11月17日は「世界早産児デー」。早く生まれた赤ちゃんと、その家族の課題や負担について意識を高めるため、2011年に国連やWHO(世界保健機関)により制定された。

シンボルカラーは紫。多様性と思いやりという意味が込められている。

早産とは、妊娠37週未満で生まれた赤ちゃんのことで、世界では約10人に1人、日本では2021年の調査で、20人に1人が早産となっている。鹿児島県では、2020年に生まれた赤ちゃん約1万1,600人のうち、10%にあたる1,208人が、体重2,500グラム未満で生まれた「低出生体重児」だった。

2021年、鹿児島県に発足した小さく生まれた赤ちゃんの家族のサークルで話を聞いた。

「早く生まれること」ママたちが抱える課題

22週5日で女児を出産・山元理英さん:
22週2日で破水してしまって、大学病院で管理入院していたんですが、鹿児島市立病院に転院になって、22週5日で(暦ちゃんが)生まれました。身長が27cmで、主人の靴のサイズも27cm。500グラムって本当に小さくて、「かわいい」という気持ちより先に「どうしよう」という不安がすごく大きかった

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23週1日で男児を出産・高野裕子さん:
23週1日、476グラムで生まれて、はじめの72時間が厳しいこととか、生まれたときに脳内出血もあって、「23週で生まれると歩けるかどうかも分からないし、話せるかどうかも分かりません」って言われた。歩けるといいな、と思いながら…

小さく生まれた赤ちゃんのママたちが抱える課題は、想像をはるかに超えていた。

「早く生まれること」を防ぐことはできないのだろうか。小さく生まれた赤ちゃんの治療と家族のケアに当たっている、鹿児島市・いまきいれ総合病院 新生児内科・丸山有子医師に話を聞いた。

丸山有子医師:
早く生んでしまったことで、みなさん、自分のせいだと思うんですね。小さく生まれた自分のお子さんに会ったとき、泣きながら謝るお母さんが多いんです。でも、早産って防げないんですよ、実は。研究されてきてはいます。でも、まだ「これをすれば早産を防げる」という方法はありません。ですから不可抗力に近くて、お母さんのせいではないんですが、旦那さんや周りの家族にも分かっていただきたい。きっかけがあれば説明しています

小さく生まれた赤ちゃんたちの写真展 鹿児島で初開催

現代の医学をもっても早産や小さく生まれることを防げないことは、まだ一般にはよく知られていないのではないか。そこで、鹿児島で小さく生まれた子供たちのママが、自分たちと同じような思いをしている家族に寄り添うため、2021年10月、「鹿児島リトルベビーサークル ゆるり」をスタートさせた。

発足から1年。ママたちは2022年11月17日の「世界早産児デー」に合わせ、写真展を開催することにした。小さく生まれた赤ちゃんたちの出生から現在までを紹介する、鹿児島初の写真展だ。

鹿児島リトルベビーサークル ゆるり・山元理英さん:
写真展を通して、小さく生まれた子どもたちがたくさんいることを知ってほしいですし、NICU(新生児集中治療室)にいる医師、看護師の方たちに感謝の気持ちを伝えようとしているので、鹿児島でも何かしたいということで、写真展を開催することにしました

写真展の準備のため、忙しい育児の合間をぬって集まってくれたママたちに、山元さんは「写真展まで残すところ1カ月です。写真を全部パネルに貼って、作業を進めていきたいです。よろしくお願いします!」と呼びかけた。

写真は、SNSやホームページで募集し寄せられたもの。この日は、集まった写真を1枚1枚パネルに貼る作業が行われた。

470グラムで生まれた女児のママ・川原寛子さん:
大切な写真が集まったので責任を感じます。ドキドキします、不器用なので(笑)

作業にあたるママ:
低体重児の写真はあまり目にしないので、「みんな頑張ったんだな」と改めて思います。一番よい形で見てもらえたらよい

作業にあたるママ:
「どうしよう?」って不安に感じている方はたくさんいるだろうと思って、(不安を抱えている人たちが)勇気を持てる写真展になればよいと思って、初めて参加した

写真展でつながるママたちの和

そして11月17日。写真展開幕の日を迎えた。

鹿児島市の複合施設・センテラス天文館にある「天文館図書館」で開かれた「世界早産児デー写真展『ゆるり』」。23人の子どもたちの、誕生から成長した姿、家族が撮影した46点の写真が展示された。

加茂川里美アナウンサー:
上には生まれて間もないころの姿。下には成長した姿の写真が展示されています。こんなに小さかった赤ちゃんが笑顔になっている…。生きているってすごいな、家族の愛情って本当にすごいなと感じます

鹿児島リトルベビーサークル ゆるり・高野裕子代表:
10人に1人、小さく生まれる赤ちゃんがいることを皆さんに知ってもらう機会になればと思い準備してきました。私たちの力だけではできなかったことで、多くの人たちがサポートしてくれたことで、形になったことがうれしいです

加茂川里美アナウンサー:
成長を見ていると楽しみですね

鹿児島リトルベビーサークル ゆるり・高野裕子代表:
希望しかないと思います

それぞれの写真には、子どもに向けてのメッセージが添えられている。

会場は、パパとママの愛情であふれていた。

754グラムで生まれた女児のママ・山本鈴乃さん:
小さく生まれた時の写真は、NICUの保育器の中にいるのをあえて選んだんですが、小さい子が生まれたときはどんな状態なのか、みんなに知ってほしいというのが一つと、もう1枚成長した写真は、3歳になってやっとお盆にお墓参りに行けて、初めてフェリーに乗れて、すごく勇ましい顔で遠くを見ていたので、初めて見る顔でとてもかわいかったので、それを展示にお願いしました。1日1回、笑いながら生活していければよいと思います

470グラムで生まれた女児のママ・川原寛子さん:
生後3カ月、ようやく受け止められた頃の写真と、小学校に入学してうれしそうに立っている写真を選びました。生まれてきて、生きてくれて、一緒にいろんなことを経験してくれてありがとうって、感謝しかない

520グラムで生まれた女児のママ・山元理英さん:
娘たちに「どの写真にする?」って見せたときに、娘たちが自分で選んだ写真です。フリルのついたレースの洋服がすごく気に入っていて、着せたときにすごく喜んでいて、「写真撮って」と言われて撮影しました。いまNICUで頑張っている赤ちゃんの家族にも、大きくなった姿を見てちょっとでも希望につながったらと思います

訪れた人:
命の尊さを感じて胸にグッときた。すごく感激しました。両親も笑顔に救われるかな?って。すごくいい写真展だと思います

訪れた人:
小さく生まれてきた子どもさんの今後の夢や希望になる写真展だと思いました

訪れた人:
生きているってすてきだなと思いました。胸がいっぱいになります

ーーどんな人に見てほしい?

鹿児島リトルベビーサークル ゆるり・高野裕子代表:
子どもが小さく生まれて間もないママたちに、こういうつながりがあるということを写真展を通して知ってほしい

ママたちの思いは少しずつ広がり、届き始めている。

(鹿児島テレビ)

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