10月、新潟市に病気で入院する子どもの家族向けの宿泊施設がオープンした。地域の寄付やボランティアで運営されるこの施設が、さっそく小児患者家族の負担軽減につながっている。
病院の敷地内に宿泊施設
新潟市中央区の新潟大学医歯学総合病院の敷地内に建つ、宿泊施設「ドナルド・マクドナルド・ハウスにいがた」。
この日、施設に宿泊中だった近藤美貴さん。
（Q．赤ちゃんの表情は毎日違う？）
近藤美貴さん：
違う。だいぶ元気になって、やれることが増えている
佐渡市で暮らす近藤さんは10月19日、次女のこのみちゃんを出産。妊娠35週での早産だった。
近藤美貴さん：
新生児が早く生まれると、佐渡では対応できないということで、新大病院で診てもらっている
GCU（＝回復治療室）での治療・観察が必要だったが、佐渡市内に対応する病院がなく、新潟大学病院に転院した。
近藤美貴さん：
心電図とか酸素を見るモニターをつけて、状態を見てもらっている。スペシャリストたちが見てくれているので、安心感がある
県内の小児医療の中心的役割を担う新潟大学病院。診断や治療が難しい症例の子どもなど、年間約2000人が県外を含めた広い地域から入院している。
家族に強いられてきた経済的体力的負担
長岡市に住む本村里奈さんは8年前、長女の奏ちゃんが1歳のときに小児がんを患い、合わせて2年近く、新潟大学病院に入院していた。
本村里奈さん：
一つの子どものベッドに親子で寝ていた。足を曲げて小さくなって
（Q．毎日一緒に寝泊まり？）
本村里奈さん：
毎日。食事面はすごく苦労した。冷凍食品とかレトルト食品とか、毎日同じものを繰り返し食べた。妊娠中だったので、お腹の子に「ごめんね」と思いながら、レトルト食品を食べていた
これまで、遠い地域から入院する子どもの家族は、同じ病室で寝泊まりするか、近くのホテルに泊まり、経済的・体力的な負担を強いられてきた。
こうした中、2019年、新潟大学病院などが建設に向け動き出したのが、日本海側で初となるドナルド・マクドナルド・ハウス。
寄付やボランティアによる運営
ドナルド・マクドナルド・ハウスは、入院する子どもの家族向けに、地域の寄付やボランティアによって運営されるアメリカ発祥の宿泊施設だ。
国内12カ所目となる、にいがたハウスの建設に向け、募金活動やボランティアスタッフの募集が進められた。
2022年8月に完成した施設は、「自宅のような雰囲気で過ごせるように」と、キッチンなどを備え、一番の特徴は1泊1000円ほどの少ない負担で利用できること。
さらに利用者の精神的なケアにもつなげるため、ボランティアスタッフの応対の研修など準備が行われ、10月1日にオープン。これまで20組の小児患者家族が利用している。
「毎日娘に会える」
次女・このみちゃんが入院している佐渡市の近藤さん。
約1カ月の入院予定の間、授乳や沐浴などの世話で毎日面会するため、ハウスを利用することにした。自身の食事は共用のキッチンを活用し、できるだけ自炊している。
（Q．お母さんの栄養も大事？）
近藤美貴さん：
気をつけている。搾乳がなければいいけれど
週末には、このみちゃんの姉など他の家族も佐渡から訪れ、リラックスして過ごせているという。
近藤美貴さん：
ホテルとかマンスリーだと、1人で過ごさなきゃいけないと思うが、ハウスではスタッフが何気ない声掛けをしてくれて、ゆっくりできてありがたい
そして、何より治療を頑張る娘のそばにいられることが一番の安心につながっている。
（Q．ハウスがなかったら？）
近藤美貴さん：
佐渡なので、毎日は子どもに会えなかったかなと思う。とてもありがたい。無事に自分たちだけでも育てられるよう、大きくなってくれるといい
かつて、付き添いで苦労を強いられた本村さんもハウスの完成を歓迎する。
本村里奈さん：
病院の中にいると、どうしても気持ちが沈んだり、時々ずんと重く来るときがある。そういうところをケアしてくれるような施設になるのではないかと思う
ドナルド･マクドナルド･ハウスにいがた 稲川欣也マネージャー：
病気のお子さんに寄り添っている家族は、お子さんの心配を常にされていると思う。ハウスに戻ってきて、少しでもホッとして、また笑顔で病院に向かっていけるようなハウスにしていきたい
（NST新潟総合テレビ）
