昨今、投資熱の高まりにより、「投資をやってみたい」と思っている人もいるだろう。

そもそも「投資」とは何なのだろうか。

ファイナンシャルプランナーの坂本綾子さんに、投資初心者が知っておきたい5つの基本を教えてもらった。

【基本1】投資できるお金はある?

投資とはなんでしょうか?儲かりそうなところに自分のお金を投じ、儲かったら回収する?

イメージとしては間違っていません。

あまりに基本的なことではありますが、【投資の基本1】として言えるのが、投資はそれに回せる自分のお金がないとできないということです。

儲かったら回収するから、自分が出したお金よりもたくさんになって戻ってくるかもしれない。でも、儲からなかったら…お金が減るか、最悪戻ってこないかも。

そう思考を巡らせる人も多いでしょう。ですが、その通りです。

【投資の基本2】お金が増えるかもしれないけれど、減るかもしれない。

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この2つは、投資の本質です。投資をしたことがない人も、なんとなく感じていることでしょう。だから「私には投資に回すお金の余裕はない」とか「損するかもしれないことに大事なお金は使えない」と、投資を敬遠する人も出てきます。

では、仕事とは何でしょうか。製造業なら商品を作り、サービス業ならサービスを提供します。その商品やサービスを求める人、必要とする人がいれば、対価としてお金を受け取ります。

お金を使って商品を作ったり、サービスを提供する場を準備したりし、買ってくれる人がいたら、使ったお金に上乗せした金額を回収することができるわけです。

逆に、買ってくれる人がいなかったら、あるいは予想よりも少なかったら、使ったお金を回収するどころか損をすることもありえます。仕事も、最初にお金が必要で、儲かる保証はないのです。だからこそ、どんな商品が求められているかを考え、宣伝をし、売るための努力をしています。

そして、仕事をする人や企業に、お金を出すことが「投資」なのです。

【基本3】投資の原点は株式や債券を買うこと

投資にもいろいろな種類がありますが、企業の株式や債券を買うことは、その企業の運営資金を出すことになります。つまり、投資の原点は、株式や債券を買うことです。

株式や債券以外にも、不動産に投資をして家賃収入を得る、金(ゴールド)を買って値上がりを狙う、といったことも個人の投資として可能です。

しかし、初めての投資なら、原点である株式や債券からスタートしてみることがベストだと言えるでしょう。

【投資の基本3】投資の原点は株式や債券を買うこと

とはいえ、株式や債券をどう選んでどこで買えばいいのかと思う人もいるはずです。原点とはいえ、難易度は低くはありません。むしろ高いのです。そこで、提案するのが投資信託です。

投資信託は、複数の株式や債券を詰め合わせた金融商品です。いろいろな種類があり、中身も表示してあります。日本の株式の詰め合わせや、日本の株式と債券の両方を詰め合わせ、など。

そして、投資の本質である「お金が増えるかもしれないけれど、減るかもしれない」というリスクをなるべく小さくできるのが投資信託であり、中でも資産分散型というタイプです。

1つの投資信託の中に、日本の債券や株式のみならず、海外の債券や株式なども詰め合わせてあります。なぜ、このタイプはリスクを小さくできるかというと、性質の異なるものがいろいろ入っているからです。

仕事で言えば、いろいろな商品・サービスを持っているのと同じ。例えば、ある商品はたくさん売れたけど、別の商品は売れなかったようなとき、両方持っていれば、全体ではそこそこになりますよね。

【投資の基本4】いろいろな株式や債券を詰め合わせた資産分散型の投資信託を

資産分散型の投資信託は、銀行や証券会社で売っています。口座を持つ銀行のサイトで、投資信託のコーナーを見てみましょう。

ただし、資産分散型といっても、何本かラインナップされているはずなので、ここでまた迷ってしまいますね。

価格変動が大きくなり過ぎず、それでいてある程度は増やしたいなら、商品名に、30、50、70などの数字が入っている場合、真ん中の50、「成長」や「安定」という言葉が入っているなら「安定」を選ぶといいでしょう。

積極的なイメージを醸し出す名前のものは株式の比率が高めで、その分、値上がりも期待できますが、リスクも高くなる傾向があります。

【基本5】投資は一度にせず“長期”の目線で

さて、実際に投資を始める前に、【投資の基本1】の、投資に回せるお金があるかどうかを確認するとともに、解決する必要があります。預金がほとんどないなら、まずは貯金が優先です。投資信託を買う前に安全な資産である預金を一定額確保しましょう。

3カ月分程度の生活費を賄える預金があるなら、毎月の収入からの積立で投資を始めてもいいでしょう。5000円、1万円など決まった積立額で、資産分散型の投資信託を積立購入していくのです。

積立のメリットは、最初にまとまったお金がいらないこと。少しずつ買っていくので、損失が出たとしても、投資額が小さいうちは損失も小さくて済むこと、だんだんと投資に慣れることができることです。そして一番大きなメリットは、長期に積み立てると損がでにくいことです。

「今日の日経平均株価の終値は昨日より○○円高い○○円でした」などとニュースで報道される通り、株式の価格は変動します。そして、債券の価格も変動します。複数の株式や債券を詰め合わせた投資信託は、中身である株式や債券の価格変動を反映して値動きします。

これを毎月、積立購入すると、その時々のいろいろな価格で買うことになります。一発勝負ではないことがポイントです。購入した平均額よりも、売るときに高ければ利益がでます。そして株価は、短期的には上がったり下がったりを繰り返しても、長期的には値上がりしてきている実績があります。

必ず上がる保証はありませんが、世界にはたくさんの人が生きていて、モノやサービスを必要としています。それに応えるために、それぞれに仕事をしているのです。短期的にはいろいろあっても、期間が長くなれば、株価が上がり、利益が出る可能性は高くなるでしょう。

そして、投資の基本の最後、5つ目です。

【投資の基本5】一度に投資せず、一定額をコツコツ長期で積み立てる

必要なモノやサービスを供給するための資金としてお金を出し、その利益を還元してもらう、これが株式や債券への投資です。さらに、複数の株式や債券を含む投資信託を使い、積立にすることでリスクを軽減できます。
 

坂本綾子
雑誌の編集・記者として活動後、ファイナンシャルプランナーの資格を習得。2010年にファイナンシャルプランナー坂本綾子事務所を設立。著書には『節約・貯蓄・投資の前に 今さら聞けないお金の超基本』(朝日新聞出版)『「投資をしたことがないけれど、このままで本当に大丈夫?」と思ったら読む絶対に損をしないお金の増やし方』(CCCメディアハウス)など多数

イラスト=さいとうひさし

坂本綾子
坂本綾子

雑誌の編集・記者として活動後、ファイナンシャルプランナーの資格を習得。2010年にファイナンシャルプランナー坂本綾子事務所を設立。著書には『節約・貯蓄・投資の前に 今さら聞けないお金の超基本』(朝日新聞出版)『「投資をしたことがないけれど、このままで本当に大丈夫?」と思ったら読む絶対に損をしないお金の増やし方』(CCCメディアハウス)など多数