思わず「こんなことがありえるのか」と言いたくなりそうな、キノコがTwitterで話題となっている。
神社の境内にて。キノコが木に生えるのはわかるけど、バランスが明らかにおかしいよね……
このような表現で草葉ノカゲ(@Kusaba_Nokage)さんが投稿したのが、神社の境内で撮影したというキノコの写真。地面から突き出た“木の枝の先端”とみられる場所にあったという。
この記事の画像(5枚)全体像はひらがなの「く」を反転させたような形で、木の枝は細くて傾いているのに対して、キノコはそれに逆らうかのように、絶妙なバランスで立っている。
Twitterでは「これは木の子」「もはや芸術」といった反応が寄せられ、投稿は4万6000以上のいいねを集めている。(10月20日時点)
キノコが生えたスペースに「ひょっこりと立っていました」
ユニークな光景だが、発見当時はどんな状況だったのか。まずは草葉ノカゲさんに聞いた。
――今回投稿したキノコはどんな状態だった?
地域は東北地方南部、時期は投稿日の10月15日です。(地面からのキノコまでの高さは)目視で15~20センチほどだったと記憶しています。手を触れていないので、枝が刺さっているのか生えているのかは不明です。
――周囲の状況を教えて。変わった様子はあった?
静かな場所で、人もまばらです。周囲には背の高い木がたくさん生えています。その一角にいくつも同様のキノコが生えているスペースがあり、そのなかにひょっこりと立っていました。
――キノコと木の枝の光景を見て思ったことは?
最初は枝の先にキノコを刺した、いたずらかと思い、近づいてみたところ、枝にしっかり根を張っていたので驚きつつ、神社という場所柄もあって、不思議なものを見たなという気持ちで、手に触れず写真に収めました。
――受け止めを教えて。気になったことはある?
少しでも明るい話題になれば何よりです。なぜこうなっているのか(あるいは誰かの作為なのか?)専門的なところを知りたい気持ちが大きいです。
投稿されたキノコは「イボテングタケ」と思われる
最初はいたずらかと思ったが、根を張っていたという。まさかの光景だが、木の枝の先端にできることは考えられるのだろうか。キノコ類を栽培・研究する「岩出菌学研究所」研究開発部の多田有人さんにも聞いた。
――話題となったキノコの種類や生態を教えて。
外見の特徴からすると、テングタケの一種である「イボテングタケ」と思われます。テングタケの仲間は「菌根菌」というグループに含まれ、広葉樹や針葉樹と共生しています。地中で樹木の根っことくっついて、栄養分や水分をやり取りしながら生きています。そのような生態なので、通常は、地面の表面からキノコが発生します。
――木の枝の先端にあるのを見て感じたことは?
初めて見る光景なので驚きましたが、キノコが木の枝にしっかりと根(菌糸)を張っている、ということでしたので、とても興味深い現象だと思いました。
木の枝の先端に生える?可能性を聞いた
――木の枝の先端に生えるのは可能性としてありえる?
スーパーでおなじみのシイタケ、エノキタケなどのキノコは、「腐生菌」と呼ばれ、枯れた木などを栄養にして生きています。これらの種類は、木の先端であってもキノコを作ることがあります。一方でイボテングタケのような「菌根菌」は、基本的に地表にキノコを作りますので、木の先端から発生するというのは、あったとしても非常にまれなケースであると思います。
――今回のキノコができた要因として考えられることは?
本来は、地面の下で生活しているイボテングタケの菌糸が、何らかの理由により地表に出て(直立した) 木の枝に菌糸が伝わり、その結果、木の先端にキノコを作ったのではないでしょうか。もうひとつは、人為的なきっかけがあった可能性ですね。
――ほかにもこうした意外な場所で、キノコが生えることはある?
キノコが生えるのは、山や森だけではありません。えー、こんなところに!?というほど意外なところで、見つかることがありますよ。例えば、お風呂場の浴槽の木製のフタや、公園のベンチ、潮風が吹き付ける海岸に生えるキノコもあります。
――イボテングタケには毒があるの?
イボテングタケは食べるととても美味しいらしいのですが、おなかを壊したり、神経系の中毒症状が出ると言われています。テングタケの仲間は致命的な毒を持つ種類が多く含まれますので、決して口にはしないでください。
神社の境内にて。キノコが木に生えるのはわかるけど、バランスが明らかにおかしいよね……🤔 pic.twitter.com/TnCBBycBBi
— 草葉ノカゲ (@Kusaba_Nokage) October 15, 2022
多田さんは、木の枝の先端に生えたとすれば貴重なもので「新しい知見が得られた」とも話していた。人為的な可能性も否定できなかったが、バランスがすごいキノコの真相は“神のみぞ知る”といったところかもしれない。