100m以上離れた場所に身を潜め、露天風呂の入浴客をねらった組織的な盗撮事件。2022年9月末までに、9人が検挙された。一連の盗撮グループの犯行が明るみになったきっかけは、女性警察官たちによる職務質問だった。

きっかけは…駐車場所の“違和感”

静岡県警・地村美貴 警部補
静岡県警・地村美貴 警部補
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静岡県警・地村美貴警部補。2021年9月、同僚2人と静岡県藤枝市のパーキングエリアをパトロール中、1台の軽自動車に目が留まった。

静岡県警 自動車警ら隊・地村 警部補:
乗用車用に何台か空きスペースがあったんですけど、大型専用に止まっていた車になります

藤枝BP・谷稲葉うぐいすPA
藤枝BP・谷稲葉うぐいすPA

日曜日の深夜にも関わらず、他県ナンバーでレンタカー。ほかに空きスペースもあるのに、大型車専用に停めているーー。
気になって声をかけると…。

地村 警部補:
男性1人が仮眠している状態で声をかけた時に、すごく動揺しているように見えたので。何かあるんじゃないかと、(パトロールしていた警察官の)3人ともが感じました

押収した証拠品・藤枝警察署
押収した証拠品・藤枝警察署

車内を調べるとトランクの中からのこぎり、後部座席からは望遠レンズの付いたカメラが見つかった。いずれも盗撮に使われた道具で、男はまさに犯行を終え、帰宅する途中だった。

この職務質問がきっかけとなり、警察は捜査を開始。

犯行グループは山林から盗撮(イメージ)
犯行グループは山林から盗撮(イメージ)

約2ヶ月後。遠く離れた山林の中から、露天風呂で入浴中の女性を盗撮したとして、男3人を逮捕した。その後9月末までに、このグループの犯行に関与した疑いで9人が検挙されている。

地村警部補:声をかけてよかった
地村警部補:声をかけてよかった

地村 警部補:
警察官が3人とも「おかしいな」と思う気持ちを信じてよかった。被害者の方が救われ、声をかけてよかったなと思います

静岡県警で唯一 女性の自動車警ら隊員 交通巡視員から警察官に

パトロールする地村警部補
パトロールする地村警部補

地村さんは、静岡県警・自動車警ら隊で唯一の女性隊員。
中でも「職務質問」の技術は一目置かれる存在で、「職務質問技能指導官」の肩書も持っている。今では後輩の指導に当たることも多い。

地村 警部補:
相手より先に対象車両を見つけた方がいいので、遠くを見られるように。自分だったらすごい疲れていてめちゃくちゃ眠くて、どこかで休憩しないと家帰れないって時に、この店があると、どの辺に止めたい?

齋藤涼 巡査長:
そうですね、出入り口から遠くて人があまりいない、通らないようなところですかね

地村警部補:
そうだよね、私もそうすると思う

交通巡視員だった地村さん(前列左)
交通巡視員だった地村さん(前列左)

もともとは警察官ではなく、駐車違反を取り締まる交通巡視員。しかし犯人を捕まえる強い姿、被害者に寄り添う優しい姿に憧れ、警察官に。夢はパトカーの乗務員だった。

地村 警部補:
犯罪を見つけて1から捕まえていくってところで、すごくやってみたいというのがあった。でも当時は女性のパトカー乗務員は静岡県にはいなかった。どうしてもやりたかったので、休憩の時間に仮眠が一応あるんですけど、その時間にパトカーに乗せてもらったり

パトカーの乗務員になるという夢を叶えた地村さんには、もう一つ叶えたかった夢があった。

夢は警察官と母親の両立 仕事も家事・育児も全力 

地村警部補:
きょうの献立は豚の角煮にしようかなって。子供が帰ってくるので、合宿から。お肉が大好きなので作ってみようかなと

叶えたかったもう一つの夢、それは警察官と母親の両立だ。

実は、夫の亮二郎さんも警察官だ。警察庁へ出向中で、家族そろっての食事は週末のみ。
地村警部補が、合宿から帰ってきた長女(16)に「どうですか、2日ぶりの家の味は?」とたずねる。「2日ぶりだからそんな変わらないけど」と冷静な答えが返ってきた。

長女:
いつもご飯も作ってくれて両立してくれてるのでそこはありがたいけど、もう高校生でできること増えてるので、もうちょっと任せてほしいな

はにかみながら、親への感謝と、複雑な心境を教えてくれた。

地村 警部補:
私が子離れできてないかな

長女からの手紙
長女からの手紙

2年半の育児休暇を取得後、職場に復帰した地村さん。当初は仕事と育児の両立に悩んでいた。

地村 警部補:
仕事に集中しすぎて、子供の世話をおろそかというか、実家に任せっきりにした時は、母親に「やめなさい」と。「警察やめなさい」って言われて帰ってきたこともあった。でも、長女は覚えてないと思うけど「ママ辞めないで」って。
家に帰ったら全力で家事育児をやる、仕事の時はその代わり全力で。すみわけ、切り替えができるようにしようと考えたきっかけにもなりました

被害者そして警察官を目指す女性のために

アイロンがけは夫が
アイロンがけは夫が

そんな今の自分があるのは、周りのサポートのおかげでもあると、地村さんは感じている。

地村 警部補:
結婚・出産を経て警察官という仕事を続けていく中で、主人のサポート、実家の両親、サポートしてくれる職場の人がいました。今度は、育休・産休を取って子育てに全力で専念するママさん女性警察官のためにも、私がバックアップするような立場になれたらいいなって

今まで、自分を支えてくれた人のために。これから、警察官を目指す女性のために。そして、犯罪被害に苦しむ人を救うために。地村さんは「職質」を続けている。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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