サンドイッチを作る際、食パンの耳はカットされ、廃棄処分されることも多い。そんな中で帝国ホテルが、パンの耳を切り落とすのではなく、発想の転換で“耳まで白い食パン”を開発した。

耳まで白い食パン(画像提供:帝国ホテル)
耳まで白い食パン(画像提供:帝国ホテル)
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これまで帝国ホテルのサンドイッチは、見た目の美しさと食感を追求するため、食パンの耳を切り落として提供してきた。この切り落とした耳はサンドイッチの具材が付着しているなどの理由で、別の料理への再利用が難しいため廃棄せざるを得ず、年間廃棄量は約2.5トンに達していたという。

こうした中、東京料理長の杉本 雄氏が中心となって、約半年間の試行錯誤を経て、切り落とし・廃棄が不要の“新食感の白い食パン”を完成させた。従来の食パンに比べて低温でじっくり焼成することで、よりしっとりとした食感になっているという。また白い食パンに加え、ニンジンのピューレを入れて作った黄色い食パンも併せて開発した。

帝国ホテル 東京料理長の杉本 雄氏(画像提供:帝国ホテル)
帝国ホテル 東京料理長の杉本 雄氏(画像提供:帝国ホテル)

白い食パンと黄色い食パンを使ったサンドイッチは帝国ホテル 東京のホテルショップ「ガルガンチュワ」で10月1日から食べることができる。4種類の具材をはさんだ定番のミックスサンドイッチ 「W・E  Bread サンドイッチ」は2268円(税込)、パン製のバスケットに4種類のサンドイッチを詰めて、フルーツを添えた「ガルガンチュワサンドイッチ」は15120円(同)だ。

「W・E  Bread サンドイッチ」(画像提供:帝国ホテル)
「W・E  Bread サンドイッチ」(画像提供:帝国ホテル)
「ガルガンチュワサンドイッチ」(画像提供:帝国ホテル)
「ガルガンチュワサンドイッチ」(画像提供:帝国ホテル)

「いらなくなった食パンの耳をどう使うか?」ではなく、見た目も美しい耳まで白い食パンを作るという発想の転換は見事だ。

耳が白く柔らかい食パンと帝国ホテルクオリティの両立に試行錯誤

では、このパンを作るのにどんな苦労があったのか? またどんな味なのか? 帝国ホテルの広報担当に詳しく話を聞いてみた。


――すでにお客からの問い合わせはある?

ニュースリリース配信後は何件かいただきました。


――食品ロス以外の利点は?

これまで以上に食感がしっとりするようになりました。


――開発する中で苦労したのはどんなところ?

そもそも“白い食パン”のレシピが存在しない(スタンダードなパンを作ることとは異なる)ため、セオリー通りではない、発想の転換を行い開発することに苦労しました。

また、ゴールである耳が白く柔らかい食パンでありながら、かつ帝国ホテルクオリティの美味しさを保ったパンであること、その両方をクリアしたパンを完成させるために、試行錯誤し調整を繰り返しました。

耳まで白い食パン(画像提供:帝国ホテル)
耳まで白い食パン(画像提供:帝国ホテル)

製造時間はこれまでの食パンの3倍以上

――パンの耳を白くするのはどのくらい手間がかかるの?

手間のかかる点は以下の2点になります。

その1「イーストを発酵させて作る水種(ポーリッシュ種)を使用」
水種は作るために1晩かかるため、この時点ですでにひと手間かかります。
※水種を使用した理由:パンの強度と酸度の調整のため

その2「焼き時間と温度調整」
以前のものと比較し、白い食パンは繊細であり、焼き時間と窯の温度調整の見極めが難しいです。焼き時間が足りないとパンが凹んでしまいますが、少しでも焼きすぎてしまうと耳を感じてしまう。また、窯が高温になればその分焼けてしまい耳が出来てしまう、など焼き上がる際の数分間は、こまめに様子を確認する必要があります。


――時間もかかる?

製造にかかる時間は今までのサンドイッチに使用していた食パンは6時間半でしたが、白い食パンは22時間かかります。


――耳まで白い食パンを食べた感想は?

新しい食パンはしっとり感が増しましたが、これまでの帝国ホテルの食パンの味(クオリティー)は変わらず残っていました。


――将来的に提供される食パンはすべて耳の白い食パンに代わる?

帝国ホテル 東京においては順次レストランなどでも提供しているサンドイッチには、今回の食パンを導入予定ですが、全ての食パンが変わるかは未定です。



耳まで白い食パンは、単に食品ロス削減につながるだけでなく、しっとり感が増しておいしくなっているようだ。10月1日から帝国ホテル 東京のホテルショップ「ガルガンチュワ」で販売されるので、気になる人は一度、食べてみてはいかがだろうか。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。