中東情勢の長期化が、鹿児島県内の農家や流通現場にも静かな打撃を与え始めている。さつま町のトマト農家は灯油価格の値上がりに身を縮め、鹿児島市の包装資材店では一部商品の仕入れに制限がかかる事態となった。「燃料が、また幾らになるかと考えている」——現場では先行きへの不安が日に日に募っている。

暖房燃料から包装袋まで、原油高の波がトマト農家を直撃

鹿児島県さつま町で約60アールのハウスを構えるトマト農家、市囿庄一さんは、例年11月から5月初めにかけてハウス内の暖房を稼働させる。度重なる重油価格の上昇を受け、すでに燃料をLPガスに切り替えるなどの対策を取ってきた。しかし特に早朝の冷え込みが厳しいこの時期には、灯油を燃料とする大型ストーブの使用が欠かせない。取引業者からは「今週以降の値上げ」を告げられており、コスト増は避けられない状況だ。

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さらに市囿さんが頭を悩ませているのが、包装用の袋などの値上がりだ。石油製品を原材料とするこれらの資材も、中東情勢の影響を免れない。

「灯油が高くなるとかビニール袋の値段が上がると言われ、ビクビクしながらトマトの生育に影響が出ないようにやっている。燃料が、また幾らになるかと考えている」

コスト増が続く中でも、栽培の手を緩めるわけにはいかない。市囿さんの言葉には、現場で踏ん張り続ける農家の切実な声がにじんでいた。

「倍欲しいと言われてもお出しできない」——梱包資材店にも仕入れ制限の波

農家を悩ます包装資材の問題は、流通の上流でも顕在化している。鹿児島市で商品の包装資材を扱う「パッケージプラザゴトウ」(後藤卯兵衛商店)では、中東情勢の影響を受け、現在一部商品の仕入れに制限がかかっている。

特に影響が出ているのが、野菜などの流通に欠かせない梱包用の袋だ。原材料が原油であるうえ、商品の生産拠点が海外にあるため、今後は値上がりする要素しか見当たらないという。メーカー側もまとまった受注の調整を始めており、これまでの実績ベースの量でしか入荷できない状況が続いている。

後藤研一社長は言う。「これまで扱っていた商材も、倍欲しい、3倍欲しいと言われてもそれはお出しできないという状況」。

たとえばキュウリ用の袋(100枚入り495円)は、ちょうどキュウリの出荷量が増える時期に差し掛かっているにもかかわらず、急な増量には対応できないという。さらに後藤社長は「今後は価格の改定に結びつきそうな話がある」とも明かしており、値上げの足音は確実に近づいている。

弁当容器は「大丈夫」——脱プラの流れが一定の緩衝材に

一方で、弁当を入れる容器については、状況がやや異なる。以前から紙製の容器が普及しており、脱プラスチックの流れに乗って紙容器へ移行した顧客も多いため、現時点では動きは落ち着いているという。「需要が幅広くなっていて大丈夫」と後藤社長は語る。

今回の中東情勢が起きる以前から進んでいた脱プラの動きが、皮肉にも一定の緩衝材として機能している格好だ。

「はやく収まってもらえれば」——現場が望む早期の沈静化

後藤社長は今の段階では、顧客に対して過度な買いだめを促すつもりはないとしつつも、今後の見通しについては慎重な姿勢を崩さない。

「ここで慌てて、まとまった量を確保していかないといけないというのはまだ先の話。今はこれまで通りに買い物をしてもらえたら。あとはイラン情勢の長引き方にもよるので、はやく収まってもらえればと思うばかり」

農家も、資材店も、それぞれの現場でコストと向き合いながら日々の仕事を続けている。中東の情勢がいつ収束するかは見通せないが、鹿児島の生産・流通現場への影響は、すでに足元にまで及んでいる。

(動画▶原油高で「袋が足りない」可能性 産地と流通が警戒する食料の値上げリスク)

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