東京・品川区で、高齢女性が、息子を装った男らに、現金をだまし取られそうになる事件が起きた。特殊詐欺グループは、足が不自由な女性のために、わざわざ自宅までタクシーを差し向けていたという。そんな用意周到な犯行計画を見破ったのは、タクシー運転手の男性だった。

足の不自由な高齢女性 迎えのタクシーまで

「ケガをして契約できなくなった。代わりに行って欲しい」。先月15日午後、品川区に住む70代の女性宅に、息子を装った男から電話がかかってきた。そして、男は「契約金の一部の50万円を上司に渡して欲しい」と告げたとのこと。

取材に応じる源川秀治さん(5日 品川署)
取材に応じる源川秀治さん(5日 品川署)
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冷静に考えると”怪しい”話だ。しかし、我が子を思う母親には、それを疑う余裕はなかった。すぐに、自宅にあった現金をかき集めたという。”狡猾な”特殊詐欺グループは、驚いたことに、足が不自由な女性のために、迎えのタクシーまで差し向けていたのだった。

その運転手が、源川秀治さん・51歳だった。「迎車」の状態で待機していた源川さんは、足が不自由な女性のために、自宅まで迎えに行ったという。女性は2階に住んでいた。女性をサポートしながら、やっとタクシーに乗せることができた。行先は、品川区の京急線「青物横丁駅」だった。

タクシーの行先は、女性宅から10~15分の京急線・青物横丁駅だった(画像はイメージ)
タクシーの行先は、女性宅から10~15分の京急線・青物横丁駅だった(画像はイメージ)

「急病の息子の代わりに私が契約に」

「本当は、あまりお客さんと話をしてはいけないんですが、少し不安になって・・・」。源川さんは、当時の車内の様子を振り返った。駅までの所要時間は10分~15分。源川さんは「電車に乗るんですか?」「何をしに行くんですか?」と話しかけたそうだ。

すると女性は、「商談に行くんです」と答えたとのこと。さらに「商売をしているんですか?」と問いかけたところ、女性が「信じられます?息子が急性胃腸炎で入院していて、点滴を受けているから、私が代わりに契約に行くんですよ」と打ち明けたという。源川さんの”不安”が的中したのだった。

品川署によると、70代の女性宅には、先月15日午後、息子を騙る電話がかかってきたという
品川署によると、70代の女性宅には、先月15日午後、息子を騙る電話がかかってきたという

タクシーは、青物横丁駅に到着。女性は、息子の上司とされる人物と落ち合うことになっていた。すでに「おかしい」と思い始めていた源川さんは、タクシーを降りた女性と一緒に、駅前で待つことにしたという。

高齢女性を救った 運転手の”優しさ”

”上司”とされる人物は、中々、駅前には現れなかった。この段階になり、源川さんは、女性を説得し、駅前の交番に駆け込んだという。当然、警視庁品川署は、特殊詐欺事件として対応に乗り出した。

想像の域を出ないが、おそらく、詐欺グループは、駅前に見張り役を配置していて、女性と源川さんの様子を監視していたのではないだろうか。

源川さんには、品川署から、感謝状が贈られた(5日)
源川さんには、品川署から、感謝状が贈られた(5日)

結局、上司役の人物は現れず、検挙には至らなかったが、詐欺被害を未然に防ぐことができた。実は、先月上旬、最寄りの品川署では、地元のタクシー会社との間で、特殊詐欺防止について、協力協定を締結したばかりだったという。

源川さんには、品川署から感謝状が贈られた。さっそく協定の成果が出た形だが、取材に対して源川さんは、「私が乗せたお客さんが、悲しい思いや、怖い経験をしなくて良かったなと思います」と照れくさそうに話していた。(サムネイル画像は、イメージです。本文とは関係ありません)