人生100年と言われる今の時代。ちょうどその半分にあたる、50歳を迎えた同級生たちが母校に集うイベントが、鹿児島・阿久根市にある。地元に残る人、故郷を離れた人…それぞれの人生を歩み、懐かしい友人と再会を果たした時、彼らは何を思うのか?

70年前が始まりのきっかけ?伝統行事 “華の50歳組”母校の運動会を走る

9月30日。夕暮れ時の阿久根駅に、鮮やかなハッピを来た人が次々に集まってきた。彼らはみんな阿久根で働く人たちで、年齢は50歳。

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今は第三セクターの「肥薩おれんじ鉄道」となった阿久根駅に、列車が到着した。

降りてきたのは、県外から帰省した小学校の同級生だ。

神奈川県在住・潟 浩三さん
帰ってきました。横浜から

ふるさとに帰ってきたのには、理由があった。

50歳を迎える年に、卒業生が、母校の小学校の運動会に参加するという阿久根市の伝統行事「華の50歳組」だ。

その始まりは、戦後間もない1951年。

「今、誰が一番足が速いのか運動会で決着をつけたい」

当時50歳になるOBが、阿久根小学校の校長に相談したのが始まりのきっかけだと言われている。その後、1990年代までには阿久根のすべての小学校に広まった。

華の50歳組の元祖とも言える、阿久根小学校。児童数は市内最多だ。

その運動会当日。

受付が設けられた体育館には「おかえりー!あれ、○○さんけ?久しぶり!変わらないね」といった声が響いた。コロナ禍でマスク越しの再会。でもあの頃の面影は、ちゃんと分かる。

華の50歳組 横山一平 実行委員長(阿久根市在住・美容室経営)
感慨深いですね、懐かしいですね。昔の呼び方で呼んじゃいますよね

横山さんに話を伺っていると、愛知県から車で帰ってきたという男性が、体育館から出てきた。

愛知県在住(自動車メーカー勤務)・丸尾真一さん
しがないサラリーマンです。海外もいろいろ行きました

みんな、久しぶりの思い出話に花が咲く。今だから言える、こんな話も…

「あの人好きだったとかありますよ、三輪くん」と話す2人の女性。巻木さおりさんは静岡からやって来た。地元・阿久根在住の猿楽さんと話が盛り上がっている。

2人のアイドルだった三輪真也さんは、鹿児島市在住。
その三輪さんを見つけた女性軍がすかさず歩み寄り、「昔もカッコよかったけど今もカッコいい!」と声をかけたところ、「やめてって!」とテレまくる三輪さん。

本番前から盛り上がる中、いよいよ華の50歳組の出番がやってきた。

阿久根小学校には、卒業生195人のうち80人が集まった。
中にはこの場に立てなかった人もいる。すでに他界した卒業生は、遺影での参加だ。

ともに阿久根市在住の乙須満さんと濱崎いづみさんの選手宣誓に続き、38年ぶりの学級対抗リレーが行われた。
スターターを務めるのは当時の恩師、85歳になった六反園弘さん。

トラックを懸命に駆け抜ける50歳の卒業生たち、子どもの頃に戻ったような笑顔が広がっていた。
中には両手を挙げてバンザイのポーズでトラックを走る人も。後輩の児童からも拍手が起こる。

トラックを懸命に駆ける50歳の卒業生たち。子どもの頃に戻ったような、はつらつとした笑顔を見せていた。若干、息は切れていたようだが…。

神奈川県在住・潟 浩三さん
やりきった感があります。楽しかった

声援を送った後輩の児童からは、「すごく速かったです」「38年後に自分が走ると思ったらすごく楽しそう。面白そうです」と言った声が聞かれた。

進学、就職…それぞれの選択を経て集結 ふるさとは「いつでも待ってるよ」

50歳組の行事はこれで終わらない。その日の夕方行われた、同窓会。

50歳という人生の節目。進学や就職、そして結婚。地元に残る人もいれば、ふるさとを離れ県外で暮らす人もいる。それぞれの選択をして、今がある。

飾る必要のない古き友を前に、壇上で声を詰まらせながら思いを語る、50歳組の同級生たち。無邪気だったあの頃の友人を前に、思いがあふれる。

宮崎県在住・大漉和幸さん
兄を若くして亡くし、この50歳組というのがすごくすごく大切なもので、家族にとっても大切なもので。82歳のおふくろに、走っている勇姿を見せられたことが、すごく誇らしい

鹿児島市在住・小田奈保美さん
みんなが温かく迎えてくれて、きょうポロシャツをもらって、とってもうれしかった。私、50歳組に…来てよかった

最後はみんなで、懐かしい校歌を歌う。

鹿児島市在住・小田奈保美さん
旧友が、忘れていたことを思い出させてくれた。もう一歩ずつ踏み出せそうな気がします

阿久根市在住・濱崎いづみさん
つらいこともあったと思います。それを隠しながら生きていく。自分だけじゃないんだなって

静岡県在住・巻木さおりさん
ずっとみんなが優しい、変わらないこの街でいてほしいと思います

阿久根市在住・上脇重樹さん
いつでもウェルカムです

華の50歳組実行委員長・横山一平さん(阿久根市在住)
「いつでも待ってるよ」「お帰りなさい」と言って、みんなを迎えたい

故郷はいつでもそこにあって、優しく迎えてくれる場所。子どもの頃を思い出して全力で笑って、また、あすから生きていく。
まだまだこれから、華の50歳組。

(鹿児島テレビ)

鹿児島テレビ
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