日本は国土の3分の2が森林。二酸化炭素を吸収する森を守る営みは気候変動だけでなく、防災にもつながる。間伐材を活用してマウンテンバイクのコースを作ることで森を守り、地域のSDGsに貢献する取り組みを取材した。
間伐材の活用が防災につながる
広島・安芸太田町(あきおおたちょう)にある寺領(じりょう)地区。色鮮やかに実った地域の特産の柿が秋の訪れとともにどこか懐かしさを感じさせる日本の原風景が広がる。

この地域で山を整備し4.5キロのマウンテンバイクのコース作りに奮闘するのが梶原正貴さん、37歳。

梶原さんは、この地域の森林を守る活動をする一般社団法人「安芸太田の輪」の代表を務めており、マウンテンバイクのコースをつくることで、この町に人を呼び込み継続的な雇用も生み出したいと考えている。

そこには山の環境を整えることで地域を災害から守りたいという思いがあると言う。

安芸太田の輪・梶原正貴代表理事:
豪雨災害が2018年にあったが、当時は全然違う仕事をしていて、お休みの日にボランティア活動に行くことを繰り返していた

安芸太田の輪・梶原正貴代表理事:
自分は広島市に住んでいて、自分の街のすぐそばで災害が起きてしまって、しかもかなりの被害が出た

安芸太田の輪・梶原正貴代表理事:
いままで、その事後の活動をやっていたのを、これは起きる前の活動が必要なんじゃないかと思うようになった

過疎化による中山間地域の人口減少でいま、山の多くは荒廃が進んでいる。
金田祐幸アナウンサー:
こちらが整備する前の段階なんですけれども、本当に歩いていくのがやっとの状態で、こういった倒木、しかも腐った木がまだ放置されている状態です


山でマウンテンバイクを走らせることはかつては、自然環境に悪影響があると指摘されたこともあったが、一方で、専門家は、人の手による適切な山林の整備が環境維持に大切だという。
間伐が二酸化炭素の吸収を促す
広島県林業技術センター・涌嶋智次長:
野菜を間引いてやるのと同じような意味合いで、山の木を一本一本を太く大きく育ててやるため、少し間引いてやって残りの木を大きく太く育ててやると、そういうような作業が間伐

そして、木を切って間引く=間伐が温暖化を防ぐ手段になるという。

涌嶋智次長:
木というのは光を受けて大きくなる。言ってみれば光がごはんみたいなもの。

涌嶋智次長:
それを受けて光合成というものをして体に二酸化炭素を蓄えて太く大きくなっていくということで、大きくなればなるほど二酸化炭素の吸収量が大きくなるということ

太く大きな木が地面にしっかりと根を張る。

そうなることで土砂災害を防ぐ役割も期待できる。

安芸太田の輪・梶原正貴代表理事:
最初、これ岩みたいだけど、これが崩れるともう固まらない

広島県に多くみられる土質「まさ土」。コースを整備する中でもろい土には地域でとれた間伐材を活用することで盛り土を補強している。
燃やせば二酸化炭素が発生する間伐材。再び山に活用することで、地球温暖化の防止にむけ一石を投じている。

移住し地域に密着した活動を
この日、梶原さんの妻・未穂さんは地元特産の祇園坊柿の干し柿作りの手伝いをしていた。家族で広島市から安芸太田町に移住し、地域のためにと活動を続けている。

梶原さんの妻・未穂さん:
けっこう仕事への思いは聞いているので、私もじゃあこういう柿のお手伝いだとか一緒に、なにかちょっと地域のためにできたらなと思って。みなさんすごくフレンドリーな感じで子供もたまに連れてきて一緒に仕事してるんですけど、みんな面倒みてくれたりして。いい人ばかり

地域の人:
遊び場というか、そういうものがなかったから、若者に興味をもってもらって、この田舎に来てもらえたらありがたいなと思って期待している

結果がでるのは60年後
山を整備しマウンテンバイクのコースを作る、梶原さん。二酸化炭素を減らし地球環境を守り、災害を防ぎ、さらに雇用を生み出し、レジャーで観光客を呼ぶ、まさに一石四鳥の効果を狙う。ゆっくりと成長する木々を目の前に、長期的なビジョンを描いています。

安芸太田の輪・梶原正貴代表理事:
ぼくがやる作業で結果が出るのは、ぼくが多分死んでからだと思う。もう60年とか、90歳とか100歳ぐらいになったときにやっとその成果が見えてくるんじゃないかと
Q、60年後のイメージは?
ぼくの中イメージは明るいんじゃないかと思っている

梶原さんが代表を務める一般社団法人 安芸太田の輪は、このような先を見据えた森林を守る地道な活動を続け、地域の防災や振興、ひいては地球環境を守ることに寄与している。
(テレビ新広島)
※マウンテンバイク・コース整備事業はクラウドファンディング「TARUBO」で支援を呼びかけている。