千葉県警と児童相談所による児童虐待の対応訓練が、17日、君津市で行われた。児相への通告件数が年々増加するなか、対策の鍵は、何と言っても虐待の“早期発見”と“児童の安全確保”。そのためには、警察と児相の連携強化が不可欠。訓練は、合同で虐待が起きている家庭への立入調査と臨検捜索を想定して行われた。

「野田市の事件から“子どもの虐待”が県民に浸透し意識が高まっているのは間違いない。年々、虐待の認知件数や通告数が増加しているのはその現れだ」千葉県警の幹部ははっきりとそう言い切る。
千葉県における虐待の通告件数や認知件数は、野田市で小学4年生の女の子が虐待死するという痛ましい事件が起きた2019年から年々増加。昨年度、児相の対応件数は1万1870件(過去最多で全国4位)。一方で検挙件数は減少傾向にあり、これは、積極的な通報や通告により、深刻な事態に発展する前に、早い段階で、児童虐待を防ぐことができているためとみられている。
17日の訓練では、児相の職員らが、家庭内での虐待の疑いがある中、出頭要求や立入調査に応じないため、裁判所の許可状をもって児童を発見・保護する「臨検捜索」の手順などが確認された。
訓練は、心神疾患を持つシングルマザーと子どもの2人暮らしの家庭で、過去には一時保護の経験もあり、保育園の欠席が続いていて、安否確認ができないケースを想定。訓練会場となったモデルハウスでは、訪問を拒まれた児相の職員が、大声をあげる母親に対して、許可状を提示して入室。



ところが、想定されていなかった交際相手が登場して、抵抗するとともに、母親が刃物を持ち出し、怒号が飛び交う展開に。そんな中、母親と交際相手に説明をしながら、子どもを屋外に連れ出し、一時保護する様子が再現された。
母親と交際相手役の警察官の白熱の”演技”に、報道陣も圧倒されたが、担当した警察官によると、このようなケースは全く珍しくないとのこと。経験上、よりリアルに演技することができたという訳だ。
実際に訓練を受けた職員は「親としては根拠を求めているけど、条文を読みあげただけでは伝わらないので、わかりやすくも、しっかり根拠を伝える難しさを感じた」「想定外のことが起きたときにどう対応すべきかというのを準備することの必要性を感じた」などと感想を口にした。
千葉県健康福祉部・児童家庭課・児童相談所改革室の山口敦史室長は「野田市の事件というのは未だに痛ましい事件として残っている。そのような事件を繰り返さないために、子どもの安心安全を守るために、警察はじめ関係機関と連携を強化して虐待防止にあたっていきたい」と話した。
(フジテレビ社会部・千葉県警担当 風巻隼郎)