1966年に、静岡県で一家4人が殺害された事件で死刑が確定し、静岡地裁の再審開始決定を受けて釈放された袴田巌・元被告の差し戻し審をめぐって、東京高裁の裁判長が、今年度中に決定を出す意向であることが分かった。

弁護団が、きょう午後、記者会見を開いて明らかにした。東京高裁は、12月2日までに最終意見書を提出するよう、検察側、弁護側双方に求めたという。また、12月5日、口頭で意見陳述が行われ、袴田元被告の姉・秀子さんも参加する予定。

袴田事件をめぐっては、第2次再審請求審で、2014年、静岡地裁が、再審を認める決定をしたが、2018年、東京高裁は再審を認めなかった。これに対して最高裁は、2020年、この高裁決定を取り消して、審理のやり直しを命じた。

現在、東京高裁で進められている差し戻し審では、「衣類の赤み」が最大の争点。犯行時に、袴田元被告が着ていたとされる5点の衣類は、事件から1年2か月後に、みそタンクの中から見つかった。

死刑の確定判決では、これらの衣類について有罪の証拠として認定。衣類の血痕には「赤みがあった」とされた。しかし、最高裁は、この点について、「1年以上、みそに漬かった状態で、赤みが残るかどうか」審理が尽くされていないと指摘して、審理の差し戻しを命じていた。

差し戻し審で、弁護側は、専門家による実験の結果、「みそに長期間漬けた場合、赤みは残らない」と主張。検察側は、これに反論しているとされる。(画像は、記者会見を行う袴田元被告の弁護団・午後4時ごろ 東京・千代田区)

社会部
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