を」

2011年7月、北九州市小倉北区での工藤会五代目継承式。

社会に大きな不安を与えた一連の事件の「キーマン」とされる菊地被告。
起訴状などによると、菊地被告は野村被告らと共謀して、工藤会捜査に携わっていた元警部が銃撃された事件など3つの市民襲撃事件に関与したほか、配下の組員に指示して暴力団排除の標章を掲げた飲食店経営者の女性を刃物で襲ったなど、あわせて6つの事件で罪に問われていた。

菊地被告の指示を裏付ける直接証拠がないまま、2020年12月から始まった裁判。初公判で菊地被告は「身に覚えがありません」と起訴内容を全て否認した。

2022年1月の被告人質問で、元警部銃撃事件について尋ねられた菊地被告は…。

弁護側:
野村被告から指示を受けた?

菊地被告:
覚えてない

弁護側:
田上被告からは?

菊地被告:
ありません

弁護側:
あなたが指示した?

菊地被告:
ありません

弁護側:
総裁という肩書についてどう思う?尊敬すべき人?

菊地被告:
もちろん、見守っていただけるような存在

検察側は、「6件の凶悪重大事件に連続的に関与したものであり、その刑事責任が重大」、「生涯にわたって償いの日々を送らせるほかない」などとして、菊地被告に無期懲役を求刑。

対する弁護側は、「検察の主張は恣意(しい)的で独善的な主張」、「直接的証拠がない」などと訴えた。

また、法廷では菊地被告も裁判長に無罪判決の決断を求めていた。

菊地被告:
わたしは関与していません。一連の証拠関係も初めて知るものばかり。一連の証拠関係でわたしの関与を示すものはない。わたしは無実です。わたしはヤクザやからと、田中組の組長やからと判断せず、証拠に基づいたまっとうな判断を英断をされたし。以上

工藤会上位3人が”無期懲役”以上の判決に

2023年1月26日の福岡地裁前には、福岡県警の捜査員が正面玄関に立ち、不測の事態に備え厳重な警備体制を敷いていた。

その中で開かれた菊地被告の判決公判。福岡地裁は検察側の求刑通り、菊地被告に無期懲役の判決を言い渡した。

伊藤寛樹裁判長は、暴力団排除の標章を掲げた飲食店経営者などが田中組組員に襲われた3つの事件について、「組員が独自に思いついたとは考えにくい」、「被告人の意向が働いていなかったのは不自然、不合理」、「被告人からの指示が存在した」として、菊地被告側の無罪主張を一蹴した。

さらに野村、田上両被告が一審で有罪判決を受けている元警部、看護師、歯科医襲撃事件についても…。

伊藤寛樹裁判長(取材メモより):
崇拝の対象である野村、大所帯の工藤会を率いる会長、田上は組員との接点が限られる。各事件を成立させられるのは、野村から田上と被告人を順に経由するほかに考えがたい

野村被告から指示を受けた田上被告が菊地被告に命令し、市民襲撃を実行したと認定。「被害者はいずれも一般市民であり悪質性が高い」と断罪した。

判決後、菊地被告は特に言葉を発することなく法廷をあとにした。

この日の公判で工藤会上位3人の一審判決が出そろった。3人全員が無期懲役以上の判決。捜査当局が進めてきた「工藤会壊滅作戦」はこれで一つの節目を迎えた形となる。

(テレビ西日本)

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